ロジックツリー——構造化と分解の道具
レッスン3:ロジックツリー——構造化と分解の道具
このレッスンで学ぶこと
- ロジックツリーの基本構造を理解する
- What ツリー・Why ツリー・How ツリーの 3 種類を区別する
- 分解の粒度と階層を整理できる
- ロジックツリーの落とし穴に気づく
- 業務での具体例を持ち帰る
- MECE と組み合わせる発想を持つ
前のレッスンでは、MECE(もれなくダブりなく分ける)の発想を整理しました。今回のレッスンでは、MECE を縦に積み重ねた道具、ロジックツリーを扱います。ロジックツリーは課題を構造化・分解するための強力なフレームワークで、コンサル・企画・営業・経営層まで広く使われます。
ロジックツリーとは
ロジックツリーは、1 つのテーマを上位概念から下位概念へ、樹形図で分解する道具です。木の根(テーマ)から枝(要素)へと広がる構造で、
- 最上位:分解したいテーマ
- 第 1 階層:MECE な切り口で分けた要素
- 第 2 階層:各要素をさらに分解
- 第 3 階層、第 4 階層……:必要な深さまで掘り下げる
という形で書きます。
簡単なロジックツリーの例
売上拡大
├ 単価を上げる
│ ├ プレミアム商品を増やす
│ └ 値上げする
└ 数量を増やす
├ 新規顧客を増やす
│ ├ 広告を増やす
│ └ 紹介制度を作る
└ 既存顧客のリピートを増やす
├ メルマガを送る
└ ポイントを付ける
「売上拡大」というテーマを、「単価」と「数量」に分け、それぞれを下位の施策に展開しています。これがロジックツリーの基本形です。
各階層が MECE
ロジックツリーの各階層は、MECE になっているのが理想です。
- 「売上 = 単価 × 数量」は MECE(売上の構成要素はこの 2 つで尽きる)
- 「数量 = 新規 + リピート」は MECE(顧客は新規かリピートか)
階層が MECE になっていることで、「網羅性が確保されている」と相手に納得してもらえます。
💡 ポイント 「ツリーを書く」のは数式を覚えるよりやさしいですが、「各階層を MECE に保つ」のがロジックツリーの肝です。粒度がそろっていない、別の階層の要素が紛れる、といったケースが多発します。
3 種類のロジックツリー
ロジックツリーは、用途で 3 種類に分けて整理されます。
1. What ツリー——構造を分解する
「これは何で構成されているか」を分解するツリーです。前述の売上拡大ツリーの「売上 = 単価 × 数量」のように、要素の組み合わせを明らかにします。
例:
コスト
├ 固定費
│ ├ 人件費
│ ├ 賃料
│ └ ……
└ 変動費
├ 材料費
├ 運送費
└ ……
What ツリーは、「全体を把握する」「構成を理解する」場面で活躍します。
2. Why ツリー——原因を分解する
「なぜそれが起きているか」を分解するツリーです。問題の原因を深掘りするときに使います。
例:
売上が下がっている
├ 単価が下がっている
│ ├ 競合が値下げ
│ └ 高単価商品が売れなくなった
└ 数量が減っている
├ 新規顧客が減った
│ ├ 広告効果が落ちた
│ └ 競合に取られた
└ リピートが減った
├ 商品満足度が下がった
└ 競合に乗り換えられた
Why ツリーは、「原因分析」「課題発見」の場面で活躍します。
3. How ツリー——手段を分解する
「どうやってそれを実現するか」を分解するツリーです。施策の選択肢を網羅するときに使います。
例:
顧客満足度を上げる
├ 商品の質を上げる
│ ├ 素材を改善
│ └ 製造工程を改善
├ サービスを改善する
│ ├ 配送の早さ
│ └ アフターサポート
└ コミュニケーションを改善する
├ メルマガの内容
└ SNS での発信
How ツリーは、「施策の網羅」「アクション設計」の場面で活躍します。
3 種類の使い分け
| 場面 | ツリー |
|---|---|
| 全体を理解したい | What |
| 原因を見つけたい | Why |
| 解決策を考えたい | How |
3 種類は組み合わせて使うのが普通です。例:
- Why ツリーで「なぜ売上が下がっているか」を分解
- 主な原因を 1〜2 つに絞り込む
- How ツリーで「その原因をどう解決するか」を分解
- 実行可能な施策に着地
📝 補足 業務では「What だけ」「Why だけ」で終わってしまうことが多いです。「だから何をするか」(How)まで進めると、議論が実行に結びつきます。
分解の粒度と階層
ロジックツリーは、どこまで深く分解するかが現実的な悩みです。
階層の目安
- 第 1 階層:MECE な大きな切り口(2〜5 要素)
- 第 2 階層:第 1 階層の各要素を分解(2〜5 要素)
- 第 3 階層:必要に応じて。原則ここで止める
- 第 4 階層以降:例外的、特定の議論で必要なときだけ
3 階層を超えると、
- ツリーが読みにくくなる
- 細かすぎて議論がまとまらない
- 重要なメッセージが薄まる
3 階層が業務での標準です。
粒度をそろえる
同じ階層の要素は、粒度(抽象度)をそろえます。例えば、
- ×:「商品 A・商品 B・海外売上」(前 2 つは商品単位、最後は売上カテゴリで粒度が違う)
- ◎:「商品 A・商品 B・商品 C」または「国内売上・海外売上」
