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スキルアップカレッジ

広告主要 KPI(GRP /CPM /CPC /CPA /ROAS)と広告業界

レッスン6:広告主要 KPI(GRP /CPM /CPC /CPA /ROAS)と広告業界

このレッスンで学ぶこと

  • 日本の広告市場(約 7.5 兆円)とその構成を理解する
  • 電通博報堂 DYHD の 2 大代理店の位置づけを把握する
  • 広告 KPI 5 つ(GRP /CPM /CPC /CPA /ROAS)を実務レベルで扱える
  • 運用型広告と DSP /SSP /RTB 、主要広告プラットフォームを俯瞰する

前のレッスンでは、放送業界 6 分類と視聴率・TVer /SVOD /AVOD /FAST の動画配信ビジネスを扱いました。このレッスンでは、通信・メディア業の第 4 領域である広告業界と、業界の共通言語である広告 KPI 5 つ(GRP /CPM /CPC /CPA /ROAS)を扱います。

日本の広告市場——約 7.5 兆円の構成

日本の広告市場は、2023 年時点で約 7.5 兆円(電通 日本の広告費 2023 年、2024 年速報約 8 兆円)に達しています。その内訳(2023 年、電通 日本の広告費)は以下の通りです。

  • インターネット広告費:約 3.4 兆円(構成比 46 %)
  • テレビメディア広告費:約 1.7 兆円(同 24 %)
  • プロモーションメディア広告費:約 1.5 兆円(同 21 %、屋外・交通・折込・DM ・イベントなど)
  • 新聞・雑誌・ラジオ広告費:約 6,500 億円(同 9 %)

インターネット広告費がテレビ広告費の 2 倍規模に達し、広告市場のデジタルシフトが定着しました。2019 年にインターネット広告費がテレビ広告費を初めて上回った転換点から 5 年、この差は継続的に拡大しています。

インターネット広告費の内訳(2023 年)は、運用型広告が約 2.9 兆円(インターネット広告費の 85 %)、予約型広告が約 3,000 億円、成果報酬型広告が約 2,000 億円などです。運用型広告(RTB による自動買付)が広告業界の主戦場となっています。

電通と博報堂 DYHD——2 大広告代理店

日本の広告業界は、電通と博報堂 DY ホールディングスの 2 大代理店が業界を代表します。

第 1 の電通グループ(東証プライム上場、時価総額約 1.3 兆円)は、1901 年設立、日本最大かつ世界 5 位の広告代理店グループです。2013 年に英 Aegis Group を約 4,000 億円で買収、電通イージス・ネットワーク(現・電通インターナショナル)として世界展開しています。2024 年 3 月期の連結売上は約 1.4 兆円、国内広告市場シェアの約 25 % を占めるとされます。

第 2 の博報堂 DY ホールディングス(東証プライム上場、時価総額約 5,000 億円)は、博報堂・大広・読売広告社の 3 社の統合持株会社として 2003 年に発足しました。博報堂本体は 1895 年設立で日本第 2 位の広告代理店です。2024 年 3 月期の連結売上は約 1.7 兆円、国内広告市場シェアの約 20 % を占めるとされます。

これら 2 社は「電博」(でんぱく)と呼ばれ、日本の広告業界の双璧です。それに続くのが ADK ホールディングス(連結売上約 1,800 億円、2024 年 3 月期)、サイバーエージェント(連結売上約 8,200 億円、2024 年 9 月期、うちインターネット広告事業約 4,000 億円)、電通デジタル、アイレップ、セプテーニなどのデジタル広告特化企業です。

広告 4 領域——マス広告/デジタル広告/OOH /プロモーション

日本の広告業界は、大きく 4 領域に分類できます。

第 1 領域のマス広告は、テレビ・新聞・雑誌・ラジオの伝統的な 4 マス媒体の広告です。1990 年代までは広告費全体の 70 % 超を占めていましたが、2023 年時点で約 33 %(テレビ・新聞・雑誌・ラジオ合計)まで減少しました。

第 2 領域のデジタル広告は、インターネット広告全般で、運用型広告、予約型広告、成果報酬型広告に細分化されます。2023 年時点で広告市場の 46 %(3.4 兆円)を占めます。

