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スキルアップカレッジ

部門別損益と予算実績管理

レッスン6:部門別損益予算実績管理

このレッスンで学ぶこと

  • 部門別損益を作る目的と、責任会計の原則を語れる
  • 部門コード設計の 4 つの軸を判断できる
  • 共通費配賦の 3 基準(人員数・売上高・面積)を使い分けられる
  • 月次予実レビューの型と、差異分析数量差単価差・時間差)を扱える
  • 部門別損益を経営会議へ上げるときの構成を組める

前レッスンまでで、月次決算の全社レベルの数字ができました。本レッスンでは、その数字を「事業部単位・拠点単位」に切り分けて、責任者ごとの意思決定に使える形にする実務を扱います。

なぜ部門別損益を作るのか

全社の売上・営業利益だけを追いかけていても、経営はどこを伸ばし、どこを見直せばよいか判断できません。事業ごと・拠点ごとに損益を切り出すことで、はじめて「事業 A は好調、事業 B は苦戦、事業 C は撤退検討」といった意思決定が可能になります。

責任会計の原則

部門別損益の設計原則は「責任と権限が対応する数字だけを、その責任者の評価対象にする」ことです。例えば、事業部長が自分でコントロールできない全社共通費(本社人件費・システム費用など)を事業部長の営業利益に配賦してしまうと、努力とは無関係に赤字に見えることがあり、責任者のモチベーションが下がります。

flowchart TB
  A[部門別損益設計の原則] --> B[責任と権限が対応]
  A --> C[コントロール可能な費用のみ配賦]
  A --> D[数字と行動が結びつく]
  B --> E[事業部長の判断で動く数字を集約]

部門コード設計の 4 つの軸

会計ソフトの「部門」機能は多くの企業で使われますが、部門コードの設計を誤ると後戻りが大変になります。設計時の 4 つの軸を整理します。

軸 1:組織階層

会社の組織図に沿って部門コードを設計する方式。事業部 → 部 → 課 → 係のように階層構造を持たせ、集計単位を柔軟に変えられるようにします。

  • 10000:営業本部
    • 11000:東日本営業部
      • 11100:東京営業課
      • 11200:仙台営業課
    • 12000:西日本営業部
  • 20000:開発本部
  • 30000:管理本部

軸 2:事業セグメント

有価証券報告書のセグメント情報や、社内での事業単位で分ける方式。組織階層と交錯することが多く、事業横断のマトリクス構造が必要になる場合もあります。

軸 3:拠点

本社・支店・工場・営業所などの拠点単位で分ける方式。複数拠点で同じ事業を展開する場合、拠点別の収益性を追える利点があります。

軸 4:プロジェクト

大型案件・受注案件を単位に分ける方式。建設業・システム開発業などで多用され、案件終了時に赤字か黒字かを検証できます。

4 軸の組み合わせ

現実には「事業セグメント × 拠点」「組織階層 × プロジェクト」といった 2 軸を掛け合わせるのが一般的です。会計ソフトによって「部門コード + 補助コード」の 2 階層で持てるものと、部門コードだけで表現するものがあり、システム選定時に確認が必要です。

💡 ポイント 部門コードは一度決めると後戻りが大変です。会社の組織変更・事業ポートフォリオ変更に耐えるよう、初期設計では「拡張の余地」を残すのが実務の型です。10000/20000 のように 5 桁で 1 万番ずつ空けておくと、後から中間階層を追加できます。

共通費配賦の 3 基準

事業部に直接紐づかない費用(本社人件費・IT インフラ費・地代家賃・保険料など)を、事業部ごとに割り振る作業が「共通費配賦」です。配賦基準の主なパターンは 3 つです。

基準 対象 特徴
人員数基準 人事・総務・経理などの本社スタッフ費 部門人員数の比率で按分
売上高基準 全社広告宣伝費・全社イベント費 部門売上高の比率で按分
面積基準 本社ビル賃料・共益費 部門占有面積の比率で按分

配賦計算の例

本社人件費 1 億 2,000 万円を人員数基準で配賦

  • 事業部 A:50 名 → 5,000 万円
  • 事業部 B:30 名 → 3,000 万円
  • 事業部 C:40 名 → 4,000 万円
  • 合計 120 名 → 1 億 2,000 万円

配賦の是非

配賦は「事業部別損益を綺麗に見せる」ためには必要ですが、「事業部長の責任範囲を測る」目的には慎重さが必要です。配賦後の営業利益(フル配賦利益)と、配賦前の営業利益(貢献利益)を並列で見せて、両者の意味を区別する運用が推奨されます。