粒度がバラバラだと、後段の議論が混乱します。
「アクションにつながる粒度」が目安
業務でロジックツリーを使う以上、最終階層の要素は「次に何をやるか」がイメージできる粒度であるべきです。「広告効果が落ちた」では抽象的すぎますが、「テレビ広告の放映時間が減った」だと具体的に対応できます。
💡 ポイント ツリーの深さは、目的とリソースで決めます。意思決定者への報告なら 2 階層で十分、現場の実行プランなら 3〜4 階層が必要、と使い分けます。
ロジックツリーの落とし穴
業務で陥りやすい落とし穴を整理します。
1. 恣意的な分解
自分の知っている分野・解決したい結論に合わせて、ツリーを「恣意的に」作ってしまう。「とりあえずデジタル広告の効果を分析したい」という結論ありきで、ほかの要素を無意識に省く。
2. 深掘りしすぎ
すべての枝を 4〜5 階層まで掘り下げて、肝心の議論ができなくなる。「分析倒れ」になりがち。
3. 表面的な分解
逆に、表面的な分解で止まって、本質に届かない。「売上 = 単価 × 数量」で終わってしまうと、何も新しい発見がない。
4. MECE への過度な拘泥
完璧な MECE を求めて、ツリー作成自体が目的化する。
5. 1 つのツリーで全部解決しようとする
What・Why・How を 1 つのツリーに混ぜてしまい、構造が壊れる。
⚠️ 注意 ロジックツリーは「思考の補助線」で、「答えそのもの」ではありません。ツリーを書いたら答えが出るのではなく、ツリーが議論の土台になります。
業務での具体例
最後に、業務で出てくる典型例を 3 つ紹介します。
例 1:営業課題の整理(Why ツリー)
今期の営業目標未達
├ 新規受注が少ない
│ ├ 商談数が少ない
│ │ ├ アポイントが取れない
│ │ └ リードが少ない
│ └ 商談から受注への転換率が低い
│ ├ 提案の質が低い
│ └ 競合に負けている
└ 既存顧客の解約が多い
├ サポートの質
└ 競合の値下げ
例 2:新商品の検討(How ツリー)
新規収益源を作る
├ 既存事業の周辺拡張
│ ├ 周辺サービスを追加
│ └ 高価格帯商品の追加
├ 新規事業の立ち上げ
│ ├ M&A
│ └ ゼロからの新規
└ パートナーシップ
├ 販売代理店
└ アライアンス
例 3:人事課題の整理(Why ツリー)
若手の離職率が高い
├ 採用段階の問題
│ ├ ミスマッチ採用
│ └ 期待値の食い違い
├ 入社後の問題
│ ├ 育成の不足
│ └ 配属の偏り
└ 環境の問題
├ 給与水準
└ 業務量
これらは「正解」ではなく、業務で議論を進めるための叩き台です。実際の議論では、ツリーを書きながら、見落とした枝を追加したり、不要な枝を削ったりと柔軟に動かします。
講師の現場メモ:「ロジックツリーで朝令暮改が止まった経営会議」
私(中野)が独立後、ある中堅製造業の社長から相談を受けた話です。「経営会議で議論が散漫で、毎回方針が変わる。1 か月前に決めた施策がいつのまにか覆っている」と。
私は経営会議に同席して観察しました。確かに、
- 1 つの議題で、過去・現在・施策・原因・予算が次々に混ざる
- 部門長の発言が「自分の部門の現状報告」に終始
- 社長が「では」と方向を出すが、根拠が曖昧
「これはロジックツリーで整理できますね」と私は提案し、次の月の経営会議では、最初の 30 分でロジックツリーを書くワークショップを行いました。
「売上目標未達」を Why ツリーで原因分解し、主な原因を特定。次に「主な原因の解消」を How ツリーで施策展開。施策の優先順位を 4 つに絞って、それぞれの責任部署を決めました。
3 か月後、社長から連絡があり「議論が驚くほど整理された。1 か月後の会議でも、ツリーがあるからどこを議論しているか全員が共有できる。施策の朝令暮改が止まった」と感謝されました。
このときに痛感したのは、ロジックツリーは「個人の頭の整理」だけでなく「組織の共通言語」として強力だ、ということです。ツリーが議論の地図になり、参加者全員が「今どこを話しているか」を共有できます。本コースでロジックツリーを丁寧に扱うのは、皆さんの組織でもこの「共通言語」を作っていただきたいからです。
ツリーは個人技ではなく、組織の議論の基盤です。
まとめ
このレッスンでは、以下のことを学びました。
- ロジックツリーは 1 つのテーマを上位から下位へ樹形図で分解する道具
- 各階層は MECE になっているのが理想
- 3 種類:What ツリー(構造の分解)、Why ツリー(原因の分解)、How ツリー(手段の分解)
- 業務では Why → How の連携で「原因 → 解決策」の流れを作る
- 階層の目安は 3 階層まで。それ以上は読みにくく、議論がまとまらない
- 同じ階層の要素は粒度(抽象度)をそろえる
- 最終階層は「アクションにつながる粒度」が目安
- 落とし穴:恣意的な分解、深掘りしすぎ、表面的な分解、MECE への過度な拘泥、1 つのツリーで全部解決しようとする
- ツリーは「答え」ではなく「議論の土台」「組織の共通言語」
次のレッスンでは、So What/Why So による主張と根拠の往復と、ピラミッドストラクチャーの組み立て方を扱います。
確認クイズ
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