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スキルアップカレッジ

都市ガス/LP ガス/石油業界の構造

レッスン5:都市ガス/LP ガス/石油業界の構造

このレッスンで学ぶこと

  • 都市ガス 4 大手(東京ガス大阪ガス・東邦ガス・西部ガス)の構造とビジネスモデルを理解する
  • LP ガス市場約 2,000 万世帯の元売と全国 1.7 万販売店の構造を掴む
  • 石油元売 4 社(ENEOS ・出光・コスモ・キグナス)と SS 全国 2.8 万か所の構造を扱う
  • 石油備蓄制度(国家 90 日・民間 70 日)と SAF(持続可能航空燃料)を把握する

前回のレッスンでは、電力業のプレイヤー構造と電力取引の実務——旧一般電気事業者 10 社、新電力、JEPX、容量市場、需給調整市場——を扱いました。今回は、電力以外のエネルギー 3 領域——都市ガス、LP ガス、石油——の業界構造を扱います。

都市ガス 4 大手の構造

日本の都市ガス業界は、東京ガス、大阪ガス、東邦ガス、西部ガスの 4 大手と、全国約 200 の地方都市ガス事業者で構成されます。4 大手で市場シェアの約 8 割を占める寡占構造です。

東京ガス(TOKYO GAS)

東京ガスは 1885 年 10 月創業の日本最古の都市ガス事業者です。売上約 3.3 兆円(2024 年 3 月期)、需要家数約 1,200 万件、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県の 1 都 3 県を主要供給エリアとしています。日本のガス業界のリーディングカンパニーで、電力小売(東京ガス電気、2016 年 4 月開始)にも参入し、電力・ガスのセット販売で顧客獲得を進めています。

海外展開も積極的で、米国シェールガス上流開発、豪州 LNG プロジェクト(Ichthys、Gorgon)、欧州洋上風力、東南アジア発電事業などをグループで展開。GX 戦略として、e-methane(合成メタン)、水素・アンモニア混焼、CCUS プロジェクトを推進しています。

大阪ガス(Osaka Gas /Daigas グループ)

大阪ガスは 1897 年 4 月創業、売上約 2.1 兆円、需要家数約 750 万件、大阪府・京都府・兵庫県・奈良県・和歌山県・滋賀県・三重県の 2 府 5 県を主要供給エリアとしています。2018 年から Daigas グループの持株会社体制に移行しました。

海外展開は米国シェールガス、豪州 LNG(Gorgon、Ichthys)、東南アジア発電事業に注力。電力小売(大阪ガス電気)は関西エリアの主要新電力の 1 つとして展開しています。

東邦ガス(TOHO GAS)

東邦ガスは 1922 年 6 月創業、売上約 8,000 億円、需要家数約 300 万件、愛知県・岐阜県・三重県の中部地方を主要供給エリアとしています。中部地方のエネルギー会社として、中部電力と密接な関係を持ちます。

西部ガス(Saibu Gas)

西部ガスは 1930 年 12 月創業、売上約 3,000 億円、需要家数約 100 万件、福岡県・長崎県・熊本県・佐賀県・大分県の九州北部を主要供給エリアとしています。九州の都市ガス事業者の代表格です。

地方都市ガス事業者

4 大手以外の地方都市ガス事業者は約 200 社あり、大手需要家(工場・大規模商業施設)中心の事業運営を行っています。北海道ガス、静岡ガス、京葉ガス、広島ガス、中部電力ミライズ・エナジー(岐阜ガス)などが代表格です。

近年は都市ガス事業者間の統合再編が進み、大手電力(東京電力、関西電力)との協業も活発化しています。

LP ガス市場の構造

LP ガス(液化石油ガス、プロパン・ブタンが主成分)は、都市ガス導管網が届かない地域(郊外・地方・農村部)を主要市場としています。日本の LP ガス市場は約 2,000 万世帯(家庭用)+約 200 万事業所(業務用)で、市場規模は約 1.6 兆円です。

元売と商社

LP ガス元売は、輸入 LP ガスを日本国内で流通させる会社です。主要 4 社は以下です。

  • 岩谷産業:LP ガス業界最大手、水素事業も展開(水素ステーション国内最大手)
  • ジャパンガスエナジー:Cosmo Oil /ENEOS 傘下、業界 2 位
  • ENEOS グローブ:ENEOS ホールディングス傘下、業界 3 位
  • 伊藤忠エネクス:伊藤忠商事系、業界 4 位

