倉庫業法・危険物取扱い・コールドチェーン・パレット規格
レッスン5:倉庫業法・危険物取扱い・コールドチェーン・パレット規格
このレッスンで学ぶこと
- 倉庫業法の 3 分類(普通倉庫・冷蔵倉庫・水面倉庫)と登録制度を理解する
- 危険物取扱い(消防法・毒劇法・IMDG コード)の全体像を扱う
- コールドチェーンの 3 温度帯(常温・チルド・冷凍)とビジネスモデルを掴む
- パレット T11 規格、物流不動産(プロロジス・GLP ・ESR)、マテハン機器(AGV /AMR /自動倉庫)を俯瞰する
前のレッスンでは、フォワーダー・海運・鉄道貨物・航空貨物という「輸送」領域を扱いました。このレッスンでは、物流業のもう一つの中核機能である「保管」を担う倉庫業を扱います。倉庫業法という業法、危険物・低温物流という特殊領域、パレット規格・物流不動産・マテハン機器といったハードウェア側面まで、業界を横断で理解していきます。
倉庫業法——1956 年制定、2003 年登録制へ改正
倉庫業法は 1956 年に制定された、他人の物品を有償で保管する事業(倉庫業)を規律する法律です。2003 年の改正で、それまでの許可制から登録制に変更され、参入障壁が下がりました。
法律上の「倉庫」は、屋根と壁のある建物だけでなく、屋外貯蔵所(サイロ、タンク、貯木場など)も含みます。また、事業として他人の物品を有償で保管する場合が対象で、自社の商品を自社の倉庫で保管する場合(自家用倉庫)は対象外です。
営業倉庫と自家用倉庫の区別は、業界外の方が最初に押さえるべきポイントです。営業倉庫は登録が必要で、倉庫寄託約款・料金の届出、保管責任、火災保険付保、倉庫管理主任者の選任などの義務があります。自家用倉庫はこれらの義務がなく、自社利用のみが可能です。EC 事業者が自社倉庫を持つケースは自家用倉庫、荷主の商品を預かるケースは営業倉庫の登録が必要になります。
倉庫業者数は約 6,300 社(令和 5 年度末、日本倉庫協会)で、業界大手は三井倉庫ホールディングス、住友倉庫、三菱倉庫、日本トランスシティ、澁澤倉庫、東洋埠頭など。他業界の物流子会社(トヨタ輸送、キユーソー流通システムなど)も倉庫業を営んでいるケースが多くあります。
倉庫業法の 3 分類——普通倉庫・冷蔵倉庫・水面倉庫
倉庫業法は、扱う貨物と施設の特性により、倉庫を 3 分類しています。
第 1 の普通倉庫は、常温で保管する一般的な倉庫で、さらに 8 類(1 類〜 8 類、危険品倉庫、貯蔵槽倉庫、野積倉庫、水面倉庫を含む)に細分化されます。実務上は「1 類倉庫」が最も普及しており、乾貨物全般(食品乾物、雑貨、電化製品、繊維製品など)を扱えます。
第 2 の冷蔵倉庫は、10℃ 以下で保管する倉庫で、冷凍食品、水産物、乳製品、医薬品などを扱います。冷蔵倉庫は、C1(10 〜 −2℃、チルド)、C2(−2 〜 −10℃)、C3(−10 〜 −20℃)、F1(−20 〜 −30℃)、F2(−30 〜 −40℃)、F3(−40 〜 −50℃)、F4(−50℃ 以下)の 7 級区分で管理されます。近年は医薬品用に −70℃ /−80℃ の超低温倉庫(コロナワクチン保管用に急拡大)も登場しています。冷蔵倉庫の事業者は約 1,000 社(日本冷蔵倉庫協会)で、ニチレイ、横浜冷凍、東洋水産、キユーソー流通システム、日本水産などが業界大手です。
第 3 の水面倉庫は、水面(海・川・湖)に木材などを浮かべて保管する倉庫です。かつては木材業界で広く使われましたが、木材需要の減少と貯木場の減少で今日ではほぼ消滅しつつある区分です。
📝 補足 冷蔵倉庫の温度区分(C1 〜 F4)は、日本冷蔵倉庫協会が定める業界標準で、法律上の区分ではありません。保管品目に応じて級別の設備が必要になり、−30℃ 以下の F 級では設備投資・電気代が大幅に増加します。医薬品向けの GDP(Good Distribution Practice、医薬品の流通基準)対応倉庫も増加しています。
危険物取扱い——消防法・毒劇法・IMDG コード
危険物を扱う倉庫・輸送は、通常の物流と異なる厳格な規制が適用されます。主要な法律は 3 つです。
第 1 の消防法は、危険物(引火性液体、可燃性固体、酸化性液体など 6 類)を規制します。ガソリン、灯油、軽油、アルコール類、油脂類、火薬類が対象で、消防法上の危険物指定倉庫(危険品倉庫)で保管する必要があります。危険物取扱者(甲種・乙種・丙種)の資格が必要で、危険物指定数量(品目ごとに定めた保管上限)を超える保管は許可制です。
第 2 の毒劇法(毒物及び劇物取締法)は、毒物(青酸カリ、水銀化合物、シアン化合物など)と劇物(塩酸、硫酸、水酸化ナトリウムなど)を規制します。毒物劇物取扱責任者の選任、専用保管施設、購入者の身分確認、譲渡書の作成などが義務付けられます。
