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スキルアップカレッジ

損益計算書(P/L)——会社が稼いだか、稼げなかったか

レッスン2:損益計算書P/L)——会社が稼いだか、稼げなかったか

このレッスンで学ぶこと

  • 損益計算書(P/L)の役割と構造を理解する
  • 5 段階の利益売上総利益営業利益経常利益・税引前当期純利益・当期純利益)の意味を整理する
  • 売上原価と販管費の中身を把握する
  • 営業外損益・特別損益の扱いを理解する
  • 業種別の利益構造の違いを把握する
  • P/L から見える「経営者の意志」を読み取る発想を持つ

前回のレッスンで財務諸表の役割と本コースの位置づけを共有しました。本レッスンから、三表編に入ります。最初に扱うのは、もっとも親しみやすい損益計算書(P/L、Profit and Loss Statement、または Income Statement)。会社が「ある一定期間にいくら稼いだか、いくら失ったか」を表す表です。新聞や会社案内の「売上高 1,000 億円、営業利益 100 億円」という表現は、すべて P/L の数字です。

損益計算書(P/L)の役割

P/L は「一定期間(通常は 1 年間や四半期)の経営活動の結果」を表します。1 年経って「いくら売って、いくらかかって、いくら残ったか」をまとめた成績表です。

P/L が答える 3 つの問い

P/L を読むと、次の 3 つがわかります。

問い P/L のどこを見るか
会社はどれだけ大きいか 売上高
会社は儲かっているか 各段階の利益
会社の儲けの構造はどうか 売上 → 各段階の利益の流れ

特に「儲けの構造」を見るのが、P/L の真の価値です。同じ「営業利益 100 億円」でも、売上 1,000 億円から作った場合と、売上 10,000 億円から作った場合では意味が違います。

P/L の特徴:「フロー」の表

P/L は、ある期間(例:2025 年 4 月 1 日 〜 2026 年 3 月 31 日)の「流れ」を表します。期間の終わりにリセットされ、翌期はゼロから始まります。これに対し、貸借対照表B/S)は「ある時点の蓄積」(次回のレッスン 3 で扱う)です。

💡 ポイント P/L は「一定期間に稼いだか」を表すフロー(流れ)の表。会社の大きさ(売上)と儲け(利益)と儲けの構造(売上から利益への流れ)の 3 つがわかります。

5 段階の利益——P/L の中核

P/L の中核は、「5 段階の利益」です。日本基準の P/L では、上から順に 5 つの利益が並びます。

flowchart TB
    A["売上高"] -->|−売上原価| B["1️⃣ 売上総利益(粗利)"]
    B -->|−販管費| C["2️⃣ 営業利益"]
    C -->|±営業外損益| D["3️⃣ 経常利益"]
    D -->|±特別損益| E["4️⃣ 税引前当期純利益"]
    E -->|−法人税等| F["5️⃣ 当期純利益"]

1 段階目:売上総利益(粗利)

売上総利益 = 売上高 − 売上原価

「商品を仕入れて売る」「製品を作って売る」の差額です。「粗利(あらり)」とも呼ばれます。商品・サービスそのものの儲け力を表します。

例(小売店):

売上高(年間):1,000
売上原価(仕入れコスト):600
売上総利益(粗利):400

粗利率(売上総利益率):400 ÷ 1,000 = 40%

2 段階目:営業利益

営業利益 = 売上総利益 − 販売費及び一般管理費(販管費)

粗利から、販管費(家賃、人件費、広告費、通信費、減価償却費など)を引いたものです。「本業で稼いだ利益」を表します。投資家や経営者がもっとも注目するのが、この営業利益です。

売上総利益:400
販管費:250
営業利益:150

営業利益率:150 ÷ 1,000 = 15%

3 段階目:経常利益(けいじょうりえき)

経常利益 = 営業利益 ± 営業外損益

営業利益に、「本業以外の経常的な損益」を加減したものです。営業外損益には、受取利息(プラス)、支払利息(マイナス)、為替差損益などが含まれます。

営業利益:150
営業外収益:+15(受取利息など)
営業外費用:-5(支払利息など)
経常利益:160

経常利益は「本業 + 財務活動を含めた、毎期繰り返される儲け」を表します。日本企業では伝統的に重視されますが、IFRS や米国基準では経常利益という区分はありません。