これら元売が中東(サウジアラビア、UAE、カタール)から LP ガスを輸入し、国内約 1.7 万の LP ガス販売事業者に卸売します。

LP ガス販売事業者

LP ガス販売事業者は全国約 1.7 万社(経済産業省 液化石油ガス関係統計 2024 年)と非常に多く、多くは中小規模の地域密着型事業者です。近年は事業承継難による廃業・M&A が進行し、事業者数は減少傾向にあります(2010 年約 2.3 万社→ 2024 年約 1.7 万社)。

LP ガス料金の透明化

LP ガス料金は自由料金で、事業者ごとに料金設定が異なるため、消費者にとって料金比較が難しい問題があります。経済産業省は 2017 年から LP ガス料金の透明化・比較サイトの普及、Web での料金公表の推奨を進めており、2024 年 4 月から取引適正化ガイドラインが改正され、料金公表の実質義務化と、賃貸物件での「三部料金制」(基本料金・従量料金・設備費)の明確化が求められるようになりました。

石油業界の構造

日本の石油業界は、上流(探鉱・開発)・中流(精製)・下流(小売)の 3 段階で構成されます。

上流——石油開発会社

日本の上流事業を担う主要企業は以下です。

  • INPEX(旧・国際石油開発帝石):日本最大の石油・天然ガス開発会社、豪州 Ichthys LNG プロジェクトが主力
  • JX 石油開発:ENEOS ホールディングス傘下、中東・アジアで開発事業
  • 出光興産上流部門:ノルウェー Snorre 油田、豪州 Prelude LNG など
  • 石油資源開発(JAPEX):新潟・秋田の国内資源開発から海外展開へ

日本の原油自給率は約 0.4 %(2023 年時点、資源エネルギー庁)と極めて低く、輸入依存度は 99 % 超です。主要輸入先はサウジアラビア約 40 %、UAE 約 40 %、カタール、クウェート、ロシア(現在は輸入停止方向)で、中東依存度が高いのが特徴です。

中流——製油所

日本の製油所は 2024 年 3 月時点で 21 か所(原油処理能力合計約 340 万バレル / 日)稼働しています。1988 年のピーク時(29 か所・約 570 万バレル / 日)から大幅に減少しており、需要減少(自動車の EV 化、ハイブリッド化、少子高齢化による燃料油需要減)を受けた設備集約が進んでいます。

主要製油所は、ENEOS ホールディングスの根岸(横浜)・水島(岡山)・大阪など 6 か所、出光興産の千葉・北海道・愛知など 4 か所、コスモエネルギーの千葉・堺・四日市 3 か所です。

下流——石油元売 4 社と SS

石油元売 4 社は以下です。

  • ENEOS ホールディングス:2020 年 6 月に旧・JX ホールディングスと旧・東燃ゼネラル石油(旧エクソンモービル日本法人)が統合、業界最大手。売上約 15 兆円(2024 年 3 月期)、SS ブランドは ENEOS /JOMO /ESSO /モービル
  • 出光興産:2019 年 4 月に旧・出光興産と旧・昭和シェル石油が経営統合、業界 2 位。売上約 8.7 兆円、SS ブランドは出光/apollostation /Shell
  • コスモエネルギーホールディングス:業界 3 位、売上約 3.3 兆円、SS ブランドはコスモ石油
  • キグナス石油:業界 4 位(従来は太陽石油と 2 社体制だったが、2021 年 4 月に太陽石油は自社ブランド廃止・キグナス系列化)、SS ブランドはキグナス

これら元売は 2010 年代に統合再編が急速に進み、5 社体制(2010 年 JX /出光/コスモ/昭和シェル/東燃ゼネラル)→ 3 社体制(ENEOS /出光昭和シェル/コスモ)+キグナスの構造に集約されました。

SS(サービスステーション)の減少

日本の SS 数は 2014 年約 3.6 万か所→ 2024 年約 2.8 万か所と、10 年で約 22 % 減少しました(資源エネルギー庁 揮発油販売業者数 統計)。減少要因は、燃料油需要の長期減少(EV 化、ハイブリッド化、公共交通移行、若者の車離れ)、SS 経営者の後継者難、地下タンクの改修費用負担、コンビニ併設 SS の増加による淘汰などです。

SS 過疎地」(自治体域内 SS が 3 か所以下)は 2024 年時点で全国 350 自治体超に達し、地方の給油困難が社会課題化しています。政府は SS 過疎地対策として、電動化 SS 、簡易 SS 、共同事業化などの支援策を進めています。

