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スキルアップカレッジ

1on1 とフィードバック——部下の成長を支える対話

レッスン6:1on1フィードバック——部下の成長を支える対話

このレッスンで学ぶこと

  • 1on1 の目的(成果ではなく成長)を理解する
  • 1on1 の準備・進め方・記録の基本を扱える
  • 質問の技術(オープンクローズの使い分け)を身につける
  • ポジティブフィードバックの型を理解する
  • 改善フィードバックの型(SBI・サンドイッチ)を扱える
  • 2026 年 6 月時点の生成 AI 1on1 ツールの現在地と限界を把握する

前回までで「マネジメントの土台」(役割の本質、最初の 90 日、業務と人の両輪、権限委譲)を学びました。本レッスンは、日々のマネジメントを支える対話の中心、「1on1 とフィードバック」を扱います。新任マネジャーがもっとも頻繁に行う対話で、メンバーの成長を支える最大の手段です。

1on1 とは

1on1(ワンオンワン、One-on-One)を、本コースでは次のように定義します。

マネジャーとメンバーの 1 対 1 の定期的な対話。メンバーの成長を支えることを目的に、メンバーが主役の時間として設計される。

この定義の鍵は 3 つです。

1. 「定期的」

1on1 は、不定期ではなく定期的に行います。週次・隔週・月次など、組織や状況に応じて頻度を決め、それを守ります。「忙しいから来週」と頻繁にスキップすると、メンバーは「自分は重要視されていない」と感じます。

2. 「メンバーの成長を支える」

1on1 の目的は「業務の進捗確認」ではなく「メンバーの成長」です。進捗確認は別の場(朝会、週次会議、報告メール)で行います。1on1 は、業務報告に終始しない、より深い対話の時間です。

3. 「メンバーが主役」

1on1 はマネジャーが伝えたいことを話す時間ではありません。メンバーが話したいこと、悩んでいること、考えていることを話す時間です。マネジャーは「聴く」が中心、「話す」は最小限。

💡 ポイント 1on1 はマネジャーとメンバーの 1 対 1 の「定期的」「メンバーの成長を支える」「メンバーが主役」の対話。業務の進捗確認とは別の、深い対話の時間です。

1on1 の準備

良い 1on1 は、準備で決まります。

頻度と時間

メンバーの状況 推奨頻度 1 回の時間
新人(入社 3 か月以内) 週次 30 分
慣れていない業務に取り組み中 隔週 30〜45 分
通常業務メンバー 月次〜隔週 30〜45 分
ベテラン・自律型 月次 30 分
不調や転機の最中 週次〜隔週 45〜60 分

新任マネジャーは「全員に同じ頻度」にしがちですが、メンバーの状況に応じて頻度を変えます(レッスン 4 の「全員に同じ接し方は機能しない」参照)。

1on1 シートの活用

1on1 を継続するための簡単な道具が「1on1 シート」です。

【1on1 シート】

メンバー:○○さん
日時:2026-06-23 14:00〜14:30
場所:会議室 A / オンライン

■ 前回の宿題確認
- ○○について調べる → どうだった?

■ 今日のメンバーからの議題
(メンバーに事前記入してもらう)
- 

■ マネジャーからのフィードバック
- 良かった点:
- 改善してほしい点:

■ 今後の予定・宿題
- 

シートをメンバーと共有し、事前に「今日話したいこと」を書いてもらうと、対話が深くなります。

マネジャー側の準備

1on1 の 10 分前に、マネジャーは前回までの内容を見直します。

  • 前回の話題は何だったか
  • メンバーが取り組んでいた業務はどうなったか
  • 私(マネジャー)から伝えるべきフィードバックはあるか
  • メンバーの様子で気になることはあるか

「前回の話題を覚えていてくれる」マネジャーは、メンバーから信頼されます。

💡 ポイント 1on1 はメンバーの状況に応じて頻度を変えます。1on1 シートで議題を事前共有、マネジャーは 10 分前の準備で前回内容を見直します。

1on1 の進め方

1on1 の標準的な進め方を、5 段階に整理します。

ステップ 1:アイスブレイク(最初の 3 分)

業務の話に入る前に、軽い話題で空気をほぐします。「週末どう過ごした?」「最近見た映画は?」など、相手の好みに応じて。緊張しているメンバーには特に重要です。

ステップ 2:メンバーの議題から(10〜15 分)

メンバーが事前に書いた議題から話します。「今日、話したいことは何ですか?」と振り、メンバーの話を聞きます。マネジャーは聴くに徹し、必要に応じて質問で深めます。

ステップ 3:マネジャーからのフィードバック(5〜10 分)