第 3 領域の OOH(Out Of Home、屋外広告)は、街頭ビジョン、駅・電車内広告、看板広告などです。2023 年時点で約 6,500 億円規模で、デジタルサイネージ(DOOH)の拡大が続いています。

第 4 領域のプロモーションは、SP(Sales Promotion)とも呼ばれ、店頭 POP、折込チラシ、DM /メール、イベント、電話勧誘、キャンペーン、フリーマガジン、Yellow Pages、街頭サンプリングなどが該当します。2023 年時点で約 1.5 兆円規模です。

これら 4 領域を統合的にプランニング・実行する「統合マーケティング・コミュニケーション(IMC)」が広告代理店の中核サービスです。

広告 KPI 5 つ——業界の共通言語

広告業界には、5 つの主要 KPI があり、業界の共通言語となっています。順に見ていきましょう。

GRP(Gross Rating Point、延べ視聴率)

GRP は、テレビ広告の到達累積を示す指標で、視聴率 × 出稿本数の累積で算出します。テレビ CM の売買単位として日本の広告業界で標準的に使われる指標です。

例:視聴率 10 % の枠で 50 本出稿すると 500GRP、視聴率 5 % の枠で 100 本出稿しても 500GRP と、同じ量の広告到達を示します。「500GRP のキャンペーン」で 1,000 万〜 3,000 万円程度が業界の目安価格ですが、放送局・時期・時間帯・番組で大きく変動します。

コアターゲット GRP(13 〜 49 歳の個人視聴率での GRP)が、2020 年代以降のテレビ広告売買で重要な指標となっています。

CPM(Cost Per Mille、1,000 インプレッションあたりコスト)

CPM は、1,000 回の広告表示(インプレッション)あたりのコストを示す指標です。デジタル広告・雑誌広告で使われ、広告の効率を測る基本指標です。

例:CPM が 500 円なら、1,000 回の広告表示に 500 円かかることを意味します。10 万回の広告表示なら 50,000 円のコストです。

日本のインターネット広告の CPM は数百円〜数千円が一般的で、YouTube ・Meta(Facebook、Instagram)・X(旧 Twitter)・TikTok などプラットフォームごとに水準が異なります。ターゲティング精度が高い広告ほど CPM は高く、ブランディング目的のディスプレイ広告は CPM が低めです。

CPC(Cost Per Click、1 クリックあたりコスト)

CPC は、広告 1 クリックあたりのコストを示す指標です。運用型広告の効率指標として重要で、Google 広告・Facebook 広告などのクリック単価で使われます。

CPC は業種・キーワードにより数十円〜数千円と大きく変動します。競合の多い業種(法律、医療、金融など)は CPC が高く、ニッチな業種は CPC が低くなります。Google 広告のリスティング広告では、金融・法律業種の CPC が 1,000 円を超えるケースも珍しくありません。

CPA(Cost Per Acquisition、1 成果あたりコスト)

CPA は、コンバージョン(購入・会員登録・アプリインストール・資料請求など)1 件を獲得するあたりの広告費です。マーケティング施策の ROI 判断で最重要指標の 1 つです。

CPA = 広告費 ÷ コンバージョン件数 で算出されます。例:広告費 100 万円でコンバージョン 500 件なら CPA は 2,000 円です。

CPA の目標水準は、業種・商品価格により異なります。EC ・D2C では商品単価の 10 〜 30 % 程度が CPA 目標の目安、B2B SaaS では顧客獲得コスト(CAC)として数万〜数十万円が目安となります。

ROAS(Return On Ad Spend、広告費用対効果)

ROAS は、広告費 1 円あたりの売上額を示す指標です。ROAS = 売上 ÷ 広告費 × 100 % で算出されます。

例:広告費 100 万円で売上 300 万円なら ROAS 300 %(広告費 1 円で売上 3 円)を意味します。EC ・D2C ブランドの広告運用で標準指標として使われます。

ROAS の目標水準は、粗利率により異なります。粗利率 30 % の商品なら ROAS 300 % 超(広告費以外のコストで利益が出る水準)が最低目標、粗利率 70 % の商品なら ROAS 150 % 超が最低目標です。

💡 ポイント 「GRP・CPM・CPC・CPA・ROAS」の 5 KPI は広告業界の共通言語です。この 5 語を押さえておくと、広告代理店の提案・広告主の意思決定・広告プラットフォームのレポートすべてが読み解けるようになります。業界会話で必ず登場する語彙です。

