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スキルアップカレッジ

大企業内での新規事業予算・KGI/KPI・カニバリ対応

レッスン6:大企業内での新規事業予算・KGI/KPI・カニバリ対応

このレッスンで学ぶこと

  • 3 ホライズン別の予算配分(H1: 70% / H2: 20% / H3: 10% 目安)を扱える
  • 新規事業 KPI 3 階層(North Star Metric ・Leading KPI ・Lagging KPI)を持てる
  • 姉妹コース L3 の BSC ・OKR を新規事業に適用できる
  • カニバリゼーション対応 4 パターン(時期・領域・ブランド・顧客層で切る)を扱える
  • PL 型 vs ROIC 型 vs キャッシュ型の判定 KPI を持ち帰れる

前レッスンでは社内起業・出島・CVC ・カーブアウトの構造選択を扱いました。本レッスンでは、大企業内で新規事業を運営する上での「新規事業予算・KGI /KPI ・カニバリ対応」を深掘りします。

3 ホライズン別の予算配分

McKinsey /Baghai の 3 ホライズン(L1 で扱った)を土台に、実務での予算配分の目安を扱います。

予算配分の目安

  • ホライズン 1(既存事業、時間軸 1-2 年):全体の 70% 程度
  • ホライズン 2(隣接事業、時間軸 2-5 年):全体の 20% 程度
  • ホライズン 3(新規事業、時間軸 5-10 年):全体の 10% 程度

多くの日本企業は H1 に 90% 以上、H2 に 8%、H3 に 2% 程度しか配分せず、H2 /H3 が不足しています。3 ホライズンの視点で「H3 を 5-10% に確保する」ことが、新規事業予算の実務論点です。

予算確保の 3 手法

  • 手法 1:経営陣直下の別枠予算:既存事業の予算とは別に H3 用の予算枠を設ける
  • 手法 2:既存事業の 1-3% を H3 に振り替え:既存事業の予算から一定比率を H3 に強制配分
  • 手法 3:CVC による外部投資:本業予算とは別に CVC ファンドで外部投資を実行

予算執行の柔軟性

新規事業の予算執行は、既存事業と異なるルールが必要です。

  • 少額でスピード決裁:500 万円以下は事業部長の権限で即決
  • 失敗許容の文化:投資額の 30-50% は失敗しても許容
  • KPI 未達時の柔軟な追加投資:初期 KPI 未達でもピボットして継続投資

新規事業 KPI 3 階層

新規事業の KPI は、次の 3 階層で設計するのが実務標準です。

階層 1:North Star Metric(NSM)

  • 定義:事業全体の成否を示す 1 つの最重要指標
  • :Airbnb は「予約された宿泊夜数」、Facebook は「MAU(月間アクティブユーザー)」、Slack は「有料チームの週間アクティブユーザー数」
  • 選び方:顧客価値と事業価値の交点を測る指標

階層 2:Leading KPI(先行指標)

  • 定義:North Star Metric に先行して変化する指標
  • :新規登録数、初回利用率、機能利用率、リテンション率
  • 役割:North Star Metric の改善のために日々モニタリング

階層 3:Lagging KPI(遅行指標)

  • 定義:North Star Metric の結果として変化する指標
  • :売上高、営業利益、顧客数、市場シェア
  • 役割:事業の最終的な健全性を測定

KPI ツリーの設計

  • North Star Metric を頂点に、Leading KPI と Lagging KPI をツリー構造で整理
  • 各 KPI が North Star Metric にどう影響するかを明示
  • 経営陣・事業部・新規事業チームで共有

姉妹コース L3 の BSC ・OKR を新規事業に適用

姉妹コース経営企画実務入門 L3 で扱った BSC(Balanced Scorecard)と OKR(Objectives and Key Results)を、新規事業に適用する視点を扱います。

BSC の 4 視点を新規事業に適用

  • 財務視点:新規事業では初期は赤字許容、成長性・投資対効果を測定
  • 顧客視点:顧客数・顧客満足度・NPS を測定
  • 業務プロセス視点:Stage-Gate の進捗・PoC 成功率を測定
  • 学習・成長視点:チームの学習量・仮説検証件数を測定

新規事業では「財務視点」の優先度を下げ、「学習・成長視点」を最重要とする設計が実務標準です。

OKR を新規事業に適用

  • Objective:新規事業の中期目標を野心的に設定(例:「業界の新市場を創造する」)
  • Key Results:Objective の達成度を測る 3-5 個の指標(例:「有料顧客 1,000 社獲得」「NPS 50 以上」「ARR 5 億円」)
  • サイクル:四半期ごとに Objective /Key Results を見直し
  • 難易度:野心的な目標を設定し、達成度 60-70% を成功とする

