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スキルアップカレッジ

IR 資料設計と IR サイト・英文 IR

レッスン5:IR 資料設計と IR サイト・英文 IR

このレッスンで学ぶこと

  • 決算プレゼンの構成 8 ブロックを設計できる
  • IR サイト必須 10 項目を扱える
  • Fact Book /個人株主通信株主優待の使い分けを持てる
  • 英文 IR の必要性と英文サイト整備の型を持ち帰れる
  • 統合報告書は既刊 ESG 譲りとしての位置づけを扱える

前レッスンでは機関投資家との対話——バイサイドセルサイド・レギュレーション FD——を扱いました。本レッスンでは、対話を支える「IR 資料設計と IR サイト・英文 IR」を深掘りします。

決算プレゼンの構成 8 ブロック

決算プレゼン資料は、次の 8 ブロックで構成するのが実務標準です。前レッスンで扱った 6 ブロックのスクリプトを、資料側の視点で拡張した構成です。

ブロック 1:エグゼクティブサマリー(1-2 スライド)

  • 今四半期の 3 大メッセージ
  • 主要業績数値のハイライト
  • 通期業績予想の進捗状況

ブロック 2:業績サマリー(3-5 スライド)

  • 前年同期比較の主要業績数値(P/L 主要科目)
  • セグメント別サマリー
  • 財政状態のハイライト(B/S 主要科目)
  • キャッシュフロー計算書のハイライト

ブロック 3:セグメント別業績詳細(5-10 スライド)

  • 各セグメントの売上・利益推移
  • セグメント別の要因分析(数量差×単価差×時間差)
  • セグメント別 KPI(受注残高・稼働率・顧客数など)

ブロック 4:中期経営計画の進捗(3-5 スライド)

  • 中期経営計画の 3-5 年目標
  • 主要 KPI の達成状況
  • 戦略的施策の進捗(M&A ・新規事業・DX 投資)

ブロック 5:次四半期・通期見通し(2-3 スライド)

  • 次四半期の業績見通し
  • 通期業績予想の維持または修正
  • 主要リスク要因と対策

ブロック 6:株主還元と資本政策(2-3 スライド)

  • 配当政策(現行と将来方針)
  • 自己株式取得の状況と方針
  • 株主構成の変化
  • ROE /ROIC 経営指標

ブロック 7:ESG /サステナビリティ(2-3 スライド)

  • CO2 削減進捗
  • 人材投資・人的資本情報
  • ガバナンス強化

ブロック 8:質疑応答(Appendix)

  • 想定 Q&A の補足資料
  • 追加データ(月次売上・地域別売上など)

💡 ポイント 決算プレゼンの構成は、投資家の関心順で並べます。「エグゼクティブサマリー→業績→セグメント→中計→見通し→還元→ESG」の順が実務標準です。ESG /サステナビリティは投資家関心が高まっているため、決算プレゼンにも組み込むのが 2024 年以降の実務標準です。

IR サイト必須 10 項目

IR サイトは、機関投資家・アナリスト・個人株主が企業情報にアクセスする入口です。必須 10 項目を整理します。

項目 1:決算情報

  • 直近および過去 3-5 年の決算短信
  • 決算補足資料
  • 決算プレゼン資料
  • 決算説明会動画・書き起こし

項目 2:有価証券報告書・四半期報告書

  • 直近および過去 3-5 年の有価証券報告書
  • 過去の四半期報告書(2024 年 4 月以降は四半期決算短信に一本化)

項目 3:適時開示情報

  • 東証 TDnet 経由の適時開示情報一覧
  • 過去 1 年分の重要開示

項目 4:統合報告書

  • 直近および過去 3-5 年の統合報告書
  • 統合報告書の英文版

項目 5:IR カレンダー

  • 今後 6-12 か月の決算発表・株主総会・IR イベントスケジュール
  • 静穏期間の告知

項目 6:株主総会

  • 招集通知
  • 株主総会招集通知の英文版
  • 決議結果
  • 議決権行使結果

項目 7:株主・株式情報

  • 大株主構成(上位 10 名)
  • 株主分布(内国機関・外国機関・個人・その他)
  • 発行済株式数・自己株式保有数
  • 株価・出来高情報

項目 8:IR ライブラリ

  • 過去の決算説明会動画・書き起こし
  • 過去の IR デイ/CMD 資料
  • 個人株主向け動画

項目 9:IR 問い合わせ・メール登録

  • IR 部門への問い合わせ窓口
  • 決算発表・重要開示のメール通知登録

項目 10:英文 IR サイト(Investor Relations)