運用型広告と DSP /SSP /RTB——2010 年代の広告革命

運用型広告は、広告の入札・配信・最適化を自動化する仕組みで、2010 年代以降のデジタル広告の中核となりました。運用型広告の技術基盤が、DSP /SSP /RTB です。

第 1 の DSP(Demand-Side Platform、需要側プラットフォーム)は、広告主・広告代理店側のプラットフォームです。広告主のターゲット・予算・入札戦略を設定し、複数の広告在庫(メディア)に対して自動入札します。日本の主要 DSP は、Google Marketing Platform、The Trade Desk、Criteo、YDN(Yahoo Display Network)、Freakout、MicroAd BLADE などです。

第 2 の SSP(Supply-Side Platform、供給側プラットフォーム)は、メディア側のプラットフォームです。メディアの広告在庫を複数の DSP に対してオークション形式で販売します。日本の主要 SSP は、Google Ad Manager、AppNexus(Xandr)、Rubicon、OpenX、fluct、GENIEE などです。

第 3 の RTB(Real-Time Bidding、リアルタイム入札)は、DSP と SSP の間で 100 ミリ秒程度のリアルタイムオークションを行う仕組みです。1 つの広告表示機会に対して複数の DSP が入札し、最高値をつけた広告主の広告が表示される仕組みです。

この DSP /SSP /RTB の仕組みにより、広告の細かなターゲティング(デモグラフィック、興味関心、位置情報、購買履歴など)と、リアルタイムの効果最適化が可能になりました。運用型広告費が日本のインターネット広告費の約 85 %(2.9 兆円)を占める規模まで拡大した理由です。

主要広告プラットフォーム——Google /Meta /TikTok /Amazon

日本のデジタル広告市場は、以下 4 大グローバルプラットフォームが主要なシェアを持ちます。

第 1 の Google(Alphabet 傘下)は、検索広告(Google 広告)、ディスプレイ広告(Google Display Network)、YouTube 広告、モバイル広告(AdMob)を提供します。日本のデジタル広告市場でシェア 30 % 前後と推定されます。検索広告は「顕在ニーズ」を捉える広告として、コンバージョン重視の広告主に選ばれる基本プラットフォームです。

第 2 の Meta(Facebook、Instagram、Messenger、WhatsApp の親会社)は、Facebook 広告、Instagram 広告、Messenger 広告を提供します。日本のシェアは約 15 〜 20 %。詳細なターゲティング(興味関心、行動履歴、ルックアライク)が強みで、D2C ブランドの広告に多用されます。

第 3 の TikTok(ByteDance 傘下)は、TikTok の動画広告を提供します。日本のシェアは 2019 年頃から急拡大し、2024 年時点で約 10 %。若年層(10 〜 20 代)へのリーチが強みで、動画ネイティブ広告・インフィード広告が中核商品です。

第 4 の Amazon(Amazon.com Inc.)は、Amazon 検索広告、Amazon DSP、Fire TV 広告を提供します。日本のシェアは急拡大中で 2024 年時点で約 8 〜 10 %。EC で購入意欲が最も高いユーザー層にリーチできる強みが評価されています。

その他、X(旧 Twitter、2022 年 10 月 Elon Musk 買収)、LINE、SmartNews、Rakuten、Yahoo!(Z ホールディングス)などが日本の広告プラットフォームとして展開しています。

Cookie 廃止延期と広告業界の未来

Google Chrome の 3rd Party Cookie(第三者 Cookie)廃止は、広告業界の大きな論点として続いています。Google は当初 2022 年頃の廃止を予定していましたが、複数回の延期を経て、2024 年 7 月に「廃止方針を撤回し、ユーザーが選択できる仕組みに変更する」と発表しました。

3rd Party Cookie は、ユーザーが訪問した Web サイト以外の第三者(広告ネットワーク、DMP など)が発行する Cookie で、クロスサイトトラッキング(複数サイト横断の行動追跡)に使われてきました。プライバシー保護の観点で、Safari(Apple)・Firefox(Mozilla)は既に廃止済みですが、シェア最大の Chrome の対応が業界の関心事でした。