コンビニ併設 SS と多角化

近年の SS 経営は、燃料油販売だけでは利益が出にくく、コンビニ併設、車検、洗車、レンタカー、EV 充電、水素充填、太陽光パネル販売、電力小売代理店など多角化が進行しています。ENEOS ホールディングスは「地域のエネルギーステーション」というブランディングで SS の総合機能化を推進しています。

石油備蓄制度

日本の石油備蓄制度は 1974 年の第 1 次オイルショックの教訓から構築された、緊急時の石油供給を確保する制度です。石油の備蓄の確保等に関する法律(1975 年制定)に基づき、以下の 3 種類の備蓄を組み合わせて運営されています。

国家備蓄(90 日分)

国家備蓄は、日本政府が保有する備蓄で、国家石油備蓄基地(全国 10 か所:北海道苫小牧東部、青森みちのく、秋田、新潟、福井、鹿児島、串木野、上五島、白島、久慈)に約 90 日分の原油・製品を保管しています。運営は JOGMEC(独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構)が担っています。

民間備蓄(70 日分)

民間備蓄は、石油元売・輸入業者が法定義務として保有する備蓄で、輸入量の 70 日分に相当する原油・製品を各社の製油所・貯蔵所に保管しています。

産油国共同備蓄

産油国共同備蓄は、サウジアラビア(Saudi Aramco)と UAE(ADNOC)が日本の原油を日本国内の民間貯蔵所に保管し、緊急時に日本向けに優先供給する仕組みです。両国合計で約 40 日分に相当します。

これら 3 備蓄の合計は約 200 日分に達し、世界最高水準の備蓄水準となっています。

SAF(持続可能航空燃料)

SAF(Sustainable Aviation Fuel、持続可能航空燃料)は、廃食用油、廃棄物、藻類、CO₂ 由来などから製造される航空燃料で、既存ジェット燃料と混合して使用可能です。CORSIA(国際民間航空機関 ICAO の航空 CO₂ 削減スキーム、2021 年開始)と各国の脱炭素政策で導入が進んでいます。

日本は SAF 導入目標として、2030 年に国内航空燃料の 10 % を SAF に置き換える方針を掲げています。国内の SAF 製造能力は 2024 年時点でごく限定的ですが、ENEOS ホールディングス、出光興産、コスモエネルギー、日揮 HD、ユーグレナが商用化プロジェクトを推進しています。

📝 補足 SAF は既存の航空燃料インフラをそのまま使えるドロップイン燃料で、航空業界の脱炭素化の中核技術と位置付けられています。欧州は 2025 年から SAF 混合義務化(2 %)を開始しており、日本も 2030 年以降の混合義務化を検討中です。

まとめ

このレッスンでは、以下のことを学びました。

  • 都市ガス 4 大手:東京ガス 1885 年創業約 3.3 兆円 1,200 万件/大阪ガス 1897 年約 2.1 兆円 750 万件/東邦ガス 1922 年約 8,000 億円 300 万件/西部ガス 1930 年約 3,000 億円 100 万件・全国約 200 の地方都市ガス事業者
  • LP ガス市場約 1.6 兆円・約 2,000 万世帯、元売 4 社(岩谷産業/ジャパンガスエナジー/ENEOS グローブ/伊藤忠エネクス)、全国約 1.7 万販売店(減少中)、2024 年 4 月取引適正化ガイドライン改正で三部料金制明確化
  • 石油元売 4 社:ENEOS ホールディングス 2020 年統合約 15 兆円/出光興産+昭和シェル 2019 年統合約 8.7 兆円/コスモエネルギー約 3.3 兆円/キグナス石油
  • 製油所は 2024 年 3 月時点 21 か所(1988 年ピーク 29 か所から集約)、原油処理能力約 340 万バレル / 日
  • SS は 2014 年 3.6 万→ 2024 年 2.8 万か所(10 年で 22 % 減)、SS 過疎地 350 自治体超が社会課題化
  • 石油備蓄は国家 90 日+民間 70 日+産油国共同備蓄(サウジ・UAE 合計約 40 日)=合計約 200 日分で世界最高水準
  • SAF は 2030 年に国内航空燃料の 10 % を目標、ENEOS ・出光・コスモ・日揮・ユーグレナが商用化推進

次のレッスンでは、再エネ特別措置法FITFIP)、太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスの 5 電源、洋上風力ラウンド、発電コスト検証を扱います。


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