社内向けRAG入門
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コース概要
社内向けの RAG(検索拡張生成)は、便利な生成 AI に社内文書を読ませる、という単純な話ではありません。誰の文書を、どの単位で切り、どう索引し、どこまで見せるか——社内 RAG の設計は、実は「社内の情報構造を設計し直す仕事」でもあります。本コースは、2026 年 7 月時点で選択肢となる主要ツール・手法を、個別ベンダーの深追いではなく「4 段階アーキテクチャ(データ→索引→検索→生成)」と「選定軸」で整理し、文書パイプライン・チャンキング・埋め込みモデル選定・ベクトル DB 選定・ハイブリッド検索・リランク・クエリ理解・評価指標・PII とガバナンス・社内展開までを 8 レッスンで扱います。情シス・DX 推進・社内開発エンジニアの 3 軸のどこから読んでも、翌週から社内で意思決定できるように設計しました。
学習の流れ
前半 4 レッスンで「作る側」の骨格を固めます。レッスン 1 で 4 段階アーキテクチャと本コースの守備範囲を提示し、レッスン 2 で社内文書の類型と文書パイプライン・メタデータ設計・更新戦略、レッスン 3 でチャンキング 5 種と埋め込みモデル選定、レッスン 4 でベクトル DB 選定・ハイブリッド検索・リランクを扱います。中盤のレッスン 5 でクエリ理解(HyDE・Multi-Query)と RAG 特化の生成側プロンプト設計、レッスン 6 で検索・生成の評価指標と Ragas 実務を扱います。後半のレッスン 7 で権限伝播・PII マスキング・監査ログ・ガバナンス、レッスン 8 で社内展開の型・KPI・コスト設計・組織導入までを扱い、修了後の学習方向も提示します。全 8 レッスン・約 200 分の構成です。
このコースで学べること
- ✓ RAG(検索拡張生成)の 4 段階アーキテクチャ(データ・索引・検索・生成)を全体像として説明できる
- ✓ 社内文書の類型と前処理パイプライン・メタデータ設計・更新戦略を組み立てられる
- ✓ チャンキング 5 種類と埋め込みモデル選定軸を、社内文書の性質から選び分けられる
- ✓ ベクトル DB 選定軸・ハイブリッド検索・リランクの組み合わせを、規模と要件に応じて設計できる
- ✓ クエリ理解(HyDE・Multi-Query)と RAG 特化の生成側プロンプト設計ができる
- ✓ 検索・生成の評価指標体系(Recall/MRR/nDCG/Faithfulness/Answer Relevancy)で RAG を継続評価できる
- ✓ 権限伝播(Document-level ACL)と PII マスキング、監査ログを含むガバナンスを設計できる
- ✓ 社内展開 4 段階(PoC → 部門パイロット → 全社展開 → 定着)と KPI・コスト設計を整えられる
対象者
社内向けに RAG(検索拡張生成)システムを企画・設計・構築・評価・展開する立場を想定。情シス/DX 推進部門/SIer プロジェクト PM/社内開発エンジニア/プロダクト企画の 3 軸。生成 AI の使い方はある程度知っており、社内 RAG を立ち上げる(あるいは発注する)役割を担う方
講師紹介
久保田 慎一(くぼた しんいち)
AI プロダクト企業 プロダクトマネージャー/元 情報システム部門・SIer/社内 RAG 導入伴走 10 社以上
国内大学 経営情報系学部を卒業後、2004 年に国内大手メーカーの情報システム部門へ新卒入社。グループウェア・社内ポータル・SharePoint・全文検索・ワークフローシステムの運用管理を 6 年経験。2010 年に国内大手 SIer に転職し、金融・製造業向けの社内システム企画〜開発〜運用の SE として 4 年、うち 2 年は業務システム × 全文検索基盤の案件を主導した。2014 年に国内 SaaS スタートアップへ参画し、社内向け生産性ツール SaaS のプロダクトマネージャーを 8 年務め、後半では AI 系機能(要約・分類・ドキュメント検索)の企画を担当。2022 年に国内 AI プロダクト企業へプロダクトマネージャー兼 AI ソリューション部門長として参画し、社内 RAG プロダクトの企画・提供とエンタープライズ導入 10 社以上を主導。2026 年 7 月時点で現職を務めながら独立準備中。信条は「RAG の 8 割は LLM の外側で決まる——文書と検索が勝敗を分ける」
受講される方へのメッセージ
「社内向けの RAG は、便利な生成 AI に社内文書を読ませる、という単純な話ではありません。誰の文書を、どの単位で切り、どう索引し、どこまで見せるか——社内 RAG の設計とは、実は「社内の情報構造を設計し直す仕事」でもあります。本コースでは 2026 年 7 月時点で選択肢となる主要ツール・手法を、個別ベンダーの深追いではなく判断軸として整理し、8 レッスンで文書パイプラインから評価・ガバナンス・社内展開までを扱います。情シス・DX 推進・社内開発エンジニアの 3 軸のどこから読んでも、翌週から社内で意思決定できるようになることを目指します」
レッスン一覧
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1
RAG とは何か——「社内知識を LLM が使う」ためのアーキテクチャ入門
本コースの位置づけと守備範囲、RAG の系譜(Lewis et al. 2020 → ChatGPT 普及後の実装ラッシュ 2022-2023 → マネージド RAG/エンタープライズ検索の 2024-2026)、RAG の 4 段階アーキテクチャ(データ→索引→検索→生成)、想定読者の 3 軸(情シス/DX 推進/エンジニア)、Agentic RAG・Corrective RAG・Self-RAG など発展形の位置づけと本コースの守備範囲外を整理する
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2
文書パイプライン——社内文書の類型・前処理・メタデータ設計・更新戦略
社内文書の類型(Wiki・ファイルサーバー・メール・チャット・DB・画像)、PDF 抽出(PyPDF・pdfplumber・PDFMiner)/HTML パース/Office 抽出/OCR、日本語トークナイズ(Sudachi・MeCab)、レイアウト解析、メタデータ設計(部署・期間・種別・権限タグ・改訂履歴)、差分検出/削除文書の反映/再インデックスのタイミング、SharePoint/Confluence/Notion/Google Drive 連携パターンを学ぶ
