5G /Beyond 5G /Open RAN と料金国際比較・消費者保護規制
レッスン4:5G /Beyond 5G /Open RAN と料金国際比較・消費者保護規制
このレッスンで学ぶこと
- 5G の 3 特徴(超高速・超低遅延・多数同時接続)と日本の 5G 商用化 2020 年 3 月を理解する
- Beyond 5G(総務省 2020 年 6 月戦略)と Open RAN の位置づけを把握する
- モバイル通信料金の国際比較(総務省 電気通信サービスに係る内外価格差調査)を扱える
- iOS /Android エコシステム経済圏(App Store 30 % 手数料、DMA、ATT)を俯瞰する
前のレッスンでは、3 法体系と通信キャリア 4 社/MVNO 、電気通信事業法 2019 年・2022 年改正を扱いました。このレッスンでは、通信技術の進化(5G /Beyond 5G /Open RAN)と、モバイル通信料金の国際比較・消費者保護規制の詳細、そして iOS /Android エコシステム経済圏を扱います。
5G——2020 年 3 月商用化、3 特徴
5G(第 5 世代移動通信システム、5th Generation Mobile Communication System)は、日本では 2020 年 3 月に商用サービスが開始されました。NTT ドコモが 3 月 25 日、KDDI が 3 月 26 日、ソフトバンクが 3 月 27 日にそれぞれ商用開始しました。楽天モバイルは 2020 年 9 月に 5G サービスを開始しています。
5G の 3 大特徴は以下の通りです。
第 1 の特徴は超高速(eMBB:enhanced Mobile Broadband、拡張モバイルブロードバンド)です。理論値で最大 20Gbps、実測値で 1 〜 2Gbps の通信速度を実現します。4G LTE(100Mbps 〜 1Gbps 程度)の 10 倍以上の速度で、動画配信・大容量データ通信の体験を大きく変えました。
第 2 の特徴は超低遅延(URLLC:Ultra-Reliable and Low Latency Communications、超信頼低遅延通信)です。遅延を 1 ミリ秒以下に抑える技術で、自動運転、遠隔手術、産業機器の遠隔制御などのユースケースを実現します。
第 3 の特徴は多数同時接続(mMTC:massive Machine Type Communications、大規模マシンタイプ通信)です。1km² あたり最大 100 万台の同時接続を可能にする技術で、IoT・スマートシティ・自動運転車両群の通信を支えます。
日本の 5G 普及率は 2024 年時点でモバイル契約数の約 40 % に達しており、大都市圏では 5G 対応エリアが 90 % 超まで拡大しました。地方の 5G エリア拡充と、5G の 3 特徴を活かした業務用途(産業用 5G、ローカル 5G)の展開が今後の課題です。
📝 補足 既刊の xR 入門レッスン 8 で、5G が xR にもたらす変化(クラウド xR ・超低遅延 xR ・大規模同時接続 xR )が扱われています。技術インフラとしての 5G の詳細と xR ユースケースについては xR 入門を参照してください。本コースでは業界インフラ論としての 5G の位置づけを扱います。
Beyond 5G——総務省 2020 年 6 月戦略と 2030 年商用化目標
Beyond 5G(B5G、6G)は、5G の次世代移動通信システムで、2030 年頃の商用化を目標としています。日本では総務省が 2020 年 6 月に「Beyond 5G 推進戦略」を公表、以降官民連携での研究開発が進んでいます。
Beyond 5G の目標性能は以下の通りです(総務省 Beyond 5G 推進戦略)。
- 通信速度:5G の 10 倍(最大 100Gbps 〜 1Tbps)
- 通信遅延:5G の 10 分の 1(0.1 ミリ秒以下)
- 同時接続数:5G の 100 倍
- 電力効率:5G の 100 倍
これらの目標性能を実現するため、テラヘルツ波(100GHz 以上の超高周波帯)、超大規模 MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)、AI ネイティブネットワーク、非地上系ネットワーク(衛星・成層圏プラットフォーム)などの技術開発が進行中です。
Beyond 5G の商用化は 2030 年頃を予定していますが、それまでの技術評価・国際標準化(3GPP、ITU-R)・周波数割当(世界無線通信会議 WRC-27 で決定予定)などの過程が続きます。
Beyond 5G のユースケースとしては、リアルタイム空間伝送、完全自動運転、遠隔医療、ホログラフィック通信、スマートシティなどが想定されています。ただし、これらのユースケースが 2030 年までにどこまで実装されるかは、ハードウェア・ソフトウェア・ビジネスモデルの整合性次第です。
Open RAN——2020 年頃から実用化