4 段階目:税引前当期純利益

税引前当期純利益 = 経常利益 ± 特別損益

経常利益に、「臨時的・突発的な損益」を加減したものです。特別利益(固定資産売却益、保険差益など)、特別損失(災害損失、減損損失、リストラ費用など)が含まれます。

経常利益:160
特別利益:+5(土地売却益)
特別損失:-10(工場の減損)
税引前当期純利益:155

5 段階目:当期純利益

当期純利益 = 税引前当期純利益 − 法人税等

法人税・住民税・事業税を引いた、最終的な利益です。「当期純利益」または「純利益」「ボトムライン(bottom line、P/L の一番下)」と呼ばれます。株主への配当の元となり、内部留保(B/S の利益剰余金)に積み上がります。

税引前当期純利益:155
法人税等:50
当期純利益:105

5 段階を一覧で

売上高               1,000
売上原価              -600
─────────────────────
売上総利益(粗利)      400  ← 1 段階目
販管費               -250
─────────────────────
営業利益              150  ← 2 段階目
営業外収益            +15
営業外費用             -5
─────────────────────
経常利益              160  ← 3 段階目
特別利益              +5
特別損失             -10
─────────────────────
税引前当期純利益      155  ← 4 段階目
法人税等              -50
─────────────────────
当期純利益            105  ← 5 段階目

💡 ポイント P/L には 5 段階の利益があります。①売上総利益(粗利、商品の儲け力)、②営業利益(本業の儲け)、③経常利益(本業+財務活動の儲け)、④税引前当期純利益(特別損益を含む)、⑤当期純利益(最終利益)。それぞれの段階で「儲けの種類」が変わります。

売上原価と販管費——コストの 2 大区分

P/L の理解で外せないのが、「売上原価」と「販管費(販売費及び一般管理費)」の違いです。

売上原価とは

商品・サービスを「直接生み出すコスト」です。業種によって中身が違います。

業種 売上原価の中身
小売 商品の仕入れ価格
製造業 原材料費、製造現場の人件費、製造設備の減価償却
飲食 食材費、調理人件費
サービス業(コンサル) コンサルタントの人件費(直接稼働分)
SaaS サーバー費、エンジニア人件費(直接プロダクト開発)

販管費とは

商品・サービスを「売る・支える」コストです。販売費(営業活動)と一般管理費(管理部門)の総称。

区分
販売費 営業人件費、広告宣伝費、販売手数料、運送費
一般管理費 役員報酬、本社人件費、家賃、減価償却費(本社建物)、通信費、消耗品費、研究開発費

「直接コスト」と「間接コスト」の区別

  • 売上原価:商品・サービスを直接生み出すコスト(直接コスト)
  • 販管費:商品・サービスを支えるコスト(間接コスト)

業種ごとに区分は変わりますが、この発想を持っておくと P/L の読み方が変わります。

業種で違う「売上原価率

売上原価率(売上原価 ÷ 売上高)は、業種ごとに大きく違います。

業種 売上原価率の目安
小売(スーパー) 70〜80%
小売(ブランド品) 30〜50%
製造業(一般) 60〜75%
飲食 25〜35%(食材費のみ)
サービス業 30〜60%
SaaS(高粗利) 10〜30%

「同じ売上原価率」でも、業種が違えば意味が違います。業種比較するときは、同業種の平均値と比べます。

💡 ポイント 売上原価は「商品・サービスを直接生み出すコスト」、販管費は「商品・サービスを支えるコスト」。業種により中身も比率も大きく違うため、業種平均と比較して読みます。

営業外損益と特別損益——「経常」「特別」の意味

3 段階目以降の利益で出てくる「営業外損益」と「特別損益」の違いを整理します。

営業外損益——「経常的だが本業ではない」

毎期繰り返し発生するが、本業ではない損益。

種類 主な項目
営業外収益 受取利息、受取配当金、為替差益、雑収入
営業外費用 支払利息、為替差損、雑損失

例えば、預金から発生する利息(受取利息)は、毎期発生しますが、本業の商品販売ではありません。借入金の支払利息も、本業のコストではないが、財務活動として毎期発生します。

特別損益——「臨時的・突発的」

その期だけの臨時の損益。

種類 主な項目
特別利益 固定資産売却益、保険差益、過年度損益修正益
特別損失 固定資産売却損、災害損失、減損損失、リストラ費用、訴訟損失

例えば、保有していた土地を売って利益が出た場合は「固定資産売却益」として特別利益になります。工場が老朽化して帳簿価額を下回ったので評価を下げた場合は「減損損失」として特別損失になります。