第 3 の IMDG コード(International Maritime Dangerous Goods Code、国際海上危険物規程)は、海上輸送での危険物運搬を規律する国際規則で、IMO(国際海事機関)が策定します。9 クラス(爆発物、ガス、引火性液体、可燃性固体、酸化性物質、毒物、放射性物質、腐食性物質、その他)に分類され、UN 番号(国連番号)ごとに包装・表示・積付・分離要件が細かく規定されています。国際輸送を扱う荷主・フォワーダーには必須の知識です。
同様に、航空輸送では IATA DGR(IATA Dangerous Goods Regulations、IATA 危険物規則書)が、鉄道輸送では鉄道運送に関する規則が別に定められています。危険物は輸送モードごとに規則が異なる点に注意が必要です。
コールドチェーン——3 温度帯と食品・医薬品の物流
コールドチェーン(Cold Chain)は、生鮮食品や医薬品を、生産地から消費地まで一貫した低温状態で運ぶ物流体系を指します。1950 年代に米国で概念化され、日本では 1965 年頃から普及しました。
3 温度帯は、常温(15 〜 25℃、乾物・缶詰など)、チルド(0 〜 10℃、生鮮野菜・乳製品など)、冷凍(−18℃ 以下、冷凍食品・アイスクリームなど)に分けられます。この 3 温度帯を、輸送車両(冷蔵冷凍車)・冷蔵倉庫・小売店の冷蔵冷凍ケースの各段階で維持することで、鮮度を保ちながら消費者に届ける仕組みです。
コールドチェーンは、通常の物流に比べて配送コストが 1.5 〜 2 倍かかります。冷蔵冷凍車の設備、燃料費(冷凍機の稼働)、電気代(冷蔵倉庫)、温度モニタリング機器、品質管理担当者などの追加コストが積み上がるためです。
生鮮 EC(Amazon フレッシュ、Oisix、楽天西友ネットスーパー、Yahoo!マートなど)の急拡大に伴い、コールドチェーン需要は増加しています。同時に、医薬品分野でも GDP(Good Distribution Practice、医薬品の流通基準、日本では 2018 年に厚労省ガイドライン)対応が求められ、コロナワクチン輸送では −70 〜 −80℃ の超低温輸送が全国規模で運用されました。
パレット T11 規格——物流の基本ハードウェア
パレットは、荷物を積載して保管・輸送するための平板で、フォークリフトで持ち上げて移動します。物流業の基本ハードウェアで、パレット規格の統一が業界効率化のカギとなります。
日本の代表的なパレット規格は T11(1,100mm × 1,100mm × 高さ 144mm、木製・プラスチック製)です。1970 年に JIS 規格(JIS Z 0601)で標準化され、日本の物流業界の主流になりました。積載重量は約 1,000kg、コンテナ(20 フィート)に 10 枚、40 フィートに 20 枚積載できます。
もう一つの標準規格が T12(1,200mm × 1,000mm)で、こちらは欧州(ISO 6780 で規定)・米国(GMA サイズ 48 × 40 インチ)などのグローバルサイズに近く、国際物流や自動車部品業界で使われます。
パレットの調達方法は、荷主・物流事業者が自社購入するケース(Own)と、パレット・レンタル会社(プールパレット、Pool Pallet)から借りるケースがあります。日本のレンタルパレット大手は日本パレットレンタル(JPR)、ユーピーアール(UPR)、日本パレットプール(NPP)で、荷主が全国どこでも同じパレットを借りて返却できるプール制を運営しています。
⚠️ 注意 パレット規格が業界・企業間で統一されていないと、荷主 A から荷主 B に横流ししたときに再パレット化(積み替え)が必要になり、大きなコスト要因になります。物流業界では「T11 統一」が長年の課題で、経産省・国交省も標準化を推進しています。海外との輸出入では、規格の違いを吸収するための積み替え作業が発生する構造です。
物流不動産——プロロジス・GLP ・ESR
物流不動産は、物流施設(倉庫、配送センター、物流ターミナル)を投資対象とする不動産カテゴリで、2000 年代以降に急拡大しました。特に大型のマルチテナント型物流施設(複数荷主が入居する大規模倉庫)は、EC 拡大と物流 DX で需要が急伸しています。
グローバルの物流不動産大手は、プロロジス(Prologis、米国、時価総額世界最大の物流 REIT)、GLP(Global Logistic Properties、シンガポール本社)、ESR(Enhanced Solutions in Real Estate、香港・シンガポール)、日本 GLP(GLP の日本法人)、CRE(シーアールイー、日本国内大手)が並びます。
日本の物流不動産の中心地は、首都圏(東京湾岸・圏央道沿線)、関西圏(阪神湾岸・京阪奈)、中京圏(名港・伊勢湾岸)です。特に圏央道沿線(久喜・幸手・八千代・柏・成田)は 2010 年代以降に物流施設の集積が進み、「物流の一等地」となっています。
