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スキルアップカレッジ

サステナビリティ経営の枠組み——UN Global Compact・ISO 26000・ISO 14001

レッスン2:サステナビリティ経営の枠組み——UN Global Compact・ISO 26000・ISO 14001

このレッスンで学ぶこと

  • UN Global Compact 1999 年発足の背景と 10 原則を把握する
  • ISO 26000(2010 年公表)の 7 中核主題を整理する
  • ISO 14001 環境マネジメントシステムの位置づけを理解する
  • 3 つの枠組みの相互関係と使い分けを掴む

前レッスンでは、SDGs の 17 目標と 5 P、対象読者を扱いました。本レッスンは、SDGs に取り組むための「経営の枠組み」——UN Global Compact、ISO 26000、ISO 14001 の 3 つを扱います。中核メッセージ「フレームワークは道具——GRI・IRIS+・B Corp を使い分ける」の、経営枠組みの中身です。

UN Global Compact——1999 年、コフィー・アナンの呼びかけ

UN Global Compact(国連グローバル・コンパクト、UNGC)は、1999 年 1 月の世界経済フォーラム(ダボス会議)で、当時の国連事務総長コフィー・アナン氏が世界の企業リーダーに呼びかけたことで生まれました。参加受付は 2000 年 7 月開始、以降、世界最大の企業サステナビリティ・イニシアチブに成長しました。

10 原則

UNGC は、企業に「4 分野・10 原則」の遵守を求めます。

flowchart TB
  UNGC[UN Global Compact<br/>10 原則]
  UNGC --> HR[人権 2 原則<br/>P1-P2]
  UNGC --> Lab[労働 4 原則<br/>P3-P6]
  UNGC --> Env[環境 3 原則<br/>P7-P9]
  UNGC --> Anti[腐敗防止 1 原則<br/>P10]
  • 人権(Human Rights)
    • 原則 1:国際的に宣言されている人権の保護を支持、尊重する
    • 原則 2:自らが人権侵害に加担しないよう確保する
  • 労働(Labour)
    • 原則 3:組合結成の自由と団体交渉の権利の実効的な承認
    • 原則 4:あらゆる形態の強制労働の撤廃
    • 原則 5:児童労働の実効的な廃止
    • 原則 6:雇用と職業に関する差別の撤廃
  • 環境(Environment)
    • 原則 7:環境上の課題に対する予防原則的アプローチ
    • 原則 8:環境に関するより大きな責任を率先して引き受ける
    • 原則 9:環境に優しい技術の開発と普及を促進する
  • 腐敗防止(Anti-Corruption)
    • 原則 10:強要及び贈収賄を含むあらゆる形態の腐敗防止に取り組む

参加プロセスと Communication on Progress(COP)

  • 参加宣言:CEO 名で参加意思を UNGC 事務局に提出
  • 年次進捗報告:Communication on Progress(COP、進捗開示)を毎年提出
  • 未提出企業:段階的にリストから削除

「参加して終わり」ではなく、年次の COP 提出が続く枠組み。日本のグローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)には 500 社超が参加(2024 年時点)。

ISO 26000——2010 年、社会的責任のガイダンス

ISO 26000(社会的責任に関する手引き)は、国際標準化機構(ISO)が 2010 年 11 月に公表した国際規格です。認証規格ではなく「ガイダンス規格」——第三者認証は取れず、自己宣言または開示に活用する形。

7 中核主題

ISO 26000 の骨格は、7 つの中核主題です。

flowchart TB
  ISO[ISO 26000<br/>7 中核主題]
  ISO --> G[組織統治]
  ISO --> HR[人権]
  ISO --> L[労働慣行]
  ISO --> E[環境]
  ISO --> F[公正な事業慣行]
  ISO --> C[消費者課題]
  ISO --> Com[コミュニティへの参画・発展]

各主題の概要

  • 組織統治:意思決定と実施のプロセス、透明性、説明責任
  • 人権:デュー・ディリジェンス、加担、脆弱な集団、市民的・政治的権利、経済的・社会的・文化的権利、労働の基本原則と権利
  • 労働慣行:雇用と雇用関係、労働条件と社会保護、社会対話、労働における安全衛生、職場における人材開発と訓練
  • 環境:汚染防止、持続可能な資源利用、気候変動の緩和と適応、環境保護・生物多様性・自然生息地の回復
  • 公正な事業慣行:汚職防止、責任ある政治的関与、公正競争、影響範囲での社会的責任推進、財産権の尊重
  • 消費者課題:公正なマーケティング、消費者の安全衛生、持続可能な消費、消費者のサービス・サポート・紛争解決、消費者データ保護、必須サービスへのアクセス、教育・啓発
  • コミュニティへの参画・発展:コミュニティ参画、教育・文化、雇用創出、技術開発、富と所得の創出、健康、社会投資