新規事業では OKR の「野心性」が特に重要です。既存事業の KPI と同じ達成率 100% を目指すと、新規事業らしいイノベーションが生まれにくくなります。

カニバリゼーション対応 4 パターン

カニバリゼーション(Cannibalization、共食い)は、新規事業が既存事業のシェアを奪う現象です。大企業内での新規事業では、カニバリを避けるのではなく設計するのが実務標準です。

4 パターンでの切り分け

  • パターン 1:時期で切る:既存事業の顧客が減退する時期に合わせて新規事業を投入
  • パターン 2:領域で切る:既存事業が対応していない領域(地域・機能・価格帯)を新規事業でカバー
  • パターン 3:ブランドで切る:既存事業と異なるブランドで新規事業を運営(親会社は同じでもブランドは別)
  • パターン 4:顧客層で切る:既存事業の顧客とは異なる顧客層(若年層・低価格層・海外)を新規事業でターゲット

カニバリ設計の 3 原則

  • カニバリを完全に避けることは不可能:優れた新規事業ほど既存事業と一部重なる
  • カニバリの範囲を事前に想定・合意:経営陣・事業部・新規事業チームで想定を共有
  • カニバリよりも「新市場創造」を評価:既存事業のシェアを奪っても、新市場全体を拡大していれば OK

実務事例

  • Sony PlayStation:既存の家電ブランドとは別のブランドとしてゲーム市場を開拓
  • Toyota Prius:ハイブリッド車という新カテゴリで既存 Corolla とすみ分け
  • Suntory Boss:既存の Suntory ブランドとは別位置づけで缶コーヒー市場を開拓

PL 型 vs ROIC 型 vs キャッシュ型の判定 KPI

新規事業の評価 KPI は、事業の性質・時期によって次の 3 型を使い分けます。

PL 型(Profit and Loss)

  • 測定指標:売上高、粗利、営業利益、EBITDA
  • 適した事業:成熟事業、既存事業のカイゼン、Sustaining /Incremental イノベーション
  • 時期:Stage-Gate の後期(Stage 4-5)
  • メリット:会計上の理解しやすさ、経営陣への説明しやすさ
  • デメリット:初期の赤字投資期には適さない

ROIC 型(Return on Invested Capital)

  • 測定指標:ROIC = NOPAT / 投下資本
  • 適した事業:成長期の事業、資本効率が重要な事業
  • 時期:Stage-Gate の中期(Stage 3-4)
  • メリット:資本効率を測定できる、資本コスト経営との整合性
  • デメリット:初期は投下資本の測定が困難

キャッシュ型(Cash Flow)

  • 測定指標:フリーキャッシュフロー、キャッシュバーンレート、Runway
  • 適した事業:スタートアップ的な新規事業、赤字投資期の事業
  • 時期:Stage-Gate の初期(Stage 1-3)
  • メリット:初期の赤字投資期に適している、実態が可視化される
  • デメリット:会計上の営業利益と乖離することがある

実務での使い分け

  • Stage 1-2:キャッシュ型(Runway 12-18 か月を確保)
  • Stage 3-4:ROIC 型(資本効率を測定)
  • Stage 5:PL 型(営業利益を測定)

本業のリソースとの綱引きを制する 5 原則

大企業内での新規事業 PM は、本業のリソース(人員・予算・工場・営業チャネル)を活用する場面で本業との綱引きが発生します。この綱引きを制する 5 原則を扱います。

原則 1:経営陣の後ろ盾を明示

  • 新規事業は経営陣直下で保護されていることを本業側に明示
  • 経営陣からの明文化された指示を得る

原則 2:本業側のメリットを明確化

  • 新規事業と本業の協業で、本業側にどんなメリットがあるか明示
  • 本業側の KPI 達成に貢献する構造を作る

原則 3:既存プロセスを尊重

  • 本業のリソースを活用する際、既存のプロセス・ルールを可能な限り尊重
  • 特別扱いを要求しすぎない

原則 4:Give & Take を意識

  • 本業側から支援を受けたら、新規事業側からも技術・ノウハウを還元
  • 一方的な依存関係にならない

原則 5:透明性を保つ

  • 新規事業の進捗・失敗・撤退判断を本業側にも透明に共有
  • ブラックボックス化しない

次のステップ

本レッスンでは大企業内での新規事業予算・KGI /KPI ・カニバリ対応を扱いました。次のレッスンでは、新規事業を経営陣・投資家に伝えるための「ピッチ設計と社内承認」——3 種類のピッチ・社内稟議・社内政治とステークホルダー・マップ——を深掘りします。

確認クイズ

このレッスンで学んだ内容を確認しましょう。