大手ハウスメーカーの大和ハウス工業は物流不動産事業を強化し、DPL(Daiwa Property Logistics)ブランドで大型物流施設を全国展開しています。三井不動産(MFLP)、三菱地所(ロジクロス)、住友商事(SOSILA)も物流不動産に参入しています。
マテハン機器——AGV /AMR /自動倉庫
マテハン機器(Material Handling Equipment、マテリアル・ハンドリング機器)は、倉庫内で荷物を運搬・保管・仕分ける機械の総称です。物流 DX の中核領域で、EC 拡大と労働力不足に対応するため、自動化が急速に進んでいます。
第 1 のフォークリフトは、パレット貨物の運搬・積み下ろしに使う最も基本的な機器です。トヨタ L&F(豊田自動織機)、三菱ロジスネクスト、日立建機、Komatsu が業界大手です。近年は電動化(バッテリー式)が進み、ガソリン車から電動車への転換が進行中です。
第 2 の AGV(Automated Guided Vehicle、無人搬送車)は、床に貼った磁気テープや誘導線に沿って自動走行する搬送車です。1980 年代から製造業で普及し、決まったルートを繰り返し走る用途に強みがあります。
第 3 の AMR(Autonomous Mobile Robot、自律走行ロボット)は、AGV より進化した自律型の搬送ロボットで、レーザーセンサー(LiDAR)や画像認識で環境を把握し、動的に経路を決定します。2020 年代以降に急拡大し、Amazon が買収した Kiva Systems(現 Amazon Robotics)、日本の Rapyuta Robotics、GreyOrange、Locus Robotics が業界代表です。
第 4 の自動倉庫(AS/RS:Automated Storage and Retrieval System)は、貨物の入出庫を完全自動化する立体倉庫で、スタッカークレーンが縦横に動いて所定の棚に荷物を出し入れします。大型倉庫(1 万パレット以上)の高効率保管に向いており、ダイフク、村田機械、日立ソリューションズなどが業界大手です。
第 5 のピッキングシステムは、EC 出荷向けに個別ピッキング(1 個ずつ商品を取り出す作業)を自動化・支援するシステムです。GTP(Goods to Person、商品が人のところへ運ばれる)方式のシャトルシステム、ボイスピッキング、ARグラスを使ったピッキング支援などが代表です。Autostore(ノルウェー)、AutoStore を日本で扱うオカムラは急拡大中の分野です。
倉庫業界の主要 KPI
倉庫業のマネジメントで使う主要 KPI を整理しておきます。
坪効率は、1 坪あたりの月間売上で、月 8,000 〜 15,000 円が業界水準です。首都圏の高機能マルチテナント倉庫では月 15,000 〜 25,000 円まで上がるケースもあります。
稼働率は、保管容量に対する実保管量の割合で、平均 70 〜 85 %。稼働率が 60 % を下回ると赤字化リスクが高まります。
パレット単価(月極保管料)は、1 パレット月額 1,500 〜 3,000 円が業界水準です。地区・温度帯・付随サービスで幅があります。
入出庫回転数(在庫回転率)は、月間出荷量 ÷ 平均在庫量で、EC 物流では月 10 回転超が一般的、量販店向け配送センターでは月 3 〜 5 回転、卸型倉庫では月 1 〜 2 回転が目安です。
誤出荷率は、1 万件あたりの誤出荷件数で、業界水準は 0.1 〜 1 件です。ゼロを目指すのが理想ですが、完全ゼロは事実上不可能で、0.5 件(1 万件に 5 件の誤出荷)以下が優秀ラインです。
まとめ
このレッスンでは、以下のことを学びました。
- 倉庫業法は 2003 年に登録制へ改正され、3 分類(普通倉庫・冷蔵倉庫・水面倉庫)を規定
- 危険物取扱いは消防法・毒劇法・IMDG コードで規律され、輸送モードごとに規則が異なる
- コールドチェーンの 3 温度帯(常温・チルド・冷凍)は配送コストが通常の 1.5 〜 2 倍
- パレット T11 規格(1,100 × 1,100mm)は日本の主流、T12 は欧州・米国標準
- 物流不動産大手はプロロジス、GLP、ESR、日本 GLP、CRE
- マテハン機器はフォークリフト、AGV、AMR、自動倉庫、ピッキングシステムに分類
- 倉庫業の主要 KPI は坪効率、稼働率、パレット単価、入出庫回転数、誤出荷率
次のレッスンでは、業界を今もっとも動かしている物流 2024 年問題と改正物流法を扱います。時間外労働上限規制の年 960 時間、輸送能力 14 % 減の試算、改正物流法で新設された CLO(物流統括管理者)選任義務、特定技能自動車運送業 2024 年追加までの制度動向を俯瞰します。
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