不動産登記法・都市計画法・用途地域・建築基準法
レッスン5:不動産登記法・都市計画法・用途地域・建築基準法
このレッスンで学ぶこと
- 不動産登記法(表題部・権利部・甲区・乙区)と登記事項証明書の読み方を理解する
- 都市計画法の都市計画区域・市街化区域・市街化調整区域を扱える
- 13 用途地域と建築基準法の建ぺい率・容積率・北側斜線・日影規制を把握する
- 住宅品確法(10 年瑕疵担保・住宅性能表示制度)と改正建築物省エネ法 2025 年 4 月適合義務化を俯瞰する
前のレッスンでは、借地借家法と賃貸管理業法・サブリース新法を扱いました。このレッスンでは、不動産の物的な側面を規律する法律群——不動産登記法・都市計画法・用途地域・建築基準法・住宅品確法・改正建築物省エネ法——を扱います。「建物と土地の物的属性」を規律する法律で、不動産取引の技術的な基礎になります。
不動産登記法——所有権を公示する仕組み
不動産登記法(現行法は 2004 年 6 月に全面改正)は、土地・建物の物理的属性と権利関係を公示する仕組みを規律する法律です。登記制度により、誰が不動産を所有しているか、どんな権利が設定されているかが、法務局の登記簿(登記記録)で第三者に公示されます。
登記の目的は、取引の安全確保です。買主・借主・金融機関などが、対象不動産の権利関係を法務局で確認できる仕組みにより、二重売買や無権利者からの購入といったトラブルを防止します。日本の不動産取引で「登記簿を確認する」ことが必須なのはこの理由からです。
登記簿の構造——表題部・権利部(甲区・乙区)
不動産の登記簿(正式には「登記記録」、書面は「登記事項証明書」)は、以下の 3 部で構成されます。
第 1 部の表題部は、不動産の物理的属性を記載する部分です。土地なら所在地・地番・地目・地積、建物なら所在地・家屋番号・種類・構造・床面積などが記載されます。表題部登記は、新築時などに 1 か月以内に登記する義務があります。
第 2 部の権利部(甲区)は、所有権に関する事項を記載する部分です。所有者の氏名・住所、取得原因(売買・相続・贈与など)、取得年月日などが記載されます。所有権移転登記が甲区に記録されます。
第 3 部の権利部(乙区)は、所有権以外の権利(抵当権・根抵当権・地上権・賃借権など)を記載する部分です。住宅ローンを組んで住宅を購入すると、乙区に抵当権が設定登記されます。
登記事項証明書(通称「登記簿謄本」、2005 年のオンライン化以降は「登記事項証明書」)は、法務局または法務局オンライン申請システムから 1 通 600 円で取得できます。不動産取引・住宅ローン申込・訴訟などで頻繁に使われる書類です。
📝 補足 「登記簿謄本」と「登記事項証明書」は同じものを指します。2005 年に登記制度が完全電子化されるまでは紙の登記簿が原本だったため「謄本」(原本の写し)と呼ばれていましたが、電子化後は「登記事項証明書」という名称に変更されました。慣例で「謄本」と呼ばれることも多いですが、正式名称は「登記事項証明書」です。
抵当権と根抵当権
抵当権と根抵当権は、住宅ローン・不動産融資の担保として設定される代表的な権利です。
抵当権は、特定の債権(例:住宅ローン 3,000 万円)を担保する権利です。金融機関が住宅ローンを実行する際に、対象不動産に抵当権を設定登記します。ローン完済時に抵当権抹消登記を行います。
根抵当権は、一定の限度額(極度額)の範囲内で、継続的に発生する複数の債権をまとめて担保する権利です。事業性融資(アパートローン、事業融資など)で頻繁に使われる仕組みで、複数の融資契約を 1 つの根抵当権でカバーできます。
抵当権・根抵当権の設定は、司法書士(司法書士法に基づく国家資格)が代理して行うのが実務上の慣行です。登記業務は司法書士の独占業務(正確には「登記の申請代理」)です。
都市計画法——1968 年制定、まちづくりの基本法
都市計画法は 1968 年に制定された、日本のまちづくりを規律する基本法です。土地利用のあり方、市街地の整備、都市施設の整備などを定めています。
同法の核心は、都市の広がりを 3 段階に区分する「区域区分制度(線引き制度)」です。
第 1 の都市計画区域は、都市計画法に基づく都市計画を策定する対象地域で、日本の国土の約 4 分の 1、人口の約 92 % が居住する地域です。都市計画区域内でも、以下の 2 区分に線引きされます。
第 2 の市街化区域は、既に市街地となっている区域と、おおむね 10 年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域です。都市計画区域面積の約 4 分の 1 を占めます。市街化区域内には後述する 13 用途地域が定められます。