Open RAN(Open Radio Access Network、オープン無線アクセスネットワーク)は、基地局のハードウェア・ソフトウェアをオープンな仕様で相互接続可能にする技術です。従来の基地局は 1 ベンダー(Nokia、Ericsson、Huawei、ZTE、Samsung、富士通、NEC など)のハードウェア・ソフトウェアを一体で導入する「クローズドな垂直統合」でしたが、Open RAN では複数ベンダーのコンポーネントを組み合わせて基地局を構築できます。
Open RAN の主要仕様は、O-RAN Alliance(2018 年 2 月設立、米国 AT&T ・中国 China Mobile ・ドイツ Deutsche Telekom などが設立メンバー)が策定しています。日本からは NTT ドコモが設立メンバーとして参加、KDDI ・楽天モバイル・ソフトバンクも加盟しています。
Open RAN のメリットは、以下 3 点です。
- ベンダーロックインの回避(複数ベンダー競争によるコスト削減)
- 柔軟な機能拡張(ソフトウェア更新による機能追加)
- サプライチェーンのリスク分散(地政学リスク・調達リスクへの対応)
楽天モバイルは、世界初の完全 Open RAN・仮想化ネットワーク(vRAN)で商用サービスを開始したことで注目を集めました。従来の 3 分の 1 程度の CAPEX(設備投資)で基地局を構築できたと発表されており、業界の注視領域となっています。
一方、Open RAN の実用化には、複数ベンダー間の相互接続保証、性能安定性、ソフトウェアの完成度など、まだ課題が残ります。2024 年時点で本格採用は楽天モバイル・NTT ドコモの一部・海外の一部キャリアに限られ、Nokia /Ericsson /Huawei などの伝統的な垂直統合ベンダーが依然として主流です。
モバイル通信料金の国際比較——総務省調査
総務省は毎年、「電気通信サービスに係る内外価格差調査」を実施し、日本と主要国のモバイル通信料金を比較しています。2024 年 3 月版の結果によると、以下の状況です。
日本の 20GB プランの料金は、主要 6 か国(東京・ロンドン・パリ・ソウル・ニューヨーク・デュッセルドルフ)の平均以下の水準まで低下しました。2019 年時点では日本のプランが最も高価だったのが、2020 〜 2021 年の新料金プラン発表以降、料金水準が大幅に下がった結果です。
具体的な料金比較(2024 年 3 月時点、月額)は以下の通りです。
- 東京:ahamo(NTT ドコモ)2,970 円、povo(KDDI)2,700 円、LINEMO(ソフトバンク)2,728 円
- ロンドン:Vodafone、EE、Three で 15 〜 25 ポンド(約 3,000 〜 5,000 円)
- パリ:Orange、SFR、Bouygues で 15 〜 25 ユーロ(約 2,400 〜 4,000 円)
- ソウル:SK テレコム、KT、LG U+ で 50,000 〜 100,000 ウォン(約 5,500 〜 11,000 円)
- ニューヨーク:Verizon、AT&T、T-Mobile で 60 〜 90 ドル(約 9,000 〜 13,500 円)
こうしてみると、日本の 20GB プランはグローバルで見て中程度の水準に落ち着いており、米国・韓国と比較すると格段に安いことがわかります。
菅政権の値下げ圧力(2020 年 9 月〜 2021 年 10 月)と楽天モバイル参入(2020 年 4 月本格)が重なった 2020 〜 2021 年が、この料金水準変化の起点となりました。
消費者保護規制——キャッシュバック規制と 2 年縛り規制
前のレッスンで扱った電気通信事業法 2019 年改正の詳細を、ここで補足します。
第 1 のキャッシュバック規制は、端末購入補助を 2 万円上限に規制するものです。それまでは MNP(他社への乗り換え)を条件に数万円のキャッシュバックが競争の中心でしたが、これを規制することで料金競争を「本体の通信料金」に集中させる狙いです。
第 2 の 2 年縛り規制は、契約に付随する 2 年縛り違約金の上限を 1,000 円に引き下げるものです。それまでは 2 年契約途中の解約に 9,500 円の違約金が発生していたケースが多く、契約解除の障壁となっていました。
第 3 の分離プラン義務化は、通信サービス料金と端末代金を明確に分離して表示することを義務付けたものです。それまでは「実質 0 円」「実質半額」といった表現で端末代金が通信料金に組み込まれていましたが、これを禁止しました。
これら 3 規制により、消費者は通信料金と端末代金を明確に比較でき、複数キャリア間の乗り換えも容易になりました。
iOS /Android エコシステム経済圏
モバイル通信市場は、通信キャリアだけでなく、端末 OS の 2 大プラットフォーム(iOS、Android)のエコシステムでも成り立っています。
iOS(Apple 提供、2007 年 iPhone 発売開始)は、iPhone ・iPad のみで動作するクローズドなエコシステムです。日本の iPhone シェアは 2024 年時点で約 65 %(世界平均約 25 % と比較して極めて高い)です。App Store(Apple の公式アプリ配信プラットフォーム)が唯一のアプリ配信経路で、アプリ内課金・アプリ購入の 30 % を Apple が手数料として徴収する仕組みです。
