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スキルアップカレッジ

ブロックチェーンの技術構造

レッスン2:ブロックチェーンの技術構造

このレッスンで学ぶこと

  • ブロックチェーンの基本構造(ブロック・ハッシュチェーン・マークル木)を理解できる
  • PoW / PoS / PoA コンセンサスの違いと使い分けを説明できる
  • The Merge(2022 年 9 月 15 日)が Ethereum に何をもたらしたかを語れる
  • ノードの種類とその役割を整理できる
  • パブリック型とパーミッション型の違いと使い分けを判断できる

前のレッスンでは、Web3 の全体像と 3 世代の位置関係を扱いました。このレッスンでは、Web3 の技術的な土台となるブロックチェーンを、内部構造の視点で掘り下げます。

ブロックチェーンの基本構造

ブロックチェーンは名前の通り「ブロック」を「チェーン」でつないだデータ構造です。各ブロックには複数の取引(トランザクション)が入り、ブロックとブロックはハッシュ値でつながっています。

flowchart LR
  A[ブロック N-1<br/>取引データ<br/>ハッシュ値] --> B[ブロック N<br/>取引データ<br/>前ブロックのハッシュ<br/>自ブロックのハッシュ]
  B --> C[ブロック N+1<br/>取引データ<br/>前ブロックのハッシュ<br/>自ブロックのハッシュ]

ハッシュチェーン

各ブロックには前のブロックのハッシュ値(暗号学的な指紋)が含まれます。過去のブロックの内容が 1 文字でも改ざんされると、そのブロックのハッシュ値が変わり、次のブロックが指し示す前ブロックのハッシュとの整合性が破れます。これが「改ざん耐性」の中核仕組みです。

マークル木

1 ブロック内の複数の取引を効率的に管理するため、マークル木(Merkle Tree)というデータ構造が使われます。取引をペアでハッシュ化し、そのハッシュをまたペアでハッシュ化し、最終的にマークル・ルートと呼ばれる 1 つのハッシュ値に集約します。マークル・ルートを検証するだけで、大量の取引の改ざんを検出できます。

分散型台帳

ブロックチェーンの本質は「多数のノードで同じデータを共有し、変更にコンセンサスが必要な台帳」です。従来のデータベースは 1 つの管理主体が更新権限を持ちますが、ブロックチェーンでは複数のノードが協調して合意形成し、その結果を全ノードで共有します。

💡 ポイント 中核メッセージ 2「ブロックチェーンは信頼を最小化する台帳——コストと引き換えに不変性を得る」——ブロックチェーンは高速でも安価でもなく、通常のデータベースより処理性能はずっと低いことが多いです。それでも使う理由は「単一の信頼できる管理者を必要としない」ことにあり、この特性を必要としない用途では通常のデータベースの方が適しています。

コンセンサス方式——PoW / PoS / PoA

複数のノードで合意形成するために、さまざまなコンセンサス方式が使われます。3 つの主要方式を押さえます。

PoW(Proof of Work、計算量で証明)

Bitcoin が採用する方式。ノードが計算問題を解いた「証拠」を提示することで、新しいブロックを追加する権利を得ます。強力な暗号学的裏付けがあり、Bitcoin は 2009 年から 17 年間、実質的に破られていません。ただし、大量の電力を消費することが批判の対象です。

PoS(Proof of Stake、保有量で証明)

Ethereum が 2022 年 9 月に採用した方式。ノードが暗号資産をステーキング(保有・預け入れ)することで、新しいブロックを追加する権利を得ます。PoW と比べて消費電力を 99% 削減しますが、「持てる者が持てる者になる」という批判もあります。

PoA(Proof of Authority、権威で証明)

限定された信頼できるノードだけがブロックを追加できる方式。企業間のパーミッション型ブロックチェーンで採用されます。高速でエネルギー効率が良い一方、分散化の度合いは低く、パブリック型より中央集権的です。

The Merge——Ethereum の PoW から PoS への移行

Ethereum は 2022 年 9 月 15 日に「The Merge」と呼ばれる大規模アップグレードを実行し、PoW から PoS に移行しました。これは複数年にわたる準備の結果で、消費電力を約 99.95% 削減したと報告されています。The Merge 以降、Ethereum は環境負荷の観点で PoS の代表例として引用されるようになりました。

The Merge の意味

  • 環境:Ethereum の年間消費電力が中規模国家並みから小規模企業並みに縮小
  • 技術:Beacon Chain(2020 年 12 月開始)と本体チェーンの統合
  • 経済:ETH の発行量が大幅減少(結果的にデフレ的圧力)
  • 業界標準:主要なパブリックブロックチェーンで PoS が事実上の標準に

ノードの種類

ブロックチェーンネットワークには複数の種類のノードが参加します。

  • フルノード:ブロックチェーンの全履歴を保持し、すべての取引を検証する
  • ライトノード(SPV ノード):ブロックヘッダのみを保持し、必要な取引を検証する
  • マイニングノード(PoW)/バリデーターノード(PoS):新しいブロックを追加する権利を持つ
  • アーカイブノード:フルノードに加えて、すべての中間状態も保持する

企業がブロックチェーンを利用する場合、多くはフルノードやアーカイブノードを直接運用せず、Infura や Alchemy のようなノードサービスプロバイダを経由します。

パブリック型 vs パーミッション型

ブロックチェーンは、参加の開放度で 2 つに分類できます。

パブリック型(Public Blockchain)

誰でも参加でき、ノード運用・トークン保有・取引実行が可能。Bitcoin、Ethereum、Solana、Polygon などが代表例。分散化・検閲耐性が高い一方、処理性能に上限があり、参加者の匿名性からコンプライアンス対応が難しい場面もあります。

パーミッション型(Permissioned Blockchain)

参加者を事前に承認する必要があるブロックチェーン。Hyperledger Fabric、R3 Corda、Quorum などが代表例。企業間コンソーシアム、サプライチェーン追跡、金融機関間決済で使われます。処理性能が高く、参加者の身元が明確なためコンプライアンス対応も容易です。分散化の度合いはパブリック型より低いです。

flowchart TB
  A[ブロックチェーン] --> B[パブリック型<br/>Bitcoin / Ethereum / Solana<br/>誰でも参加可 / 高い分散化 / 低い処理性能]
  A --> C[パーミッション型<br/>Hyperledger Fabric / R3 Corda / Quorum<br/>事前承認要 / 低い分散化 / 高い処理性能]

📝 補足 企業導入では「パブリック型を使うか、パーミッション型を使うか」の判断が最初の分岐点になります。分散化・検閲耐性を重視するならパブリック型、処理性能・コンプライアンス対応を重視するならパーミッション型。金融規制への対応が必要な用途では、パーミッション型が現実解になる場面が多くあります。

次のレッスンの予告

次のレッスンでは、ブロックチェーンの上でプログラムを動かす仕組み——スマートコントラクトと EVM を扱います。Ethereum 2015 年ローンチ、Solidity の概念、ERC-20 / 721 / 1155 のトークン標準、ガス代の仕組み、Layer 2 とロールアップ、EVM 互換チェーン——を、非技術系の読者にも通じる言葉で解きます。

確認クイズ

理解の定着のために、6 問のクイズを解いてみてください。