第 3 の市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域で、農地・山林・自然環境の保全を目的としています。市街化調整区域では、原則として建物を建てられない厳しい規制があります。都市計画区域面積の約 4 分の 3 を占めます。
この線引き制度は、無秩序な都市の拡大(スプロール現象)を防止し、計画的な土地利用を実現するための仕組みです。
13 用途地域——住居系・商業系・工業系
市街化区域内では、建物の用途に応じて 13 の用途地域が指定されます。用途地域ごとに、建てられる建物の種類・規模が定められています。
住居系用途地域は 7 種類あります。
- 第一種低層住居専用地域:低層住宅の良好な環境(10m または 12m 高さ制限)
- 第二種低層住居専用地域:低層住宅を中心に小規模店舗も可能
- 第一種中高層住居専用地域:中高層住宅の良好な環境
- 第二種中高層住居専用地域:中高層住宅中心に事務所も可能
- 第一種住居地域:住宅環境と 3,000m² 以下の店舗・事務所
- 第二種住居地域:住宅環境と 10,000m² 以下の店舗
- 準住居地域:道路沿いの自動車関連施設と住宅
商業系用途地域は 2 種類あります。
- 近隣商業地域:近隣住民のための店舗・事務所
- 商業地域:商業・業務の利便性重視(都心・繁華街)
工業系用途地域は 3 種類あります。
- 準工業地域:軽工業と住宅の混在
- 工業地域:工業中心(住宅も可能)
- 工業専用地域:工業専用(住宅不可)
もう 1 種類が田園住居地域(2018 年 4 月新設)で、都市部の農地保全と住宅環境の両立を目的としています。
用途地域は都市計画法に基づき自治体が指定し、地域住民の生活環境と土地利用の秩序を守る仕組みです。物件を購入・借りる前に、対象地の用途地域を確認することが実務上の基本動作です。
💡 ポイント 用途地域の情報は、各自治体の都市計画課、または各自治体の Web サイト(都市計画情報 GIS)で確認できます。「〇〇市 用途地域図」で検索すると、大半の自治体が Web で公開しています。
建築基準法——建ぺい率・容積率・北側斜線・日影規制
建築基準法(1950 年制定)は、建物の建築に関する最低限の基準を定める法律です。国民の生命・健康・財産の保護を目的としています。
同法の中核は、以下の 4 つの数値制限です。
第 1 の建ぺい率は、建築面積 ÷ 敷地面積の割合で、建物が敷地に占める割合の上限です。用途地域ごとに 30 〜 80 % の範囲で指定されます。建ぺい率が高いほど、敷地に対して大きな建物を建てられます。
第 2 の容積率は、延べ床面積 ÷ 敷地面積の割合で、建物のボリュームの上限です。用途地域ごとに 50 〜 1,300 % の範囲で指定されます。容積率が高いほど、高層のビル・マンションを建てられます。都心の商業地域では 1,000 % 超もあり、地方の低層住宅地域では 50 〜 100 % 程度です。
第 3 の北側斜線制限は、北側隣地の日照を確保するため、建物の高さを北側から制限する規制です。第一種・第二種低層住居専用地域、第一種・第二種中高層住居専用地域で適用されます。
第 4 の日影規制は、住居系用途地域で、冬至日の日影が一定時間以上できないように建物の高さを制限する規制です。近隣の日照権を守るための規定です。
これら 4 つの数値制限は、同じ土地でも「建てられる建物の規模」を大きく左右します。物件の販売価格・投資判断は、この 4 数値の確認が必須です。
住宅品確法——1999 年制定、住宅品質の 3 本柱
住宅品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)は、1999 年 6 月に制定・2000 年 4 月に施行された、住宅の品質と紛争処理を規律する法律です。
同法の 3 本柱は以下の通りです。
第 1 の柱は、10 年瑕疵担保責任です。新築住宅の売主・請負人は、引き渡しから 10 年間、構造上主要な部分(基礎・壁・柱・屋根など)と、雨水の侵入を防止する部分(屋根・外壁・開口部など)の瑕疵(欠陥)について、無償修繕・損害賠償の責任を負います。この責任を確実に果たすため、住宅瑕疵担保履行法(2007 年制定、2009 年施行)により、新築住宅事業者は保険加入または供託が義務付けられました。
第 2 の柱は、住宅性能表示制度です。住宅の性能を 10 分野・32 事項で客観的に評価する制度で、耐震等級、断熱等級、劣化対策等級、維持管理対策等級、遮音等級などが表示されます。任意の制度ですが、性能表示付きの物件は住宅ローン優遇や地震保険割引の対象となり、購入者への訴求材料となっています。