ISO 26000 の位置づけ

  • 認証規格ではない:ISO 9001(品質)や ISO 14001(環境)のような認証は取れない
  • 業種横断:業種を問わず、大企業・中小企業・政府・NGO のいずれも活用可能
  • 他規格との整合:GRI、UN Global Compact、OECD 多国籍企業行動指針との整合を意識

「サステナビリティ経営の共通言語」として、日本の多くの企業がサステナビリティ・レポートで参照する規格。ただし、認証を取れないため、実務では「参照した」の言及のみで詳細分析までは踏み込まないことも多い。

ISO 14001——1996 年、環境マネジメントシステム

ISO 14001 は、環境マネジメントシステム(EMS、Environmental Management System)の国際規格です。1996 年に初版が公表され、2004 年、2015 年に改訂されました。ISO 26000 と違い、第三者認証が取れる規格です。

主な要求事項

  • 環境方針:組織の環境方針を策定・公表
  • 環境側面の特定:組織活動が環境に与える影響を体系的に特定
  • 法的要求事項の遵守:関連する環境法令の把握と遵守
  • 目標設定と実行:環境目標の設定、実施計画、リソース配分
  • 運用管理:日常的な環境影響のモニタリング
  • 監査と是正:内部監査、経営者レビュー、是正措置
  • 継続的改善:PDCA サイクルによる継続改善

2015 年改訂の主な変更点

  • リスクベースアプローチ:組織の内外の課題とリスクを反映
  • ライフサイクル視点:製品・サービスのライフサイクル全体を考慮
  • リーダーシップ強化:経営層の関与を明確化
  • 文書化の柔軟性:紙の文書へのこだわりを減らす

日本での普及

日本は世界で最も ISO 14001 認証取得数が多い国の 1 つで、2024 年時点で 20,000 事業所超が取得。「環境経営の基盤」として長年活用されてきました。

3 つの枠組みの相互関係

flowchart LR
  subgraph 国際指針 [国際的指針]
    UNGC[UN Global Compact<br/>10 原則<br/>参加型]
    ISO26[ISO 26000<br/>7 中核主題<br/>ガイダンス]
  end
  subgraph 認証規格 [認証規格]
    ISO14[ISO 14001<br/>EMS<br/>認証取得可]
  end
  Comp[企業] --> UNGC
  Comp --> ISO26
  Comp --> ISO14
  UNGC -.整合.-> ISO26
  ISO26 -.整合.-> ISO14

使い分け

  • UN Global Compact:全社的なコミットメント、CEO レベルの意思表明、年次進捗開示
  • ISO 26000:サステナビリティ経営全体の骨格、サステナビリティ・レポートで参照
  • ISO 14001:環境マネジメントの実務、認証取得で外部にコミットメントを示す

3 つは競合ではなく補完的——UNGC で意思を表明し、ISO 26000 で骨格を作り、ISO 14001 で環境実務を回す、という構造が実務のパターンです。

補足:GRI との位置づけ

前レッスンで触れた GRI(Global Reporting Initiative)は、これら 3 つの上位に位置する「開示基準」です。UNGC、ISO 26000、ISO 14001 の取り組みを、GRI スタンダードでサステナビリティ・レポートに開示する、という流れが実務の骨格です。

中核メッセージの再確認

  • フレームワークは道具——GRI・IRIS+・B Corp を使い分ける:UNGC・ISO 26000・ISO 14001 も道具の 1 つ。全部使うのが正解ではなく、目的に応じて使い分ける
  • SDGs は「掲げる」から「実装する」へ:UNGC 参加、ISO 26000 参照、ISO 14001 認証取得は、実装する SDGs の具体的な形

まとめ

  • UN Global Compact は 1999 年 1 月ダボスで提唱、2000 年 7 月参加開始、10 原則(人権 2・労働 4・環境 3・腐敗防止 1)
  • 年次進捗報告(COP)が続く枠組み、日本 GCNJ には 500 社超が参加
  • ISO 26000 は 2010 年 11 月公表、7 中核主題(組織統治・人権・労働慣行・環境・公正な事業慣行・消費者課題・コミュニティ)、認証は取れないガイダンス規格
  • ISO 14001 は 1996 年初版・2015 年改訂、環境マネジメントシステムの国際規格、第三者認証が取れる、日本で 20,000 事業所超が取得
  • 3 つは補完的:UNGC で意思表明、ISO 26000 で骨格、ISO 14001 で環境実務
  • GRI はこれら 3 つを開示する上位基準

次のレッスンでは、マテリアリティ分析の実務——5 ステップとダブルマテリアリティの実装、講師の現場メモを扱います。

確認クイズ

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