本文へスキップ
スキルアップカレッジ

決算発表 4 半期サイクルと静穏期間

レッスン2:決算発表 4 半期サイクルと静穏期間

このレッスンで学ぶこと

  • 年 4 回の決算発表スケジュール(本決算・Q1・Q2・Q3)を俯瞰できる
  • 静穏期間(Quiet Period)の運用と 3 週間ルールを扱える
  • 事前準備 3 週間・当日運営・事後対応 1 週間のタイムラインを持てる
  • 決算短信決算補足資料プレゼン資料の 3 点セットを組み立てられる
  • 開示の 3 系統(金商法・会社法・東証適時開示)を扱える

前レッスンでは IR の 3 役割と職種分離を扱いました。本レッスンでは、IR 担当者の年間業務を規定する「決算発表 4 半期サイクル」と、その中核ルールである「静穏期間」の運用を深掘りします。

年 4 回の決算発表スケジュール

上場企業は、東証適時開示ルール上、決算期末後 45 日以内(努力目標 30 日以内)に決算短信を開示する義務があります。3 月期決算の企業の場合、年 4 回の決算発表スケジュールは次の通りです。

3 月期決算企業のスケジュール(実務標準)

  • 本決算(4Q 決算):4/1-6/30、決算短信開示は 4 月末〜 5 月中旬
  • Q1 決算:7/1-9/30、決算短信開示は 7 月末〜 8 月中旬
  • Q2 決算(中間決算):10/1-12/31、決算短信開示は 10 月末〜 11 月中旬
  • Q3 決算:1/1-3/31、決算短信開示は 1 月末〜 2 月中旬

12 月期決算企業のスケジュール

外資系日本法人・IT スタートアップに多い 12 月期決算の場合、次の通りです。

  • 本決算(4Q 決算):1/1-3/31、決算短信開示は 1 月末〜 2 月中旬
  • Q1 決算:4/1-6/30、決算短信開示は 4 月末〜 5 月中旬
  • Q2 決算(中間決算):7/1-9/30、決算短信開示は 7 月末〜 8 月中旬
  • Q3 決算:10/1-12/31、決算短信開示は 10 月末〜 11 月中旬

決算発表の時間帯

決算短信の開示時間は、東証取引時間中(9:00-15:00)を避け、次のいずれかの時間帯で行うのが実務標準です。

  • 午前開示:東証取引開始前の 8:00 前後
  • 昼開示:東証休憩時間中の 12:00 前後
  • 午後開示:東証取引終了後の 15:00-16:00 前後

多くの企業は「午後開示」(15:00 直後)を選択し、決算説明会を 16:00 開始で連動させます。

静穏期間(Quiet Period)——3 週間ルール

静穏期間は、決算発表前の一定期間、機関投資家・アナリストとの個別面談で決算関連情報を話さない期間です。日本では法律による強制ではなく、企業ごとの自主ルールとして運用されます。

静穏期間の実務標準

  • 開始時期:決算期末の翌日から
  • 終了時期:決算短信開示の当日
  • 期間の長さ:3-4 週間(決算期末後 30-45 日で決算短信開示のため)

静穏期間中の運用

静穏期間中は、次の運用が実務標準です。

  • 個別の機関投資家・アナリスト面談は原則辞退(既存の面談予定は事後に再設定)
  • カンファレンス・IR イベントへの参加は原則見送り
  • メディア取材・インタビューも決算関連は避ける
  • 開示済み情報の範囲での質問回答は継続可能

静穏期間の目的

静穏期間の目的は、次の 3 点です。

  • 情報の非対称性を避ける:一部の投資家だけが早期に業績情報を得ることを防ぐ
  • インサイダー取引の疑いを避ける:業績確定前の情報漏洩リスクを避ける
  • 決算関連の憶測を避ける:業績予測を出す前に企業側がコメントすることを避ける

⚠️ 注意 静穏期間はレギュレーション FD(金商法 27 条の 36、2018/4/1 施行)とは別のルールですが、フェア・ディスクロージャーの実務運用として重要です。静穏期間中の個別面談での業績関連発言が、後日インサイダー取引の疑いに繋がるリスクを避けるための実務標準です。

事前準備 3 週間・当日運営・事後対応 1 週間のタイムライン

決算発表の 1 回の実務を、3 段階のタイムラインで整理します。

事前準備 3 週間

決算短信開示日を「D デイ」として、その 3 週間前から準備を開始します。

D-21 日 〜 D-14 日(1 週目):

  • 業績数値の内部集計(経理部と連携)
  • 決算短信のドラフト作成(経理部主導、IR は補足資料と連携確認)
  • セグメント別損益・部門別損益の確認
  • 前年同期・前四半期との比較分析

D-14 日 〜 D-7 日(2 週目):

  • 決算補足資料のドラフト作成(IR 主導)
  • 決算プレゼン資料のドラフト作成(IR 主導、CFO・経営陣と協議)
  • 想定 Q&A の草稿作成(3 層構造で 100-200 問)
  • 経営陣へのブリーフィング・訓練