第 3 の柱は、住宅紛争処理体制です。指定住宅紛争処理機関(各都道府県の弁護士会など)による、住宅トラブルの紛争処理(あっせん・調停・仲裁)を規定しています。
これら 3 本柱は、日本の住宅の品質を制度で担保する仕組みとして、業界に浸透しています。
改正建築物省エネ法——2025 年 4 月適合義務化
建築物省エネ法(正式名称:建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律)は、2015 年 7 月に成立・2016 年 4 月に施行された、建築物の省エネ性能を規律する法律です。2022 年 6 月の改正により、2025 年 4 月から新築住宅・非住宅すべてに省エネ基準適合が義務化されました。
この改正は、日本の建築物における省エネ対応を段階的に強化してきた集大成と位置づけられます。従来は 2,000m² 以上の非住宅のみが対象だった省エネ基準適合義務が、全新築建築物に拡大されました。
省エネ基準の中核は、以下 2 指標です。
- 外皮性能(外壁・屋根・窓の断熱性能、UA 値)
- 一次エネルギー消費量(照明・空調・給湯・換気の消費エネルギー、BEI 値)
これらの基準を満たさない建築物は、確認申請が下りず、着工できません。設計者・施工者・不動産販売業者はこの適合を前提とした設計・販売を求められます。
さらに、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス、住宅版)や ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル、非住宅版)といった省エネ基準を大きく上回る建築物への補助金制度、住宅ローン優遇(フラット 35 S 金利引下げなど)が整備されています。
BELS(Building-Housing Energy-efficiency Labeling System、建築物省エネルギー性能表示制度)は、建築物の省エネ性能を第三者評価する任意制度で、星 1 〜 5 つで性能を表示します。不動産販売時の性能訴求材料として、普及が進んでいます。
⚠️ 注意 改正建築物省エネ法の 2025 年 4 月適合義務化は、姉妹コース建設業のビジネス基礎でも扱われた論点です。建設会社側からは「施工の追加要件」(省エネ基準対応の断熱材・サッシ・設備の使用)ですが、不動産業側からは「販売・賃貸物件の性能表示・購入判断材料」として捉えられます。同じ制度でも立場によって見える論点が異なる例です。
そのほかの関連法規
不動産取引に関わる法律は多岐にわたります。以下、代表的なものを補足します。
農地法(1952 年)は、農地の売買・転用を規律する法律で、農地の売買には農業委員会の許可が必要です。都市部の農地転用は開発事業の入口ですが、農振法(1969 年)の「農業振興地域内農用地区域」に指定されていると転用は原則不可となります。
区分所有法(1962 年、正式名称:建物の区分所有等に関する法律)は、マンションなど区分所有物件の管理を規律する法律です。管理組合、管理規約、修繕積立金、大規模修繕、建替え決議などを定めています。
土地収用法(1951 年)は、道路・鉄道・公園などの公共事業のために土地を強制取得する仕組みを定めた法律です。公共の福祉のために必要な場合、都道府県知事の裁決により土地取得が可能となります。
これらは本コースの主要範囲外ですが、業界会議で耳にする機会も多い法律です。
まとめ
このレッスンでは、以下のことを学びました。
- 不動産登記法(現行法 2004 年 6 月全面改正)は登記制度で不動産の権利関係を公示
- 登記簿は表題部(物理的属性)・権利部甲区(所有権)・権利部乙区(所有権以外の権利)の 3 部構成
- 抵当権は特定の債権を担保、根抵当権は限度額内で複数債権を担保(司法書士の独占業務)
- 都市計画法(1968 年)の 3 区分は都市計画区域・市街化区域・市街化調整区域
- 13 用途地域(住居系 7 ・商業系 2 ・工業系 3 ・田園住居地域 1)が市街化区域内で指定
- 建築基準法(1950 年)の 4 数値制限は建ぺい率・容積率・北側斜線・日影規制
- 住宅品確法(1999 年)の 3 本柱は 10 年瑕疵担保・住宅性能表示制度・住宅紛争処理
- 改正建築物省エネ法は 2022 年 6 月改正・2025 年 4 月から新築全建築物に省エネ基準適合義務化
次のレッスンでは、不動産の価値を判断する仕組み——不動産鑑定評価と CAP レート・NOI 還元法・DCF 法——を扱います。REINS の実務も含めて、不動産の「値づけ」の論理を掘り下げていきます。
確認クイズ
このレッスンの理解度をチェックしましょう。