なぜ区別するか

P/L で営業外損益と特別損益を区別する目的は、「本業の力」と「臨時の影響」を分けて読みたいから、です。

  • 営業利益(本業の力)→ 来期も繰り返される
  • 経常利益(本業 + 経常的な財務活動)→ 来期も繰り返される
  • 当期純利益(特別損益を含む)→ 来期は変わる可能性

例えば、「当期純利益 1 億円」という会社が、実は「営業赤字 5 億円、土地売却で特別利益 7 億円」だったとしたら、来期の見通しは厳しいと判断できます。営業赤字の本業はそのまま、土地という資産も既に売ってしまっているので、来期は同じ利益を出せません。

💡 ポイント 営業外損益は「経常的だが本業ではない」、特別損益は「臨時的・突発的」。区別する目的は、「本業の力」と「臨時の影響」を分けて読むため。当期純利益だけで判断せず、5 段階の利益のどこから利益が出ているかを見ます。

業種別の利益構造の違い

業種によって、P/L の「利益構造」は大きく違います。

高粗利・低営業利益型(例:SaaS、コンサル)

  • 売上原価率:低い(10〜30%)
  • 販管費率:高い(営業・マーケ・開発が大きい)
  • 営業利益率:中程度(10〜30%)

成長期は赤字でもよいビジネス。粗利は高いが、販管費(営業・マーケ・開発)で投資する。Salesforce、Workday などの成熟 SaaS は営業利益率 15〜25%。

低粗利・低営業利益型(例:スーパー、商社、卸売)

  • 売上原価率:高い(80〜95%)
  • 販管費率:低めだが、絶対額は大きい
  • 営業利益率:低い(1〜5%)

薄利多売のビジネス。粗利は低いが、回転で稼ぐ。イオン、セブン&アイ、商社の卸売部門など。

高粗利・高営業利益型(例:高級ブランド、製薬大手)

  • 売上原価率:低い(30〜50%)
  • 販管費率:中程度
  • 営業利益率:高い(20〜30% 以上)

ブランド力・知的財産で稼ぐビジネス。LVMH、エルメス、武田薬品など。

設備投資型(例:製造業、電力、通信)

  • 売上原価率:中程度(60〜75%)
  • 販管費率:中程度(減価償却が大きい)
  • 営業利益率:中程度(5〜15%)

巨額の設備投資が必要なビジネス。減価償却費が販管費の大きな部分を占める。トヨタ自動車、東京電力、NTT など。

業種を理解せずに比較しない

新任の方が陥りやすいのが、「営業利益率の絶対値で会社を評価する」発想です。例えば「A 社は営業利益率 25% で、B 社は 5% だから A 社が優れている」と判断するのは早計です。A 社が高級ブランド(高粗利型)、B 社がスーパー(低粗利型)ならば、業種が違うので比較できません。同業種の平均値と比較するのが基本です。

💡 ポイント 業種別に P/L の利益構造は大きく違います。高粗利・低営業利益型(SaaS)、低粗利・低営業利益型(小売)、高粗利・高営業利益型(ブランド)、設備投資型(製造業)など。同業種の平均と比較するのが基本です。

P/L から見える経営者の意志

P/L を読む醍醐味は、数字の裏に経営者の意志が見えることです。

投資判断の意志——「販管費の使い方」

販管費の中身を見ると、経営者が「どこに投資しているか」がわかります。

  • 広告宣伝費が前年比 +50%:マーケティング投資を強化
  • 研究開発費が前年比 +30%:技術開発に注力
  • 営業人件費が前年比 -20%:営業組織を縮小
  • 役員報酬が前年比 +200%:経営層の処遇改善

業績見通しの意志——「特別損失の計上」

特別損失の計上タイミングも、経営者の意志を表します。

  • 大規模な減損損失を計上:将来の業績見通しを下方修正
  • リストラ費用を計上:構造改革に踏み込む
  • 訴訟損失を計上:法務リスクを整理

将来への布石——「研究開発費・人件費」

P/L の数字は、過去の結果であると同時に、将来への布石です。研究開発費・人件費の増減は、「数年後の P/L」への投資を意味します。

数字の背景にあるストーリー

優れた事業部長・マネジャー・コンサルタントは、P/L の数字から「なぜこの数字になったか」というストーリーを読み取れます。

例:

売上高:前年比 +20%(事業成長)
売上総利益率:40% → 35%(粗利率の低下)
販管費:前年比 +30%(広告投資の増加)
営業利益率:15% → 8%(営業利益率の低下)

