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スキルアップカレッジ

旧一般電気事業者 10 社・新電力・JEPX /容量市場/需給調整市場

レッスン4:旧一般電気事業者 10 社・新電力・JEPX /容量市場/需給調整市場

このレッスンで学ぶこと

  • 旧一般電気事業者 10 社(東京電力 HD /関西電力ほか)の構造と発送電分離後の姿を理解する
  • 新電力(PPS /小売電気事業者 700 社超)の勢力図と経営動向を掴む
  • JEPX 卸電力取引所(2003 年設立)のスポット市場・時間前市場・先渡市場を扱う
  • 容量市場(2020 年制度化・2024 年 4 月本格運用)・需給調整市場(2021 年 4 月開始)を把握する

前回のレッスンでは、電気事業法・ガス事業法・原子炉等規制法の 4 法体系と、自由化 3 施策(電力自由化 2016 年 4 月・発送電分離 2020 年 4 月・ガス自由化 2017 年 4 月)を扱いました。今回は、電力業のプレイヤー構造と電力取引の実務——旧一般電気事業者 10 社、新電力、JEPX 卸電力取引所、容量市場、需給調整市場——を扱います。

旧一般電気事業者 10 社の勢力図

旧一般電気事業者は、1951 年 5 月に電気事業再編成法で誕生した地域独占型電力会社 9 社(1972 年に沖縄電力が加わり 10 社体制)です。エリア別に電力供給を独占する体制でしたが、電力自由化と発送電分離を経て、現在は競争環境下で運営されています。

10 社の 2024 年 3 月期売上と発電シェアは以下です。

  • 東京電力ホールディングス:売上約 7.8 兆円、東京都・関東 8 県のエリア、日本最大の需要規模
  • 関西電力:売上約 4.4 兆円、大阪府・関西 6 府県のエリア、原子力比率が高い(美浜・大飯・高浜の 3 発電所計 7 基のうち複数基が再稼働)
  • 中部電力:売上約 4 兆円、愛知県・中部 5 県のエリア、Jera(東京電力と合弁の火力発電会社)の株主
  • 東北電力:売上約 2.7 兆円、東北 6 県+新潟県のエリア、女川原発 2 号機が 2024 年 10 月再稼働
  • 九州電力:売上約 2.3 兆円、九州 8 県のエリア、玄海・川内の原発 4 基が再稼働
  • 中国電力:売上約 1.7 兆円、中国 5 県のエリア、島根原発 2 号機が 2024 年 12 月再稼働
  • 四国電力:売上約 8,000 億円、四国 4 県のエリア、伊方原発 3 号機が再稼働
  • 北陸電力:売上約 8,000 億円、富山県・石川県・福井県のエリア、志賀原発が停止中
  • 北海道電力:売上約 9,000 億円、北海道のエリア、泊原発が停止中、風力・太陽光の適地
  • 沖縄電力:売上約 2,000 億円、沖縄県のエリア、本土との連系なし、独立系統

これら 10 社は、発送電分離 2020 年 4 月を受けて、発電事業と送配電事業を別会社化しています。発送電分離後の主要子会社は前レッスンで扱った通りです。

Jera——東京電力と中部電力の火力発電合弁

Jera は 2015 年 4 月に東京電力ホールディングスと中部電力の折半出資で設立された、日本最大の火力発電会社です。両社の火力発電資産を統合し、LNG 調達・火力発電運用・電力トレーディングを一体化しました。売上約 6 兆円で、単独では旧一般電気事業者を上回る規模を持ちます。近年は洋上風力・アンモニア混焼・水素発電などの脱炭素事業も展開しています。

電源開発(J-POWER)と日本原子力発電

電源開発株式会社(J-POWER)は 1952 年設立、旧・電源開発促進法に基づく特殊会社として大規模水力・火力・石炭火力を全国で運営してきました。2004 年民営化・東証プライム上場、大間原発の建設中断・大間開発の政治動向が経営の焦点です。日本原子力発電(略称:原電)は 1957 年設立、日本最初の商用原発(東海原発)を運営した会社で、東海第二原発の再稼働が焦点です。

新電力(PPS /小売電気事業者)の勢力図

新電力(PPS 、Power Producer and Supplier /小売電気事業者)は、電力自由化以降に電力小売市場に新規参入した事業者です。2024 年時点で登録数は約 700 社に達しています(資源エネルギー庁 小売電気事業者一覧)。

新電力の主要な系統は以下に分けられます。

第 1 は総合エネルギー系新電力。石油元売や都市ガス大手が電力小売に参入したケースです。ENEOS でんき(ENEOS ホールディングス)、東京ガス電気(東京ガス)、大阪ガス電気(大阪ガス)、東邦ガス電気(東邦ガス)などが該当します。ガス・電力のセット販売による顧客獲得が特徴です。