メンバーの議題が落ち着いたら、マネジャーから観察・フィードバックを伝えます。後述の「フィードバックの型」に従って、具体的に。

ステップ 4:キャリア・成長の話(5 分)

時折、中長期のキャリアや成長について話します。「3 か月後、こうなっていたい」「来期、新しいチャレンジを」など。毎回ではなく、月に 1 度程度。

ステップ 5:次回までの宿題と次回日程(最後の 2 分)

「次回までに○○について考えてくる」「私(マネジャー)が△△を調べておく」など、宿題を確認します。次回日程も確定。

「沈黙」を恐れない

新任マネジャーがハマる罠の 1 つが、「沈黙が怖くて、マネジャーが話し続ける」状態です。1on1 で 5 秒の沈黙があっても、慌てて話を埋めない。メンバーが考える時間を尊重します。「沈黙は、メンバーが深く考えている時間」と捉えます。

💡 ポイント 1on1 の 5 ステップ:アイスブレイク → メンバーの議題 → マネジャーのフィードバック → キャリア・成長 → 宿題と次回。「沈黙を恐れない」のがコツで、5 秒の沈黙はメンバーが考える時間です。

質問の技術——オープンとクローズ

1on1 で深い対話を引き出すには、質問の技術が必要です。

オープンクエスチョンとクローズドクエスチョン

種類 特徴
オープン 自由に答えられる、考えを広げる 「最近、業務でどう感じている?」
クローズド はい/いいえ、または短答 「○○の件は完了した?」

オープンクエスチョンを意識する

1on1 では、オープンクエスチョンを意識的に増やします。深い対話を引き出すための鍵です。

✗ ○○の件、終わった?(クローズド)
○ ○○の件、どんな感じで進めている?(オープン)

✗ 最近、忙しい?(クローズド)
○ 最近、業務のペースはどう?(オープン)

質問の階層を深める

「最近どう?」と聞いたあと、表面的な答え(「順調です」)で終わらせない。さらに深める質問を続けます。

マネジャー:「最近、業務のペースはどう?」
メンバー:「順調です」
マネジャー:「順調と感じるのは、特にどの業務?」
メンバー:「○○の案件です」
マネジャー:「○○のどの部分が、自分にハマっている感覚?」

3 段階深めると、メンバーの本当の思考や感覚が見えてきます。

「Why」より「How」「What」

質問で「Why(なぜ)」を多用すると、メンバーが詰問されている感覚を持つことがあります。「How(どう)」「What(何)」を中心に使うと、対話が柔らかくなります。

✗ なぜ、○○の件は遅れているの?
○ ○○の件、どんな状況? 何が起きている?

「Why」が必要な場面では、「○○の理由を教えてほしい」と直接的に聞くより、「どんな背景があってこうなった?」と状況を聞く方が、相手の防御を解きやすくなります。

💡 ポイント 質問はオープン(自由回答)とクローズド(短答)の使い分け。1on1 ではオープンを意識的に増やす。3 段階深めると本当の思考が見える。「Why」より「How」「What」が柔らかい。

ポジティブフィードバックの型

フィードバックには「ポジティブ(称賛)」と「改善(指摘)」の 2 種類があります。新任マネジャーは、ポジティブを意識的に増やすのが基本(レッスン 4 の「称賛の頻度を高める」参照)。

ポジティブフィードバックの 3 要素

良いポジティブフィードバックには、3 つの要素があります。

1. 具体的な事実

「ありがとう」「すごい」だけではなく、何を見てそう言っているかを具体的に伝えます。

✗ 助かったよ
○ 昨日の会議で、○○さんが議論を整理して結論を引き出してくれた。あれが助かった

2. 影響の説明

その行動が、どう影響したかを説明します。

○ ○○さんが整理してくれたおかげで、会議が予定時間で終わり、参加者全員が次のステップを共有できた

3. 感謝や認知

最後に感謝や認知の言葉を添えます。

○ 本当にありがとう。今後もそういう場面で力を発揮してほしい

3 要素を組み合わせる

「昨日の会議で、○○さんが議論を整理して結論を引き出してくれた。あれが助かった。おかげで会議が予定時間で終わり、参加者全員が次のステップを共有できた。本当にありがとう」