  • 貢献利益:直接費だけを差し引いた、事業部の実力に近い数字
  • フル配賦利益:共通費を配賦した後の、全社視点での事業部別利益

📝 補足 米国では貢献利益(Contribution Margin)を重視する運用が一般的です。日本の中堅企業では、フル配賦利益を主指標にしつつ、貢献利益を補助的に見せる二重管理が多く見られます。事業部長の評価は貢献利益で、経営判断はフル配賦利益で、という使い分けが実務の落としどころです。

月次予実レビューの型

部門別損益ができたら、次は予算との対比です。月次予実レビューは、経営会議・事業部会議の中心議題になります。

レビューの 5 ステップ

  1. 数字を並べる:予算・実績・差異・差異率・累計を一覧化
  2. 異常値を捕捉する:差異率 ±10% 超、金額 ±100 万円超などの閾値で自動フラグ
  3. 要因を分解する:差異が「数量差 × 単価差 × 時間差」のどこから来たか特定
  4. アクションを決める:要因に応じて、営業強化・原価見直し・費用抑制などの打ち手を選択
  5. 翌月フォロー:打ち手の効果を翌月の月次で検証

差異分析の 3 要因

売上や費用の差異は、多くの場合「数量差 × 単価差 × 時間差」の 3 要素で説明できます。

例:売上が予算 1,000 万円、実績 850 万円で 150 万円のマイナスの場合

  • 数量差:予算 100 個 × 平均単価 10 万円 → 実績 90 個 × 平均単価 10 万円 = 100 万円マイナス
  • 単価差:実績 90 個 × 平均単価 9.4 万円 → 予算単価 10 万円との差で 54 万円マイナス
  • 時間差:予定していた大型受注が翌月へズレて 4 万円マイナス

「数量差」「単価差」「時間差」に分けて示すことで、「なぜ売上が減ったのか」を経営会議で議論できるようになります。

経営会議への上げ方

月次予実レビュー結果を経営会議に上げるときの構成例を示します。

レビュー資料の 5 ページ構成

  1. サマリー:全社と事業部別の予算・実績・差異(1 ページ)
  2. 売上分析:事業別・製品別・地域別の売上要因分析(1 ページ)
  3. 費用分析:科目別・部門別の費用要因分析(1 ページ)
  4. KPI 推移:受注残・顧客数・単価・稼働率などの重要指標(1 ページ)
  5. アクションプラン:差異への対応策と責任者・期限(1 ページ)

説明の型

  • 結論ファースト:まず全社の営業利益がどうなったかを 1 行で
  • 要因は分解:数量・単価・時間の 3 要素で説明
  • 打ち手は具体的に:誰が、いつまでに、何をやるかを明示

⚠️ 注意 月次予実レビューが「悪い数字への説明会」になると、事業部側は数字を隠したり操作したり後回しにしたりします。「なぜ悪いか」より「何をどう変えるか」に議論の重心を置く運営が、月次レビューを組織学習の場に変える鍵です。

中核メッセージ 6 個の再掲

本コース全体を通じて、6 個のメッセージを繰り返します。

  1. 月次決算は「早く・正しく・意味を持って」——3 つのバランスを取る仕事
  2. 仕訳は結果ではなく判断の記録——なぜその科目を選んだかを説明できる状態にする
  3. 経過勘定は「期間帰属」の思想を守る道具——月をまたぐ取引を歪めない
  4. 引当金・減価償却は「未来の負担」を月々に分ける仕組み
  5. 部門別損益は責任会計——数字が動く場所と動かす人を対応させる
  6. 経理 DX は仕訳を減らす技術——電帳法・インボイスは制度対応ではなく業務再設計の起点

このレッスンで扱うのはメッセージ 5「部門別損益は責任会計」です。数字と行動が結びつく単位で切り出し、責任者の意思決定に使える形にすることが、部門別損益の目的です。

次のレッスンで扱うこと

次のレッスン 7 では、経理 DX と制度対応の実践を扱います。電子帳簿保存法(2024 年 1 月完全義務化)の 3 区分と月次運用、インボイス制度(2023 年 10 月開始)受取側の実務・2 割特例、freee/マネーフォワード/弥生の使い分けと AI 仕訳、RPA・AI-OCR の実装ポイントまで整理します。制度対応を「業務再設計の起点」に変える視点を扱います。

確認クイズ

このレッスンで学んだ内容を確認しましょう。