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スキルアップカレッジ

業務での生成 AI の 3 つの使い方——リライト・拡張・参照

レッスン2:業務での生成 AI の 3 つの使い方——リライト・拡張参照

このレッスンで学ぶこと

  • 業務での生成 AI の使い方を「リライト・拡張・参照」の 3 つに分解できる
  • 3 つの使い分けの基準を持つ
  • 「全部 AI で書く」と「AI を一切使わない」の中間に位置する組み込み方を理解する
  • 業務フローへの組み込み方の発想を持つ
  • 「リライト・拡張・参照」を組み合わせて使う発想を整理する

前のレッスンでは、本コースの位置づけと知識労働者の業務階層を整理しました。今回のレッスンでは、業務での生成 AI の使い方を 3 つの基本パターンに分解する発想を扱います。「プロンプトの書き方」を細かく学ぶのではなく、「自分の業務のどこに、どの使い方を当てるか」を考える基本軸を作ります。

3 つの使い方

業務での生成 AI の使い方は、大きく 3 つに分解できます。

flowchart LR
  A[業務素材] --> B[リライト<br/>書いたものを直す]
  C[骨組み] --> D[拡張<br/>書きかけを膨らませる]
  E[疑問] --> F[参照<br/>質問して教えてもらう]
使い方 入力 AI が行うこと 出力
リライト(rewrite) 自分が書いた文章 改善・校正・要約・スタイル変換 直された文章
拡張(extend) 骨組み・キーワード・指示 膨らませる・ドラフト生成 形になった文章
参照(reference) 質問 知識の提供・整理 回答・要約

3 つは独立した行為ですが、実際の業務では組み合わせて使うのが普通です。例えば、

  1. 参照で「業界の最新トレンドを教えて」と質問
  2. その情報を踏まえて、自分で骨組みを作る
  3. 拡張で骨組みからドラフトを生成
  4. ドラフトを自分で編集
  5. リライトで「もっと簡潔に」と指示して微調整

このような連鎖が、業務での AI 利用の典型的な姿です。

💡 ポイント 「プロンプトの書き方」を学ぶ前に、「自分が今やろうとしているのは、リライトか拡張か参照か」を意識すると、使い方が安定します。3 つを混ぜずに、ひとつずつ目的を明確にするのがコツです。

リライト——書いたものを直す

リライトは、すでに自分が書いた文章を AI に直してもらう使い方です。

典型的なリライトの場面

  • 自分が書いた長いメールを「もっと簡潔に」と直してもらう
  • 報告書のドラフトを「敬語のレベルを上げて」と直してもらう
  • 議事録を「3 段落にまとめ直して」と要約してもらう
  • 英文を日本語にローカライズしてもらう
  • 同じ内容を「役員向け」「現場向け」「顧客向け」に書き分けてもらう

リライトの強み

  • すでに自分が書いた素材があるため、AI に「自分が何を伝えたいか」が正確に伝わる
  • 出力の品質が安定する(AI が文章をゼロから創造する必要がないため)
  • ハルシネーション(事実誤認)のリスクが小さい
  • 自分のスタイルや声を保ちやすい

リライトの注意点

  • 自分が書いた文章を完全に上書きすると、自分の文体が薄まる
  • AI が「丁寧すぎる文体」「角の取れた言い回し」に統一しがちな傾向
  • 「自分の文章として恥ずかしくないか」を最終的に自分で判断する必要がある

📝 補足 リライトは、AI の使い方として最もリスクが小さく、最も即効性のある入口です。慣れていない方は、まず「自分のメールを AI にリライトしてもらう」ところから始めるのがおすすめです。

拡張——書きかけを膨らませる

拡張は、骨組み・キーワード・指示を AI に渡して、形になった文章を生成してもらう使い方です。

典型的な拡張の場面

  • 「次の 3 つのポイントで提案メモを書いて」とキーワードを渡してドラフトを生成
  • 議題リストから議事録の構成案を生成
  • 製品の特徴 5 つから営業トークの 3 パターンを生成
  • 課題と背景を書いて、「考えられる解決案を 5 つ挙げて」と幅出しを依頼
  • 簡単なメモから、決裁文書のドラフトを生成