D-7 日 〜 D デイ(3 週目):

  • 決算短信の最終レビュー(経理・法務・IR)
  • 決算補足資料・プレゼン資料の最終確定
  • 想定 Q&A のリハーサル(CFO・IR 部長・広報)
  • 決算説明会の会場・配信手配

当日運営

  • D-1 日 15:00 前後:決算短信を東証適時開示(TDnet)で開示
  • D デイ 8:00 頃:メディア各社への決算リリース配信(PR 側)
  • D デイ 15:00-16:00:決算短信・決算補足資料・プレゼン資料を IR サイトで公開
  • D デイ 16:00-17:30:決算説明会実施(対面/オンライン/ハイブリッド)
  • D デイ 17:30 以降:機関投資家・アナリストからの個別質問対応

事後対応 1 週間

  • D+1 日 〜 D+3 日:機関投資家・アナリストからの個別面談対応(依頼が集中)
  • D+3 日 〜 D+5 日:決算説明会の動画配信・書き起こし公開
  • D+5 日 〜 D+7 日セルサイドアナリストレポートの内容確認・想定質問回答
  • D+7 日 以降:次の静穏期間(Q1 決算に向けた 3 週間)は日本国内 IR に集中

決算短信・決算補足資料・プレゼン資料の 3 点セット

決算発表時に開示される主要資料の 3 点セットを扱います。

決算短信(Financial Summary)

東証適時開示ルールに基づく開示資料で、業績数値・業績予想・注記が中心です。書式は東証提供の統一フォーマットに準拠します。

  • 前年同期比較の主要業績数値
  • セグメント別業績
  • 通期業績予想(本決算時は次年度予想、Q1-Q3 時は通期予想の修正有無)
  • 財政状態(B/S 主要科目)
  • キャッシュフロー計算書(C/F 主要科目)
  • 業績予想の前提条件
  • 注記事項(会計方針の変更・修正再表示など)

決算補足資料(Supplementary Materials)

任意開示で、決算短信の数値を投資家目線で補足する資料です。

  • セグメント別売上・利益の詳細
  • 主要製品・サービス別の売上動向
  • 地域別・顧客業界別の売上構成
  • 主要 KPI(Non-GAAP 指標も含む)
  • 設備投資・研究開発費の内訳
  • 従業員数・研究開発人員などの人的資本情報

決算プレゼン資料

決算説明会で経営陣が使うプレゼン資料です。ストーリー性を持ってビジュアル化された構成が実務標準です。

  • 業績サマリー(1 スライド)
  • セグメント別業績と要因分析
  • 中期経営計画の進捗
  • 次四半期・通期見通し
  • 株主還元(配当自己株式取得の状況)
  • 質疑応答(Q&A)向けの補足資料

💡 ポイント 3 点セットのうち、決算短信は「制度開示」、決算補足資料と決算プレゼン資料は「投資家向け任意開示」です。任意開示の充実度が、企業の IR 品質を規定します。IR 担当者は「投資家が本当に必要とする情報は何か」を意識して補足資料・プレゼン資料を設計します。

開示の 3 系統(金商法・会社法・東証適時開示)

上場企業の情報開示は、3 つの制度系統から成り立ちます。IR 担当者はこの 3 系統を理解し、それぞれの目的・対象・タイミングを把握する必要があります。

系統 1:金商法(金融商品取引法)に基づく開示

  • 有価証券報告書:事業年度末後 3 か月以内に提出(EDINET 公開)
  • 四半期報告書:Q1 /Q2 /Q3 の各期末後 45 日以内に提出(2024 年 4 月以降は廃止、四半期決算短信に一本化)
  • 臨時報告書:重要事象発生時に随時提出(連結子会社異動・特別損失など)
  • 有価証券届出書:新株発行・公募増資時に提出

系統 2:会社法に基づく開示

  • 事業報告株主総会招集通知に添付(事業年度末後 3 か月以内)
  • 計算書類:事業報告と同時開示(B/S・P/L・株主資本等変動計算書・注記)
  • 臨時計算書類:中間配当時などに開示

系統 3:東証適時開示ルール(TDnet)

  • 決算短信:決算期末後 45 日以内(努力目標 30 日以内)に開示
  • 四半期決算短信:各四半期末後 45 日以内
  • 業績予想修正:業績予想と実績の乖離幅が売上高 10%、営業利益・経常利益・純利益 30% を超える見込み時に即時開示
  • 重要事実の開示:業務提携・M&A・特別損益発生などに即時開示

3 系統は目的・タイミング・提出先が異なります。IR 担当者は、投資家からの質問に対して「この情報はどの系統で開示されているか」を即答できる必要があります。

次のステップ

本レッスンでは決算発表 4 半期サイクルと静穏期間の運用を扱いました。次のレッスンでは、決算発表のクライマックスである「決算説明会の設計と運営」——スクリプトの型、想定 Q&A 設計、当日運営 6 ステップ——を深掘りします。

確認クイズ

このレッスンで学んだ内容を確認しましょう。