具体的な事実 + 影響 + 感謝の 3 要素で、ポジティブフィードバックの効果が高まります。

ポジティブを「リアルタイムに」「頻繁に」

ポジティブフィードバックは、1on1 にためずに、リアルタイムに頻繁に伝えるのが基本。「今、いいことが起きた」と思ったら、その場で伝える。1 週間後の 1on1 では新鮮さが失われます。

💡 ポイント ポジティブフィードバックの 3 要素:「具体的な事実」「影響の説明」「感謝や認知」。リアルタイムに頻繁に伝えるのが基本で、1on1 にためない。

改善フィードバックの型——SBI

メンバーに改善してほしい点を伝えるとき、適切な型を使わないと、相手を傷つけたり、関係を壊したりします。世界的によく使われる型が「SBI」です。

SBI の 3 要素

Center for Creative Leadership(CCL、米国のリーダーシップ研究機関)」が提唱したフィードバックの型。

要素 内容
S:Situation(状況) いつ、どこで、どんな場面で
B:Behavior(行動) 相手が取った具体的な行動
I:Impact(影響) その行動が他者・業務にどう影響したか

SBI の例

「先週金曜の会議で(Situation)、○○さんがほかのメンバーの発言を最後まで聞かずに反論したとき(Behavior)、発言したメンバーが萎縮して、その後の議論が停滞した(Impact)」

事実 → 行動 → 影響、の順で淡々と伝えます。判断や評価(「君は人の話を聞かない」など)を含めません。相手は事実と影響を聞いて、自分で考える時間を得られます。

サンドイッチ型(賛否両論)

別の型として「サンドイッチ(Sandwich)」があります。「良い点 → 改善点 → 良い点」で挟む型。

「○○さんの分析力はいつも助けられている(良い)。一方で先週の会議では、結論を急いでほかのメンバーの意見を遮る場面があった(改善)。分析力に加えて聴く力が組み合わさると、もっと大きな成果が出ると思う(良い・期待)」

サンドイッチは、相手の防御を解きやすい一方、「良い点が前振り」と受け取られて改善点が伝わりにくいリスクもあります。SBI と組み合わせて使うのが現実的です。

フィードバックを「与える」とは限らない

改善フィードバックを伝えると、メンバーが「やっぱり自分はダメだ」と落ち込むことがあります。マネジャーは、フィードバック後に「これは攻撃ではない、一緒に考えたい」と添える配慮を忘れません。

「これは○○さんを責めているわけではない。一緒に、どうすれば次回はうまくいくかを考えたい。○○さん自身は、何があれば違う対応ができたと思う?」

「フィードバックを与える」より「フィードバックを通じて一緒に考える」姿勢が、関係を保ちます。

💡 ポイント 改善フィードバックは SBI(Situation・Behavior・Impact)で淡々と伝える。判断や評価を含めない。サンドイッチ型は防御を解きやすいが、改善点が伝わりにくいリスクも。「攻撃ではなく一緒に考えたい」姿勢を添える。

2026 年 6 月時点の生成 AI 1on1 ツール

2026 年現在、生成 AI を活用した 1on1 支援ツールが業務で広がっています。

代表的なツール

ツール 機能
Notta、Otter 1on1 の音声を文字起こしし、要約
Microsoft Teams(録音 + AI 要約) Teams 上での 1on1 を自動記録
Notion AI、Confluence AI 1on1 メモを AI で整理
HR Tech 系専用ツール 1on1 アジェンダ提案、フォローアップ自動化

AI ツールの長所

  • 1on1 中の「メモを取りながら聞く」負担が減る
  • 過去の 1on1 を検索しやすい
  • アジェンダの提案
  • 振り返り時の要約が自動

AI ツールの短所と注意点

  • 機微情報の扱い:1on1 はメンバーの個人的な話題を含むため、AI への音声送信は本人の同意が必須
  • 要約の精度:複雑な感情やニュアンスは、AI 要約では取りこぼされる
  • 「記録すること」の影響:録音されていると意識すると、メンバーが本音を話しにくくなる場合がある
  • マネジャー自身の観察力が育たない:AI に任せ続けると、マネジャー自身の「聴く力」「観察力」が育たない

推奨スタンス

本コースの推奨は、「AI ツールは補助、対話は人間が中心」のスタンスです。

  • 1on1 中は AI 録音ではなく、紙やシンプルなメモで対話に集中する
  • 録音する場合は、メンバーに「録音してよいか」を必ず確認する
  • AI 要約は補助として使い、マネジャー自身も振り返りメモを残す
  • 「AI に任せて自分は観察しない」を避ける