  • 英文の IR サイト(トップページから 1 クリックで到達)
  • 英文の主要決算資料
  • 英文の統合報告書

Fact Book /個人株主通信・株主優待

決算資料以外の IR コンテンツについて扱います。

Fact Book

Fact Book は、企業の主要データを 1 冊にまとめた資料で、機関投資家・アナリストの分析用に整備されるのが実務標準です。

  • 収録内容:主要業績数値(10 年分)、セグメント別データ、主要 KPI、株主構成、経営指標
  • 更新頻度:年 1 回(本決算時)
  • 形式:PDF(60-100 ページ)、Excel データ

Fact Book は、機関投資家・アナリストが企業分析を行う際の基礎資料として活用されます。特に外国運用会社は Fact Book の Excel データを重視します。

個人株主通信

個人株主通信は、個人株主向けに事業紹介・経営者メッセージ・株主優待などを掲載する情報誌です。

  • 収録内容:経営者メッセージ、事業紹介、業績サマリー(平易な言葉)、株主優待
  • 更新頻度:年 2-4 回(本決算・中間決算に連動)
  • 形式:紙冊子(20-40 ページ)、電子版(PDF )

個人株主通信は、個人株主のロイヤルティ向上と長期保有促進を目的とします。

株主優待

株主優待は、株主に対して自社製品・サービス・優待券などを提供する制度です。日本独特の制度で、個人株主の増加に貢献してきました。

  • 株主優待の種類:自社製品・自社サービス・優待券(レストラン・小売店)・カタログギフト・寄付選択
  • 保有株数条件:100 株以上(1 単元)が実務標準
  • 保有期間条件:1 年以上保有を条件とする企業も増加

一方、機関投資家は「株主優待は資本コストに反する」と批判的な意見も強く、2020 年代以降は株主優待を廃止する企業も増えています。廃止時には代替として配当増額・自己株式取得を打ち出すのが実務標準です。

英文 IR の必要性

日本の上場企業のうち、外国人株主比率が 30% を超える企業(東証プライム上場企業の約 40%)では、英文 IR が事実上必須です。英文 IR の対象範囲は次の通りです。

英文 IR の対象範囲

  • 決算関連:決算プレゼン資料(英文)・決算短信(英文)・決算説明会動画(英語字幕)
  • 統合報告書:英文統合報告書
  • 株主総会招集通知:英文招集通知
  • IR サイト:英文 IR サイト
  • Fact Book:英文 Fact Book

英文 IR の翻訳品質

  • 専門用語:会計・財務・業界固有用語の正確な翻訳
  • 文体:機関投資家が読み慣れた英文体(フォーマルすぎず、砕けすぎず)
  • 数値表記:カンマ区切り、通貨単位(JPY /USD)の明示、億・兆を million /billion /trillion に変換

翻訳は、社内翻訳者、外部翻訳会社(日本 IR /英文翻訳専門)、生成 AI +人間チェックの 3 パターンで運営されます。専門用語の一貫性を保つため、社内用語集の整備が Must です。

英文 IR の公開タイミング

  • 決算プレゼン資料(英文):日本語版と同時公開(実務標準)
  • 決算説明会動画(英語字幕):日本語版から 1 週間遅れ
  • 英文統合報告書:日本語版から 1-3 か月遅れ

海外機関投資家は英文資料を早く求めるため、日本語版と同時公開できる体制構築が競争力です。

⚠️ 注意 英文 IR の翻訳品質が低いと、海外投資家からの信頼を損なうリスクがあります。「Google 翻訳のまま公開」は絶対に避けます。専門翻訳者による初訳+社内の日英バイリンガル担当者による監修が実務標準です。

統合報告書の位置づけ——ESG 譲り

統合報告書(Integrated Report)は、財務情報と非財務情報(ESG 情報)を統合的に開示する報告書です。日本では 2010 年代以降に普及し、2024 年時点で発行企業数は 1,100 社超(KPMG ジャパン統合報告書調査 2024)に達しています。

統合報告書の主要内容

  • 企業の価値創造プロセス(IIRC フレームワーク)
  • 中期経営計画・長期ビジョン
  • ESG /サステナビリティ情報
  • 財務情報のハイライト
  • コーポレートガバナンス
  • 経営陣メッセージ

本コースでの扱い

統合報告書の設計・作成は、ESG 関連の入門コースを参照する領域です。本コースでは「IR サイト必須 10 項目の 1 つとして統合報告書がある」「英文統合報告書が海外投資家向けに必要」という位置づけまでに留めます。

次のステップ

本レッスンでは IR 資料設計と IR サイト・英文 IR を扱いました。次のレッスンでは、2023 年以降の日本 IR の中核テーマである「PBR 1 倍割れ・資本コスト経営・株主還元」を深掘りします。

確認クイズ

このレッスンで学んだ内容を確認しましょう。