このパターンを見たら、「成長フェーズで、粗利を犠牲にしても市場拡大を取りに行き、広告投資で売上を伸ばしている」というストーリーが推測できます。経営者は意図的に短期の利益率を下げて、長期の市場ポジションを取りに行っているかもしれません。

P/L を読むのは、数字の暗記ではなく、「数字から経営の物語を読み取る」読解です。これが、本コースが推奨するスタンスです。

💡 ポイント P/L の数字の裏には経営者の意志があります。投資判断(販管費の使い方)、業績見通し(特別損失の計上)、将来への布石(研究開発・人件費)など。数字から「経営の物語」を読み取るのが、優れた P/L 読解の本質です。

講師の現場メモ:「監査現場で気づいた『P/L は経営者の意志を映す鏡』」

私(浅野)が、新卒で監査法人に入って 3 年目のことです。担当していたある中堅製造業(売上 200 億円規模、自動車部品メーカー)の決算監査で、その会社の P/L に異変を見つけました。

前年比で売上が +10%、売上総利益も +12% で順調に伸びている一方、営業利益が -25% と大きく落ち込んでいました。販管費が前年比 +30% で急増していたのです。一般的には、売上が伸びている時期に、なぜわざわざ販管費を急増させて営業利益を圧迫するのか——監査主査として担当部長に「販管費の急増の理由」を質問しました。

担当部長の説明はこうでした。「来期から、自動車業界全体で EV 化のシフトが本格化する見通し。当社の主力製品(エンジン部品)は構造的に市場が縮小する。3 年後・5 年後の生き残りのためには、いま EV 関連部品の研究開発に大規模投資する必要がある。今期の販管費 +30% のほとんどは、EV 部品の研究開発費・新規エンジニアの採用・新工場の準備費。短期的には営業利益が落ちるが、3 年後の P/L を支える布石」。

私は、この説明を聞いて、P/L の読み方が変わりました。表面的な数字だけ見たら「営業利益が落ちて経営悪化」と読めるが、文脈を読むと「経営者が未来に投資している」と読める。同じ数字でも、背景の意志を理解しないと、誤った判断につながります。

監査の結論として、私は「研究開発費の処理は適切、減損リスクなし」と判定しました。3 年後、その会社の EV 関連部品事業は売上の 30% を占めるまでに成長し、エンジン部品の市場縮小を補って余りある業績となりました。当時の経営者の判断と、それを表していた P/L が、後で振り返るとピタリと整合していました。

この経験から、私はコンサルティングや財務読解研修の現場で、「P/L の数字は経営者の意志を映す鏡」と繰り返し伝えています。営業利益が下がっているとき、それが「経営悪化」なのか「未来への投資」なのか、判別するためには、販管費の中身(研究開発費・採用人件費・広告投資など)を見る必要があります。逆に、営業利益が上がっているとき、それが「本物の成長」なのか「研究開発を削った短期最適」なのかも、販管費の中身を見ないとわかりません。

本コースで「P/L から経営者の意志を読み取る」と扱うのは、私自身がこの監査経験から学んだ、財務読解のもっとも価値ある部分です。皆さんも、5 段階の利益だけを見て判断するのではなく、その背後にある販管費の中身、業界の文脈、経営者の戦略を合わせて読む習慣を、本コースで身につけていってください。

まとめ

このレッスンでは、以下のことを学びました。

  • P/L は「一定期間に稼いだか」を表すフロー(流れ)の表。会社の大きさ(売上)と儲け(利益)と儲けの構造の 3 つがわかる
  • 5 段階の利益:①売上総利益(粗利)、②営業利益、③経常利益、④税引前当期純利益、⑤当期純利益
  • 売上原価は「商品・サービスを直接生み出すコスト」、販管費は「支えるコスト」。業種により中身も比率も違う
  • 営業外損益は「経常的だが本業ではない」、特別損益は「臨時的・突発的」。「本業の力」と「臨時の影響」を分けて読む
  • 業種別の利益構造:高粗利・低営業利益型(SaaS)、低粗利・低営業利益型(小売)、高粗利・高営業利益型(ブランド)、設備投資型(製造業)など、業種平均と比較する
  • P/L の数字には経営者の意志が映る:販管費の使い方(投資判断)、特別損失の計上(業績見通し)、研究開発費・人件費(将来への布石)
  • 「数字から経営の物語を読み取る」のが P/L 読解の本質

次のレッスンでは、三表の第 2 弾、貸借対照表(B/S)を扱います。左右の構造、資産(流動・固定)の意味、負債(流動・固定)の意味、純資産自己資本)の意味、流動性の発想、業種別の B/S の特徴を学びます。


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