💡 ポイント 生成 AI 1on1 ツール(Notta・Otter・Teams AI・Notion AI など)は補助として有用だが、機微情報の扱い・要約の精度・録音による影響・マネジャー自身の観察力低下のリスクあり。「AI ツールは補助、対話は人間が中心」が推奨スタンス。

講師の現場メモ:「3 か月続けた 1on1 が、退職寸前のメンバーを救った話」

私(本田)が、課長 2 年目のとき、ある若手エンジニア(入社 3 年目、25 歳)の様子が気になり始めました。技術力は高く、業務もこなしている。でも、月次の 1on1 で「最近どう?」と聞くと「順調です」「特にないです」しか言いません。表情が硬く、目を合わせない。プロジェクトリーダーからは「最近のアウトプットの質が下がっている」という話も来ていました。

私は彼女との 1on1 の頻度を月次から隔週に上げ、本コースで紹介した「3 段階深める質問」を意識的に試しました。最初の 2 回は「順調です」「困っていません」しか出ませんでした。3 回目に、私は質問の方法を変えました。

「順調と感じるのは、特にどの業務?」(メンバー:「△△の案件は……」と少し詳しく)「△△の中で、どの部分が一番自分にハマっている?」(メンバー:「設計は好きです」)「設計以外の部分は、どう感じている?」(メンバー:少し沈黙、「実装は……正直、退屈です」)

ここから、糸が解けるように話が広がりました。彼女は技術力が高く、設計や新技術への興味があるのに、現在のプロジェクトでは定型的な実装ばかり任されていたこと。本来は新しい技術領域を学びたかったこと。プロジェクトリーダーには言いにくくて、3 か月間我慢していたこと——3 段階の質問の先に、彼女の本音がありました。

私はこのフィードバックを受けて、プロジェクトリーダーと相談し、彼女のアサイン業務を再設計しました。設計の中心を任せ、新規技術の検証も担当してもらいました。社内の技術勉強会で発表する機会も作りました。

3 か月後、彼女の表情は明らかに変わりました。1on1 で「最近、楽しいです」と笑顔で言うようになりました。半年後、彼女は社内の主要技術者の 1 人として、新規プロダクトの設計をリードする立場になりました。1 年後、彼女から「あの時、本田さんが質問を諦めずに聞いてくれなかったら、辞めていたかもしれません」と打ち明けられました。

このとき私が学んだのは、1on1 で「順調です」しか返ってこないとき、それは本当に順調なのではなく、「マネジャーに本音を話せる関係になっていない」シグナルだ、ということです。3 段階の質問を続けた先に、メンバーの本当の声がありました。マネジャーが諦めて「順調そうですね」で終わらせていたら、半年後に退職届を受け取っていたかもしれません。

本コースで「質問の階層を深める」「沈黙を恐れない」と扱うのは、私自身がこの経験で身につけた、新任マネジャーの最重要スキルだからです。1on1 はメンバーの本音を引き出す場。表面的な答えで満足せず、3 段階深める習慣を、皆さんに持ち帰ってほしいと思います。

まとめ

このレッスンでは、以下のことを学びました。

  • 1on1 はマネジャーとメンバーの「定期的」「メンバーの成長を支える」「メンバーが主役」の対話。業務進捗確認とは別の、深い対話の時間
  • 頻度はメンバーの状況に応じて変える。1on1 シートで議題を事前共有、マネジャーは 10 分前の準備で前回内容を見直す
  • 1on1 の 5 ステップ:アイスブレイク → メンバーの議題 → マネジャーのフィードバック → キャリア・成長 → 宿題と次回。「沈黙を恐れない」
  • 質問はオープン(自由回答)とクローズド(短答)の使い分け。3 段階深めると本当の思考が見える。「Why」より「How」「What」が柔らかい
  • ポジティブフィードバックの 3 要素:「具体的な事実」「影響の説明」「感謝や認知」。リアルタイムに頻繁に伝える
  • 改善フィードバックは SBI(Situation・Behavior・Impact)で淡々と伝える。判断や評価を含めない。サンドイッチ型と組み合わせ可
  • 「フィードバックを与える」より「フィードバックを通じて一緒に考える」姿勢
  • 生成 AI 1on1 ツール(Notta・Otter・Teams AI・Notion AI など)は補助として有用だが、機微情報・録音の影響・マネジャー自身の観察力低下のリスクあり

次のレッスンでは、新任マネジャーが大きく緊張する場面、「初めての評価面談」を扱います。評価制度の理解、面談の準備、面談の進め方、低評価・高評価メンバーへの対応、面談後のフォローアップを学びます。


確認クイズ

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