第 2 は通信系新電力。通信キャリアが電力小売に参入したケースです。ソフトバンクでんき(SB パワー、ソフトバンクグループ)、auでんき(KDDI)、ドコモでんき(NTT ドコモ)などが該当します。通信・電力のセット販売、ポイント連携が特徴です。

第 3 はネット系新電力。EC ・IT 系企業の参入です。楽天でんき(楽天エナジー、楽天グループ)、Looop でんき(Looop)などが該当します。楽天ポイント連携、シンプルな料金体系(基本料金 0 円プラン)が特徴です。

第 4 は電源保有型新電力。自社で発電所を持ち、電源から小売まで垂直統合するケースです。エネット(NTT ファシリティーズ・大阪ガス・NTT アノードエナジー)、F-Power(発電事業も併営)などが該当します。

第 5 は自治体系新電力。地方自治体と地域企業が出資する新電力です。みやまスマートエネルギー(福岡県みやま市 2015 年 3 月設立、自治体新電力の先駆)、こなんウルトラパワー(滋賀県湖南市)、いこま市民パワー(奈良県生駒市)など全国 80 超が設立されています。

新電力の 2021 〜 2022 年苦境

新電力は 2021 年冬季と 2022 年ロシア・ウクライナ以降の卸電力価格高騰で経営苦境に陥りました。JEPX スポット価格が 2021 年 1 月に 200 円 / kWh 超(通常 5-15 円 / kWh)に高騰し、市場調達に依存していた新電力の多くが赤字化。2022 〜 2024 年で 30 社超が撤退・倒産しています(大手 F-Power が民事再生 2022 年 3 月、ホープが会社更生 2022 年 3 月、ウエスト電力が撤退など)。

一方、自社電源保有型・大手グループ傘下の新電力は財務基盤の強みで生き残り、市場再編後の主要プレイヤーとして残っています。

JEPX 卸電力取引所

JEPX(日本卸電力取引所、Japan Electric Power Exchange)は 2003 年 11 月に設立された、日本の卸電力取引の中核となる取引所です。会員制の一般社団法人として運営されています。

JEPX が運営する市場は以下の 4 つがあります。

スポット市場

スポット市場は、翌日に受け渡す電力(実需要日)を前日に取引する市場です。1 日を 48 コマ(30 分単位)に分けて取引され、毎日午前 10 時に翌日分の入札が締め切られ、シングルプライスオークションで約定価格が決定します。日本の電力取引の 80 % 以上がスポット市場を経由しており、電力業界の中核市場です。

スポット価格は電力業界の指標価格で、平常時 5-15 円 / kWh、需給ひっ迫時 20-50 円 / kWh、極端な高騰時 100-200 円 / kWh 超の変動が観測されています。2021 年 1 月には最高 251 円 / kWh を記録しました。

時間前市場

時間前市場は、実需要の 1 時間前まで取引可能な市場です。天候変化による再エネ発電量の変動、需要予測のズレなどをカバーするために使われます。スポット市場より流動性は低いですが、当日の需給調整に不可欠です。

先渡市場

先渡市場は、1 週間先・1 か月先・1 四半期先の電力を取引する市場です。長期の需給計画・リスクヘッジに使われます。日本の先渡市場は流動性が低く、海外の電力先物市場(EEX 欧州エネルギー取引所、TOCOM 東京商品取引所)が主要な先物取引の場となっています。

非化石価値取引市場

非化石価値取引市場は 2018 年 5 月に開始された、非化石電源(再エネ・原子力)の環境価値(非化石証書)を売買する市場です。FIT 非化石証書、非 FIT 再エネ指定なし非化石証書、非 FIT 再エネ指定あり非化石証書の 3 種類が取引されます。RE100 対応・環境価値表示・GX 対応に使われます。

💡 ポイント JEPX スポット価格は「電力業界の日々の温度計」です。需給ひっ迫、燃料価格変動、再エネ発電量、送電線混雑などが全て価格に反映されます。エネルギー業に関わる方は毎日 JEPX スポット価格をチェックする習慣を身につけると、業界動向の理解が飛躍的に深まります。

容量市場——将来の供給力を確保する仕組み

容量市場は、電力供給力(発電容量 kW)を将来にわたって確保するための市場です。2020 年に制度化され、2024 年 4 月から本格運用が開始されました。

容量市場の背景は、スポット市場(kWh 市場)だけでは発電所の投資回収が困難になり、老朽火力の廃止・新設投資の停滞が懸念されたためです。特に再エネ拡大で火力発電の稼働率が下がり、容量価値(発電できる能力)と電力量価値(実際に発電した電力量)を分離して市場化する必要が生じました。