拡張の強み

  • ゼロから書くより時間が大幅に短縮される
  • 「何を書けばいいかわからない」状態を脱出する糸口になる
  • 複数のバリエーション(5 通りの案など)を一度に得られる
  • 自分の思考だけでは出てこない発想が混ざる

拡張の注意点

  • AI が「もっともらしいが内容が空虚」な文章を生成しがち
  • 自分が指示した骨組みより、AI が勝手に拡張した部分が大きくなりすぎる
  • ハルシネーション(事実誤認)のリスクが大きい
  • 「拡張されたドラフト」を自分の言葉として通す前に、必ず内容を吟味する必要がある

拡張で気をつけること

拡張は強力ですが、「ドラフトを自分の言葉として責任を持つ」ことを忘れがちな使い方です。社内文書や顧客向け文書を拡張で作るときは、

  • 事実情報(数値・固有名詞・日付・引用)は必ず確認する
  • 自分の意見と AI の生成を分けて意識する
  • 重要度の高い文書は、骨組みを丁寧に作って AI 任せの割合を下げる

を意識しましょう。

⚠️ 注意 「AI が書いたので私は責任を持ちません」は通用しません。社内文書も顧客向け文書も、出した時点でその文書の主体は自分です。拡張を使うときほど、自分で内容を吟味する責任が増えると考えてください。

参照——質問して教えてもらう

参照は、自分が知りたいこと・調べたいことを AI に質問する使い方です。

典型的な参照の場面

  • 「この業界の最新トレンドを教えて」と質問
  • 「この用語の意味と背景を教えて」と質問
  • 「この製品のメリットとデメリットを比較して」と質問
  • 自分の状況を説明して「どんな選択肢があるか」と相談
  • 法律・規則の概要を確認する

参照の強み

  • 自分の知識の幅を超えた情報にすばやくアクセスできる
  • 検索エンジンより会話的で、深掘りの質問が続けやすい
  • 自分が知らない関連概念を教えてもらえる
  • 業務の前提を整える「最初の入口」として効率的

参照の注意点

  • ハルシネーションのリスクが最大(AI が知らないことを「もっともらしく」答えることがある)
  • 学習データのカットオフ以降の情報は不正確になりがち(モデルによる)
  • 業界・地域・組織に特有の情報は誤情報が混ざりやすい
  • 法律・税務・医療・契約など、判断を伴う領域は AI だけで完結させない

参照で気をつけること

参照は最も「事実誤認」のリスクが高い使い方です。

  • 重要な情報は必ず原典(公式サイト・公的資料・専門書)で確認する
  • 「AI が言っているから正しい」と判断停止しない
  • 数値・固有名詞・日付・引用は特に慎重に
  • 検索連携機能(Web 検索)を持つモードを使うと、原典をたどりやすい
  • 専門家の判断が必要な領域(法律・税務・医療)は、必ず専門家に確認する

📝 補足 2026 年 6 月時点では、ChatGPT・Claude・Gemini のいずれも Web 検索連携機能を備えており、引用元の URL を提示しながら回答できます。参照を使うときは、こうした機能を活用して、原典を確認しやすい状態で使うのが現代の標準です。

3 つの使い方の組み合わせ

実際の業務では、3 つを組み合わせて使うのが普通です。レッスン冒頭の例をもう一度見てみましょう。

ステップ 使い方 内容
1 参照 「業界の最新トレンドを教えて」と質問
2 (自分で骨組み作成) 取材を踏まえて、提案メモの骨組みを書く
3 拡張 骨組みからドラフトを生成してもらう
4 (自分で編集) ドラフトを自分の文体・主張に合わせて編集
5 リライト 「もっと簡潔に」と指示して微調整

この流れの中で、自分の判断と AI の生成が交互に登場します。「全部 AI で書く」でも「全部自分で書く」でもなく、両者の中間で交互に手を動かすのが、業務での AI 利用の典型的な姿です。

「中間」で考える

  • 全部 AI で書く:ハルシネーションのリスクが大きく、自分の文体が消える
  • 全部自分で書く:時間がかかり、AI の利点(幅出し・効率化)を得られない
  • 中間(AI と自分が交互に手を入れる):効率と品質と自分の声のバランスが取れる