Android(Google 提供、2008 年商用開始)は、Google・Samsung・OPPO・Xiaomi など多数のメーカーが搭載するオープンなエコシステムです。Google Play が主要アプリ配信プラットフォームですが、ほかのストア(Amazon Appstore、Galaxy Store など)や、Web からの APK 直接インストールも可能です。Google Play も 30 % 手数料モデルが基本です。
この 30 % 手数料モデル(通称「Apple 税」「Google 税」)は、業界の大論点となっています。デベロッパー側からは「独占的な地位を利用した高すぎる手数料」との批判が続き、以下の規制動向が生まれています。
第 1 の DMA(Digital Markets Act、EU デジタル市場法)は、2022 年 11 月に成立、2024 年 3 月に本格適用されました。Apple・Google・Meta などの「ゲートキーパー」に対して、代替アプリストアの許可、外部決済の許可、相互運用性の確保などを義務付けます。EU 内では iOS でも代替アプリストア(AltStore など)の利用が可能になりました。
第 2 の ATT(App Tracking Transparency、Apple 2021 年 4 月導入)は、iOS でアプリがユーザーの他アプリ・Web サイトの行動を追跡する場合、ユーザーの明示的な同意を得ることを義務付ける仕組みです。この結果、Meta(Facebook)などの広告事業は大幅な影響を受けました(Meta は 2022 年に 100 億ドル規模の広告収入減の影響を試算)。
第 3 の日本の動向として、公正取引委員会が 2020 年から Apple・Google の日本での事業慣行の調査を実施し、2023 年に「Apple の App Store 手数料のあり方」への懸念を公表しています。日本での規制導入は、EU の動向を見ながら 2025 〜 2027 年頃と見込まれます。
⚠️ 注意 iOS /Android のエコシステム経済圏は、通信キャリア各社のスマホ販売・課金・広告事業に大きな影響を与えています。「通信キャリアは端末を売る立場でありながら、端末上のエコシステム経済からは大きな取り分を得られない」という構造で、通信キャリアの多角化(金融・エネルギー・エンタメなど)の背景にもなっています。
モバイル通信料金の国際比較データの解釈
総務省の内外価格差調査データは、以下の点に注意して解釈する必要があります。
第 1 の注意点は、比較対象都市の選定です。総務省調査は東京・ロンドン・パリ・ソウル・ニューヨーク・デュッセルドルフの 6 都市を対象としており、各都市の代表的な 3 社の料金プランで比較しています。都市によって競争環境・キャリア数が異なるため、単純比較には限界があります。
第 2 の注意点は、為替レートです。円安・円高で日本の料金の見え方が変わります。2024 年時点は円安基調で、外貨建て料金が日本円換算で高く見える傾向があります。
第 3 の注意点は、通信品質です。日本の通信キャリアは通信品質(人口カバレッジ、通信速度、混雑時間帯の安定性)が世界最高水準にあるとされ、価格だけで比較すべきでないという議論もあります。
これらの点を踏まえた上で、日本のモバイル通信料金の国際水準を評価することが、業界会話の作法です。
まとめ
このレッスンでは、以下のことを学びました。
- 5G は 2020 年 3 月に日本で商用化、3 特徴(超高速 eMBB ・超低遅延 URLLC ・多数同時接続 mMTC)
- Beyond 5G(6G)は総務省 2020 年 6 月「Beyond 5G 推進戦略」で 2030 年商用化目標、5G の 10 倍速度・10 分の 1 遅延
- Open RAN は基地局のハードウェア・ソフトウェアをオープン仕様で相互接続可能にする技術で、O-RAN Alliance が仕様策定、楽天モバイルが世界初の完全 Open RAN・vRAN で商用化
- モバイル通信料金の国際比較(総務省 電気通信サービスに係る内外価格差調査 2024 年 3 月版)で、日本の 20GB プランは主要 6 か国の平均以下の水準
- 消費者保護規制(2019 年電気通信事業法改正)は分離プラン義務化・2 年縛り違約金上限 1,000 円・キャッシュバック 2 万円上限
- iOS /Android エコシステム経済圏は 30 % 手数料モデルが業界の大論点、EU DMA(2024 年 3 月適用)と Apple ATT(2021 年 4 月導入)が主要な規制動向
次のレッスンでは、放送業界 6 分類(地上波民放キー局・ローカル局・衛星・ケーブル・NHK・ネット配信)と視聴率・TVer /SVOD /AVOD /FAST の動画配信ビジネスを扱います。
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