容量市場の仕組み

容量市場は「メインオークション」と「調達オークション」の 2 段階で運営されます。

メインオークションは実需給の 4 年前に開催される市場で、発電事業者が「4 年後の一定期間、○○ kW の発電容量を提供する」と入札し、需要側(一般送配電事業者)が需要曲線に基づいて落札します。約定した発電事業者は、実需給の 4 年後に該当期間の容量を提供する義務を負い、対価として容量拠出金を受け取ります。

調達オークションは実需給の 1 年前に開催される調整市場で、需給変動に応じて追加調達・売却を行います。

2024 年度容量拠出金の全国平均約定価格は約 3,000 円 / kW / 年で、大型火力発電所(100 万 kW クラス)は年間約 30 億円の追加収入を得られる計算になります。

容量市場の論点

容量市場は電力業界の中で賛否両論のある制度です。賛成派は「安定供給に不可欠な発電容量を確保する仕組み」と評価する一方、反対派は「電気料金の上乗せで消費者負担が増える」「石炭火力など維持しなくてよい電源にも収入源を与える」と批判しています。実際、容量拠出金は最終的に電気料金に反映されており、家庭の電気料金 kWh あたり 0.5 〜 1 円程度の上乗せになっていると試算されます。

需給調整市場——リアルタイムの需給バランス調整

需給調整市場は 2021 年 4 月に開始された、リアルタイムの需給バランス調整力(アジャストメント)を取引する市場です。電力は需要と供給を常に一致させる必要があり(周波数維持のため)、その調整に必要な予備力を市場化しました。

需給調整市場では以下の 5 種類の調整力が取引されます。

  • 一次調整力(応動時間 10 秒以内、周波数維持)
  • 二次調整力①(応動時間 5 分以内、需給ミスマッチの解消)
  • 二次調整力②(応動時間 5 分以内、より長時間の需給バランス)
  • 三次調整力①(応動時間 15 分以内、翌日の需給予測ずれ対応)
  • 三次調整力②(応動時間 45 分以内、翌日の需給予測ずれ対応)

商品ごとに調達区分が細分化され、複数の応動時間帯で市場が段階的に構築されました。2024 年度時点で 3 段階のうち完全稼働は三次調整力のみで、一次・二次調整力の完全開始は 2024 〜 2026 年にかけて段階実施されています。

電力先物市場と海外連携

日本の電力先物市場は、TOCOM(東京商品取引所、2019 年 9 月開始)と EEX(欧州エネルギー取引所、2020 年 5 月日本電力先物開始)で取引されています。ただし日本国内の流動性は低く、大手電力・大手商社・トレーディング会社の一部がリスクヘッジ目的で利用する程度に留まっています。

海外の電力市場との連携としては、日本は電力の物理的な海外連系(送電線)を持たない「電気の島国」です。韓国・ロシアとの海底送電線構想(アジアスーパーグリッド、ソフトバンクグループ孫正義氏が 2011 年提唱)はありますが、実現には至っていません。

⚠️ 注意 電力の物理的な海外連系がないことは、日本のエネルギー安全保障の脆弱性でもあり、独立性でもあります。欧州は各国が送電線で連系し、需給を融通し合っていますが、日本は独立系統として自国内で全て完結する構造です。

まとめ

このレッスンでは、以下のことを学びました。

  • 旧一般電気事業者 10 社は 1951 年 5 月電気事業再編成法で誕生(沖縄は 1972 年)、エリア別の地域独占構造、発送電分離後は持株会社構造
  • 新電力(PPS /小売電気事業者)は 2024 年で約 700 社登録、総合エネルギー系/通信系/ネット系/電源保有型/自治体系の 5 系統
  • 新電力は 2021 〜 2022 年の卸電力価格高騰で 30 社超が撤退・倒産、市場再編が進行
  • JEPX は 2003 年 11 月設立、スポット市場(電力取引の中核、80 % 以上)・時間前市場・先渡市場・非化石価値取引市場の 4 市場運営
  • JEPX スポット価格は電力業界の指標で、平常時 5-15 円 / kWh、極端な高騰時 100-200 円 / kWh 超(2021 年 1 月に 251 円 / kWh 記録)
  • 容量市場は 2020 年制度化・2024 年 4 月本格運用、メインオークション(4 年前)+調達オークション(1 年前)、2024 年度全国平均約 3,000 円 / kW / 年
  • 需給調整市場は 2021 年 4 月開始、5 種類の調整力(一次〜三次)を取引、2024-2026 年で段階完成
  • 日本は電力の物理的な海外連系を持たない「電気の島国」、独立系統として完結

次のレッスンでは、都市ガス 4 大手(東京ガス・大阪ガス・東邦ガス・西部ガス)、LP ガス業界、石油元売 4 社(ENEOS ・出光・コスモ・キグナス)、SS 動向、石油備蓄制度、SAF(持続可能航空燃料)を扱います。


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