「中間」の発想は、本コースを通じて何度も登場します。

業務フローへの組み込み方

3 つの使い方を覚えても、業務フローに組み込まなければ「使わないまま」で終わります。組み込み方の基本ステップを示します。

ステップ 1:業務を分解する

自分の典型的な業務(例:1 日の作業)を、レッスン 1 で学んだ 4 階層(型作業・調査・思考・関係)に分解します。

ステップ 2:3 つの使い方をマッピングする

各業務に「リライト・拡張・参照」のどれが使えそうかをマッピングします。

業務 使い方
メール作成(社内向け) リライト(書いてから直す)
議事録 拡張(録音・メモから整形)
業界トレンド調査 参照(質問する)
報告書ドラフト 拡張(骨組みから生成)
顧客説明資料の英訳 リライト(既存資料を直す)
経費精算 (AI 不要)

ステップ 3:小さく試す

「明日からこの 1 つだけ」と決めて、小さく試します。すべての業務に一気に AI を組み込もうとすると、定着しません。

ステップ 4:定着したものを増やす

うまく定着したものを起点に、徐々に範囲を広げます。失敗した使い方は、別の使い方に切り替えるか、いったん中止して別の業務で試します。

💡 ポイント 「すべての業務で AI を活用する」を最初の目標にすると、ほぼ間違いなく挫折します。「自分の業務の 1〜2 つに、AI が定着する」を最初の目標に設定しましょう。

講師の現場メモ:「メール 1 通から始まった社内浸透」

私(吉村)が独立後に支援している中堅小売業の話です。社員 300 人、創業 35 年。経営者は AI 導入に意欲的で、研修も導入していましたが、「使う社員が増えない」と相談を受けました。

私が現場の課長(経理担当)にヒアリングすると、「AI で何を書けばいいかわからない」「自分の業務と結びつかない」と困った顔をしました。

私はホワイトボードに 3 つ書きました。「リライト」「拡張」「参照」。

「課長さん、まず 1 つだけ試してみませんか。明日から、社内向けメールを送る前に、自分の書いたものを Claude に貼り付けて『もっと簡潔に』と指示してください。それだけです」

3 日後、課長から「メールが半分の長さになった。読み手から『今日のメールわかりやすかった』と言われた」と報告がありました。

その課長が、課のミーティングで「メールを AI でリライトすると楽になる」と話した結果、課のほかの社員 6 人も同じ使い方を始めました。1 か月後、6 人の中で 2 人が「議事録の整形を AI に任せる」(拡張)を始め、3 人が「業界の情報整理を AI に質問する」(参照)を始めました。

経営者から「全社的に AI を広めるにはどうすればよいか」と再度相談を受けたとき、私は「全社的に広める前に、各部署で 1 人ずつ『自分のメールをリライトする』から始めましょう」と提案しました。半年後、月 1 回以上 AI を使う社員は 30 人から 180 人に増えていました。

このときに痛感したのは、「全社一斉導入」よりも「1 人 1 つの仕事に AI を組み込む」のほうが定着する、ということです。本コースが 3 つの使い方をシンプルに整理するのは、「明日から自分の 1 つの業務で試せる」状態にしたいからです。

まとめ

このレッスンでは、以下のことを学びました。

  • 業務での生成 AI の使い方は「リライト・拡張・参照」の 3 つに大別できる
  • リライト:自分が書いた文章を直してもらう。リスクが小さく、即効性のある入口
  • 拡張:骨組みやキーワードから形になった文章を生成してもらう。強力だがハルシネーションのリスクが大きい
  • 参照:質問して教えてもらう。便利だが事実誤認のリスクが最大。原典確認が必須
  • 3 つは独立した行為だが、実際の業務では組み合わせて使う
  • 「全部 AI で書く」「全部自分で書く」ではなく「中間で交互に手を動かす」のが現実的な姿
  • 業務フローへの組み込みは「分解→マッピング→小さく試す→定着したものを広げる」のステップで

次のレッスンでは、文書作成の仕事術(メール・報告書・企画書・議事録)に AI を組み込む発想を扱います。


確認クイズ

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