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スキルアップカレッジ

サプライチェーン責任——EcoVadis・CSDDD・紛争鉱物・フェアトレード

レッスン6:サプライチェーン責任——EcoVadis・CSDDD・紛争鉱物・フェアトレード

このレッスンで学ぶこと

  • サプライチェーン責任の背景と、「見えないところが本番」の意味を掴む
  • EcoVadis(2007 年設立)のサプライヤー評価の実務を捉える
  • CSDDD 2024 年 5 月採択の一般論としての位置づけを理解する(詳細は気候別コース)
  • 紛争鉱物(3TG)と米国 Dodd-Frank 法(2010 年)の実務を把握する
  • フェアトレード認証(コーヒー・カカオ・バナナ・コットン)の役割を整理する
  • 生物多様性と TNFD の位置づけを捉える

前レッスンでは、KPI 設計と Backcasting、対話の窓としての KPI を扱いました。本レッスンは、サステナビリティ実務の最難関——サプライチェーン責任を扱います。中核メッセージ「サプライチェーン責任は『見えないところ』が本番」の、そのものの主題です。

「見えないところ」の重要性

企業のサステナビリティ・パフォーマンスの多くは、自社の見える範囲(自社工場、自社オフィス、自社従業員)ではなく、サプライチェーンの奥深く(Tier 2、Tier 3、原材料の産地)で決まります。

見えないところで起きる問題

  • 強制労働:綿花の産地、水産物の遠洋漁業
  • 児童労働:カカオの西アフリカ、コーヒーの中南米、コットンのウズベキスタン
  • 環境破壊:熱帯雨林の伐採(パーム油、木材)、河川汚染(染色業)
  • 紛争鉱物:コンゴ民主共和国のタンタル、タングステン、錫、金の採掘
  • 人権侵害:新疆ウイグルの綿花・トマト、東南アジアの水産物

「自社では正しく事業をしていても、サプライチェーンで問題が発覚すれば企業ブランドは毀損される」——これがサプライチェーン責任の実務的な重みです。

EcoVadis——2007 年、サプライヤー評価の標準

EcoVadis は、2007 年にフランスで設立されたサプライヤーのサステナビリティ評価機関です。「サプライヤー評価版の格付機関」として、購買企業がサプライヤーに評価を依頼する仕組み。

評価の枠組み

  • 21 のテーマ:環境・労働と人権・倫理・持続可能な調達の 4 領域
  • 業種別:業種と規模に応じた質問セット
  • スコアリング:0〜100 点、Bronze/Silver/Gold/Platinum の 4 メダル

実務での使い方

  • 購買企業:主要サプライヤーに EcoVadis 評価取得を依頼、社内の CSR 調達方針に組み込む
  • サプライヤー:EcoVadis 評価取得で、複数の購買企業へ 1 度の提出で対応
  • 業界標準:自動車、化学、電機、消費財の各業界で事実上の標準

日本での普及

日本でも大手企業が主要サプライヤー数千社に EcoVadis 評価取得を求める動きが広がっており、「取引の前提条件」として位置づけられつつあります。

CSDDD——2024 年 5 月採択、一般論としての位置づけ

CSDDD(Corporate Sustainability Due Diligence Directive、企業サステナビリティ・デュー・ディリジェンス指令)は、前のカーボンニュートラル入門コースで詳述しました。ここでは、サプライチェーン責任の観点から改めて位置づけます。

サプライチェーン責任の観点

  • サプライチェーン全体のリスク特定:環境・人権・労働慣行のリスクを、Tier 1 だけでなく Tier 2 以降も対象
  • 予防・軽減措置:リスクへの対応計画と実施
  • 是正措置:問題発生時の是正
  • エンゲージメント:サプライヤー・ステークホルダーとの対話
  • 開示:DD 実施状況の年次開示

日本企業への影響

「EU 域外の企業でも、EU 内純売上高 4.5 億ユーロ超なら対象」——日本企業も EU 内の売上規模によって対象になる可能性があります。CSDDD 詳細は気候別コースで扱いますが、サプライチェーン責任の観点で「デュー・ディリジェンスが法律で義務化される」という潮流は、EU 発で世界に広がりつつあります。

紛争鉱物——3TG と米国 Dodd-Frank 法

紛争鉱物(Conflict Minerals)は、コンゴ民主共和国(DRC)とその周辺国(アフリカ大湖地域)から産出される、武装勢力の資金源となる鉱物です。3TG(Tin、Tantalum、Tungsten、Gold)の 4 種類が主対象。

主な用途

  • スズ(Sn、Tin):はんだ、ブリキ、電子部品
  • タンタル(Ta、Tantalum):コンデンサ、半導体
  • タングステン(W、Tungsten):切削工具、フィラメント
  • 金(Au、Gold):電子接点、装飾品、投資

米国 Dodd-Frank 法(2010 年)と RCOI

Dodd-Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act の第 1502 条(2010 年 7 月成立)は、SEC 登録企業に対して、3TG の使用状況と原産国調査(RCOI、Reasonable Country of Origin Inquiry)を義務化しました。