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3
チャンキング戦略と埋め込みモデル選定
チャンキング 5 種(固定長・段落・セマンティック・親子(Parent-Child)・要約)、サイズ/オーバーラップ/セパレータ設計、埋め込みモデル 4 象限(クローズド/OSS × 多言語/単言語)、日本語対応(intfloat/multilingual-e5、cl-nagoya/sup-simcse-ja 系)、次元数とストレージ・検索速度のトレードオフ、再埋め込みコスト、Anthropic Contextual Retrieval(2024 年 9 月)の位置づけを学ぶ
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4
ベクトル DB とハイブリッド検索・リランクの設計
ベクトル DB 選定軸(マネージド/セルフホスト・規模・クエリパターン・統合性)、代表 DB の系譜(pgvector・Elasticsearch・OpenSearch・Weaviate・Qdrant・Milvus・Pinecone・Chroma・Vespa)、ANN 索引(HNSW/IVF/PQ)の要諦、ハイブリッド検索(BM25+ベクトル、Reciprocal Rank Fusion)、リランキング(Cross-Encoder・Cohere Rerank・LLM Rerank)、メタデータフィルタでの絞り込みを学ぶ
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5
クエリ理解と生成——HyDE・Multi-Query・プロンプト設計・引用
クエリ理解の役割、HyDE(Hypothetical Document Embedding)、Multi-Query/Query Expansion/会話履歴付き検索、生成側プロンプト設計(RAG 特化パターン)、番号引用・断片順序(Lost in the Middle 対策)、構造化出力(JSON・引用位置)、フォールバック(該当なし時の応答)を学ぶ
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6
評価とテスト——Recall/MRR/nDCG/Faithfulness/Ragas 実務
検索評価指標(Recall@k・MRR・nDCG・Hit Rate)、生成評価指標(Faithfulness・Answer Relevancy・Context Precision・Context Recall)、Ragas/TruLens/DeepEval の位置づけ、評価データセット構築(ゴールデンセット・LLM 合成質問・人手アノテーション)、シャドウトラフィック/A/B テスト、継続評価とリグレッション検出、誤答の分析軸を学ぶ
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7
セキュリティ・ガバナンス・PII——社内展開のための必須設計
権限伝播(Document-level ACL・行レベルセキュリティ・マルチテナント分離)、PII マスキング(人名・連絡先・機密ラベル)、監査ログ、出典表示義務、社内ガバナンスポリシー、プロンプトインジェクション対策、契約関係(学習利用制限)、個人情報保護法/改正個情法/AI 事業者ガイドライン(2026 年時点)、NIST AI RMF を学ぶ
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8
社内展開の型と ROI・コスト設計・組織導入
導入 4 段階(PoC → 部門パイロット → 全社展開 → 定着)、KPI 設計(利用率・検索成功率・業務時間削減・CSAT)、失敗パターン(文書品質/権限設計/利用促進/KPI 不整合)、コスト設計(埋め込み・ストレージ・クエリ数・LLM トークン・再インデックス)、組織横断合意形成(情シス・法務・DX 推進の役割分担)、Agentic RAG/GraphRAG/マルチモーダル RAG の概観と学習方向を学ぶ
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総復習テスト
全レッスンの内容を振り返るテスト
このコースの用語集(115語)
- インデックス
- 文書やチャンクを検索可能な形で格納するデータ構造の総称。RAG では、埋め込みベクトルを ANN 索引(HNSW/IVF/PQ など)で格納し、メタデータを紐づけて絞り込み可能にする。文書の更新に応じてインデックスも更新(差分・削除・再インデックス)する必要がある。→ レッスン 2、レッスン 4
- 埋め込み
- テキストや画像などのデータを、高次元の数値ベクトルに変換したもの。近い意味のデータはベクトル空間で近くに配置される。RAG ではチャンクを埋め込みベクトルに変換して索引化し、クエリベクトルとの類似度で検索する。→ レッスン 3
- 埋め込みモデル
- テキストを埋め込みベクトルに変換するモデル。クローズド API(OpenAI・Cohere・Voyage AI・Google Gemini)、OSS(multilingual-e5・bge-m3・sup-simcse-ja・ruri など)、多言語モデル、日本語特化モデルの 4 象限で選定する。次元数とコスト・精度のトレードオフがある。→ レッスン 3
- OCR(おーしーあーる)
- Optical Character Recognition の略。画像から文字を認識する技術。紙をスキャンした PDF や写真・帳票の文書化に不可欠。Google Document AI・Azure Document Intelligence・Amazon Textract・PaddleOCR・Tesseract などが使われる。→ レッスン 2
- OWASP
- Open Worldwide Application Security Project の略。Web アプリケーションのセキュリティに関する国際的な非営利コミュニティ。近年は「LLM Applications 向けの Top 10 リスク」も公開し、社内 RAG のセキュリティ設計の参考になる。→ レッスン 7
- カットオフ
- LLM の事前学習データの締切日。カットオフ以降の情報は LLM 単体では回答できないため、RAG で最新情報を注入する必要がある動機の 1 つ。→ レッスン 1