Cookie 廃止の代替技術として、以下が業界で議論されています。

  • Privacy Sandbox(Google 主導、Topics API・FLEDGE などの技術群)
  • ファーストパーティデータ活用(自社会員 DB を活用)
  • コンテクスチュアルターゲティング(コンテンツ内容に基づくターゲティング)
  • CMP(Consent Management Platform、同意管理ツール)による同意取得

日本では、電気通信事業法 2022 年改正(外部送信規律)でトラッキング系 Cookie の同意取得が実質義務化されており、業界の対応が進んでいます。

ステマ規制——2023 年 10 月施行

ステマ(ステルスマーケティング、Stealth Marketing)規制は、広告であることを明示しない広告表示を禁止する規制です。日本では 2023 年 10 月 1 日に景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)の運用基準として施行されました。

規制の中核は、「事業者が自らの表示であるにもかかわらず、第三者の表示であるかのように偽ることを不当表示として禁止する」ことです。具体的には、以下が規制対象になります。

  • 事業者が個人に広告料や商品を提供し、SNS で好意的な投稿をさせ、その広告であることを明示しない場合
  • インフルエンサーマーケティングで「#PR」「#広告」の表示なしに好意的な発信を依頼する場合
  • 事業者が自作自演で SNS 投稿・Web レビューを行い、第三者の投稿を装う場合

違反した場合、消費者庁からの措置命令、事業者名の公表、課徴金(最大売上高の 3 %)の対象となります。

ステマ規制施行以降、SNS 投稿への「#PR」「#広告」表示が業界慣行として定着しつつあります。既刊のプレスリリース実践レッスン 8 でも扱われた論点で、広告主・広告代理店・インフルエンサー・メディアすべてが対応を求められる規制です。

広告代理店の 15 〜 20 % マージンモデル

日本の広告代理店の主要収益モデルは、メディア買付額の 15 〜 20 % マージンです。この慣行は 1950 〜 60 年代から続く日本の広告業界特有のモデルで、以下の構造で運用されます。

広告代理店が広告主から広告予算 1,000 万円の発注を受けたとします。広告代理店はメディア(テレビ局・新聞社・Web メディアなど)に対して、800 〜 850 万円分の広告を発注します。差額 150 〜 200 万円が広告代理店のマージン(手数料収入)となります。

この 15 〜 20 % マージンは、広告代理店の以下のサービスの対価とされています。

  • 広告戦略立案・クリエイティブ制作
  • メディアプランニング・買付
  • 効果測定・レポート
  • キャンペーン運営

デジタル広告の場合、運用型広告の運用手数料は 15 〜 25 % が業界水準で、伝統的なメディア買付マージンより高めに設定されるケースが増えています。運用の複雑さ・専門性の対価という位置づけです。

近年、広告主側から「マージンの透明化」「成果連動報酬モデル」の要請が高まっており、広告代理店の収益モデルは変化の途上にあります。

まとめ

このレッスンでは、以下のことを学びました。

  • 日本の広告市場は約 7.5 兆円、内訳はインターネット 46 %・テレビ 24 %・プロモーション 21 %・新聞雑誌ラジオ 9 %
  • 電通グループ(連結売上約 1.4 兆円)と博報堂 DYHD(同約 1.7 兆円)が「電博」として業界の双璧
  • 広告 4 領域はマス広告・デジタル広告・OOH(屋外)・プロモーション
  • 広告 KPI 5 つは GRP(テレビ広告到達)・CPM(1,000 表示あたり)・CPC(1 クリックあたり)・CPA(1 成果あたり)・ROAS(広告費用対効果)
  • 運用型広告は DSP /SSP /RTB の技術基盤で自動入札・自動最適化、日本のインターネット広告費の約 85 %(2.9 兆円)
  • 主要広告プラットフォームは Google・Meta・TikTok・Amazon の 4 大プラットフォーム
  • Cookie 廃止は Google が 2024 年 7 月に方針転換、Privacy Sandbox など代替技術が業界で議論
  • ステマ規制は 2023 年 10 月 1 日施行、SNS 投稿への「#PR」「#広告」表示が業界慣行に
  • 広告代理店の収益モデルは 15 〜 20 % マージン、運用型広告は 15 〜 25 % 運用手数料

次のレッスンでは、パブリッシャー経営(新聞・雑誌・出版・Web メディア)と、電通・博報堂の統合報告書、コンテンツ制作会社の業界構造を扱います。


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