  • 対象企業:SEC 登録企業(米国上場企業)、および そのサプライヤー(日本企業も含む)
  • 報告:Form SD の年次提出
  • RCOI:合理的な原産国調査、Conflict Free Sourcing Initiative(CFSI)の Conflict Minerals Reporting Template(CMRT)を使用

実務での対応

  • サプライヤー調査:CMRT で 3TG の使用と製錬所を特定
  • RMI(Responsible Minerals Initiative):責任ある鉱物調達イニシアチブに参加
  • 監査済み製錬所の使用:責任ある製錬所からの調達を優先

電機・自動車業界では、Dodd-Frank 法対応が事実上の必須——日本の大手電機・自動車メーカーもサプライヤーに CMRT 提出を求めています。

フェアトレード——コーヒー・カカオ・バナナ・コットン

フェアトレードは、開発途上国の生産者に公正な価格を保証し、労働環境や環境保全を確保する国際的な取り組みです。Fairtrade International(1997 年設立)が国際認証を運営。

主な認証対象

  • コーヒー:中南米、アフリカ、東南アジア産
  • カカオ:西アフリカ産(ガーナ、コートジボワール)
  • バナナ:中南米産
  • コットン:インド、西アフリカ、中央アジア産
  • その他:紅茶、砂糖、ハチミツ、香辛料、花、金、ワインなど

認証の仕組み

  • フェアトレード最低価格:市場価格が下落した際の生産者保護
  • フェアトレード・プレミアム:生産者組合が地域開発に使う追加資金
  • 労働環境基準:児童労働の禁止、労働組合の権利、安全な労働環境
  • 環境基準:農薬使用制限、水資源管理、生物多様性保護

日本での普及

日本のスーパー・コンビニ・カフェチェーンでも、フェアトレード認証コーヒー・カカオを扱う動きが広がっています。「フェアトレード認証コーヒーの取扱率」を KPI にする外食チェーンも増えています。

サプライチェーン人権 DD——OECD ガイドライン

OECD 多国籍企業行動指針(1976 年策定、2011 年改訂)と 国連指導原則(UNGP、Guiding Principles on Business and Human Rights、2011 年) は、企業のサプライチェーン人権デュー・ディリジェンスの国際的基準です。

6 ステップの人権 DD

  1. 人権方針の策定:CEO レベルのコミットメント
  2. 人権影響評価:バリューチェーン全体でのリスク特定
  3. 人権への対応:影響を軽減・防止する措置
  4. モニタリング:継続的な追跡
  5. 報告:ステークホルダーへの開示
  6. 救済:影響を受けた人々への救済メカニズム

日本の動き

  • 経済産業省「責任あるサプライチェーンにおける人権尊重のためのガイドライン」(2022 年 9 月公表)
  • 大手企業の人権 DD レポート発行の急拡大(2020 年代前半)

生物多様性と TNFD

前 2 コース(気候変動)で触れた TNFD(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)は、サプライチェーン責任の観点でも重要です。

生物多様性のサプライチェーン依存

  • 森林リスク・コモディティ:パーム油、大豆、木材、畜牛肉、コーヒー、カカオ
  • 水リスク:水を大量消費する農業・繊維産業
  • 土壌リスク:単一栽培による土壌劣化
  • 海洋リスク:過剰漁獲、混獲

TNFD の LEAP アプローチ

  • Locate:サプライチェーンでの自然への依存・影響の場所特定
  • Evaluate:依存・影響の評価
  • Assess:リスク・機会の評価
  • Prepare:開示準備

生物多様性は「気候変動の次の主戦場」——2020 年代後半の企業サステナビリティで、注目度が急速に高まる領域です。

中核メッセージの再確認

  • サプライチェーン責任は「見えないところ」が本番:Tier 1 だけでなく、Tier 2・Tier 3・原材料の産地まで踏み込むのが実務
  • フレームワークは道具:EcoVadis・CSDDD・OECD ガイドライン・Fairtrade・TNFD——すべて道具の 1 つ、目的に応じて使い分ける

まとめ

  • サプライチェーン責任の背景:見えないところで起きる強制労働・児童労働・環境破壊・紛争鉱物
  • EcoVadis は 2007 年設立、サプライヤー評価の標準、21 テーマ・4 領域・4 メダル
  • CSDDD は 2024 年 5 月採択、EU 内純売上高 4.5 億ユーロ超の EU 域外企業も対象
  • 紛争鉱物 3TG(スズ・タンタル・タングステン・金)、米国 Dodd-Frank 法 2010 年で SEC 登録企業に RCOI 義務化
  • フェアトレード:Fairtrade International 1997 年設立、コーヒー・カカオ・バナナ・コットンなど
  • OECD ガイドラインと国連指導原則で人権 DD の 6 ステップ
  • 日本の経産省「人権尊重ガイドライン」2022 年 9 月公表
  • 生物多様性と TNFD の LEAP アプローチ、2020 年代後半の主戦場

次のレッスンでは、認証・認定——B Corp 認証 5 領域、Fair Trade、UN Global Compact 参加を扱います。

確認クイズ

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